
酒を飲まずに歩く夜の街は、以前よりはよそよそしく、入るべき店の幅は狭くなった。
といっても、酒を飲んで失われる人生の時間を考えたら、やはり戻りたいとは思えない。
かつて、そういう世界があって、そこにどっぷりな住人ではあった。そして、いつまでもそこに居続ける必要は無いのだろう。
暗い街路に面したドアの向こうから、熱気とかすかな煙草の臭いが流れてくる。いや、やっぱり嫌かなと思う。透き通った、はっきりした目で見る夜の景色は、酒の霧に煙った色とはまた違う光を持っている。
仕事に飽いて、なだれ込むように酒場に入って、ウイスキーをあおる。そうして、やっと肩の力が抜ける。そういう句読点のようなものとしての酒場は、確かに今でも良いなと思う。しかし、時代は変わった。いつものバーのマスターは、僕の注文からは、アルコールを抜くようになった。


