カレー部活動報告

A white dish at the Indian restaurant

Photo: "A white dish at the Indian restaurant" 2010. Tokyo, Japan, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX.

カレー部の部活があると言うことで、東京某所の南インド料理店に行く。つい最近まで、インド料理 = カレーぐらいの認識しかなかったのだが、ビリヤニの旨さに目覚めてから、実は他にもずいぶんといろいろな料理があることを知った。ドーサもサモサも、店や国によって色々だ。


とても印象的だったのは、参加者の一人が料理をサーブしてくれる店員に、いちいち

「ナマステ」

と現地の言葉でお礼を言っていた事だ。彼は、追加飲みで寄ったなんてことはない居酒屋の中国人店員にも

「シェイシェイニー」

とお礼を言っていた。


知っていても、なんか恥ずかしくてできないことなんだけど、店の人は嬉しそうだった。見習ったらいいかなぁ、と思いつつも、なかなか出来ない。せめて、外国では “Thank you”ではなくて現地の言葉で言うようにしている。

“Terima kasih”


そういえば、この店ではもう一つ驚くことがあった。一人がインドのウイスキー(インドにはウイスキーが有るのだ)を頼んだ。(恐らくは酒を飲まない)インド人ウエイターによれば、かなり強い酒らしい。飲み方を訊かれて

「ストレートで」

と頼んだ。

その時のウエイターの驚いた顔。僕は、まさにインド人もビックリという顔を、生まれて初めて見ることができたのである。

アンコウ鍋

sea devil hot pot

Photo: "sea devil hot pot" 2011. Tokyo, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

都心から地下鉄で少し、駅の階段を登るとすぐ国道が通っている。商店街も何も無いそんな道沿いに、古くからの鮨屋が一軒。

引き戸を開けると、カウンターはもうお客で一杯だ。座敷でビールを飲みながら、集合まで少し待つ。去年のアンコウ鍋会では、やや熱燗をがぶ飲みし、お会計もだいぶ大変な事になった様であり、今年はもう少しじっくり鍋を頂こうという感じ。


丸一匹分?だろうか。とんでもない量のアンコウが、野菜も控えめに大皿に盛られてくる。良く行く居酒屋の料理番が、今日は客の一人として、鍋奉行をしてくれる。

「料理人の手だから、そのまんま手づかみでいいわよね」

と、鍋にリズム良く具を入れていく。それが、妙に説得力があるのだ。


アンコウの身を山と鍋に入れて、とどめに、かぶせるように肝をどっさり載せる。もう、下の野菜も身も見えない。
あとは、グツグツ肝が煮融けるのを待つばかり。

驚くまずさ、ロコモコ

Photo: "Loco Moco."

Photo: “Loco Moco.” 2010. HI, U.S., Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

10数年前、僕が初めてアメリカに行って驚いたのは、その飯の不味さだったわけだが、今回のハワイでも期待を裏切らない不味いものを食べることができた。

ハワイのワイキキあたりの食事のレベルというのは、相当に高くて、それはつまり日本人の喉を通らないレベルの妙な料理というのはほぼ無いことを意味する。が、ハワイ名物とされる「ロコモコ」だけは、別だった。


僕以外のメンバーは殆どアメリカで生活していた人々だったので、ハワイに着いての第一食目は何の躊躇もなくフードコートに決定された。アラモアナのショッピングモールのフードコートには5、6軒のアレげな店が入っている。僕は比較的「害の少なそうな」ものを物色し、Panda Express の定食を食べる事にした。世界中、どこに行っても、中華料理だけはある一定の水準というものを、比較的保っていると信じているからだ。

多分、6ドルぐらいで炭水化物と、おかず2品を選ぶ。まあ、おおよそ想定通りの炒飯というかピラフというか、そういうものは、腹が空いていたせいか比較的美味に思われたし、油淋鶏のような鳥も、ブロッコリーの炒め物もまあまあで、アメリカ料理も普通になったなぁと思う。そして、友人の通訳殿が、嬉しそうに持ってきたのがロコモコだった。

僕にしても、ロコモコがハワイ生まれの料理であることは知っているし、日本で明らかにイシイ(成城ではない)のハンバーグを使用したと思われるロコモコを食べたこともある。


しかし、目の前に置かれた白茶けた胸塞ぐ奇妙な一皿は何だ。飯、肉、タレ、卵。目玉焼きの黄身は、白身に比して妙に小さく、奇妙に薄い黄色をしていて、そもそも米国内で半生目玉焼きなんて食べて大丈夫なのか?という疑念がわき起こる。だいたい、野菜とか、バランスとかが、全く考えられていない。あるいは、米を野菜の一種として捉える、この国の人々の目には、ある程度のバランスのとれた食事に見えるのだろうか?

中華のプレートが、存外食べられるものだったことに気をよくしていた僕は、好奇心から一口、「ハワイのロコモコ」というものをもらってしまった。通訳殿は、普通に食べていたし、むしろその懐かしい味に「これこれ!」と美味しそうだったのだ。


一口食べてみて、僕はアメリカ人が好きな味のエッセンス、のようなものをついに掴んだような気がした。マクドナルドのあの「肉」を沢山頬張ったときに、喉の奥に広がる、牛肉由来なのか何なのかよく分からないあのしつこい感じ。そこだけが取り出されて、強調されたようなタレの風味が、おそらくはアメリカに住んだものの郷愁をかき立てる、言ってみれば彼らにとっての「鰹だし」のようなものなのではないか。

とまでは考えなかったが、あまりにも、典型的なアメリカのまずい飯を無防備に食べてしまい、正直驚いたのだった。