煤けた壁と、台湾総選挙

Photo: "Far east mozaic."

Photo: “Far east mozaic.” 1995. Haebaru, Okinawa, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Fuji-Film

先々週、奇しくも、というか確信犯的に友人のうち2名が別々に台湾に行っていた。一人は人生の終の棲家を探しに、一人は、、なんだ趣味かな。街をほっつき歩きながら送られてくる豆花とか、共産党の旗とか、いかげそ揚げとか、そういうものが互いに交わるでも無く、同じLINEチャットに勝手に投稿されていく。

ちょうど同じ日に新しく来たApple TV 4Kで、僕は東京から普通に台湾のニュース番組のライブを見ることができた。開票速報から、蔡英文の外国プレス向け勝利宣言まで。後世の歴史は、今のアジアの情勢をどう描くだろうか。もちろん、その時に歴史を描いているのは、その時代の勝者だろうが。


初めて台湾に行ったときは、現地のコーディネータには「ホテルの部屋には盗聴器があるかもしません」と言われて、大いにびびった。今考えれば、たかが学生の研究旅行に盗聴も無いと思うが、国民党一党独裁であった当時の台湾では、まだそんな警告にも真実味が感じられたのだ。

今、台湾でそういう緊張を感じる事は無い。すっかり変わった台北の世界標準な都市の風景、平和な夜市の賑わい。建物の外壁がなんだか煤けている事だけは、変わらないけれど。

香川雑感 その2

Photo: “Firefly squid tempura.”

Photo: “Firefly squid tempura.” 2018. Kagawa, Japan, Apple iPhone 6S.

琴電にゆられて数駅、待ち合わせの場所に居た友人は、自己流というヨガのせいなのか随分痩せた。

 

この街にたいしたものは無い。そう彼は言ったが、目の前に瀬戸内海が広がるだけあって、一軒目の居酒屋で出た蛸墨の天ぷらなどは初めて目にした。ホタルイカの天ぷらも、多分初めて食べて、感心する。個室は東京より、明らかにスペースに余裕がある。窓の外の、低層の建物を見るとはなしに見ながら、酒を飲む。6月末の夕暮れ、どんよりとした空。


その後に、名物料理「骨付鳥」をこなすために半ば義務的に連れて行かれた鳥料理の店は、讃岐コーチンを揚げてあるのだけれど、友人の言うようにひらすら塩辛い。友人の店に対する評価も、その味付け並みに辛い。しかし、イカ刺しとか、カレイの唐揚げとか、いつも食べるメニューがちゃんとある感じで、僕にとってはそれ程悪い印象では無い。骨付鳥は、毎回は頼まないだろうが。

3軒目。バーのマスターはメキシコから流れてきたような風貌で、受け口な喋り方と方言で、何を話してくれているのかさっぱり分からない。店の内装も、マカロニウエスタンで見た、メキシコの田舎屋を模したような壁。


最後にホテルのバーで飲んだのは、シャンパーニュ。銘柄はなんだかわからないが、この街で一番のホテルの最上階で飲むシャンパンは確かに、大変良かった。高価であることには、高価であるだけの意味がある。何かを区切るような、そういう種類の酒なのだろう。

サイトの復活とジオシティーズの消滅

ドメインの移行、それも自分の元のドメインを人質にとられた状態での移行、というのがいかに困難か、今回図らずも思い知ることになった。Wordpressの設定を直そうにも、そもそも元のサイトにログインできないし(レンタルなのでhostsを書き換えるとかも無理)、xserverはドメインごとにユーザーディレクトリの下が別れるので、ドメインを変えたらそこからやり直しだ。


そういう訳で、今回は名前解決ができないWordpressサイトをドメイン移行させるという、およそ正月休みでも無ければやる気にならない作業を存分に楽しむ事になった。ファイルの移行の方は、幸いxseverはSSHでアクセスできるので、cp -a でファイルコピーしてつつがなく完了。あとは、MySQLの中身をsheeppage.comをsheeppage.netで置換すればいいんじゃ無いの?という気分になったのだが、それほど単純なものではないようだ。Search Replace DBというツールでうまく行きそうな気配はあったが、Ajaxエラー。検索するとこれはあるあるで、前のバージョンを使ってWarningはだしながらもなんとか移行はできた。

そうして、サイトをリカバリーしていて、改めて眺めてみるとなんとも古く感じてしまって、いろいろCSSをいじったWordPressのThemeも変えてしまおうと思い至った。どうせ、失われるものは失われたのだ。左ナビゲーションも捨てたし、もうフラットデザインでいいよね。あと、サイトも25年にもなると、さすがに昔からの読者の視力も衰えている可能性もあろうと言うことで、フォントを懐かしのリュウミン系から、ユニバーサルデザインのモリサワ TBUDゴシックに変更した。

僕は未だに長文を読むときはMacを使っているし、13インチのMacBook Proのキーボードがリニューアルされたら買うつもりだ。が、それはどうでも良い事だとして、今は70パーセント程のアクセスがスマホ経由になっているという事実も、デザインの見直しを考えた理由だ。あくまでPCサイトをメインにしたメニュー配列を改め、モバイルでは処理を分岐させてスクロール量が減るようにしてみたりする。25年が経って、基本テキストだけのこのサイトも、今はスマホで読まれているのだ。


それにしても、消えていくサイトのデータをきちんとどこかに保管しておかないと、それこそ将来、何も市井の記録が残らなくなってしまうのでは無いか、そんな事も考える。今回は、データが有ったから移行は出来たが、暫くは検索から「羊ページ」でここにたどり着くことはできなかった。昔からの読者が再びこのサイトを見つけてくれればよいが、そのまま閉鎖と思い込んだことは大いに考えられる。

サイトを維持する、というのは意外と簡単につまずいて、取り戻すのは意外と容易ではない。去年のジオシティーズの閉鎖で、僕のはてなアンテナのテキスト系登録サイトのうち、今でも到達可能なサイトは一気に減ってしまった。万人が発信できるインターネットも、結局は、データの保管コストの観点から考えると勝者の歴史、勝者のデータだけが残るのかもしれない。

自分のサイトに起こった出来事と、そしてスカスカになったはてなアンテナ。0秒で消えるデータ。無論、消える自由、忘れられる自由はあるのだが、人類が電脳をもう一つの巨大な集合知とするには、それを場当たりに忘却させるだけで良いのか?という疑問を感じた出来事ではあった。

そうそう、テキスト庵みたいなもの、誰かまた作ってくれないかな。