クソ社内ベンチャー

数年前、相当に酷い内容の外部トレーニングに数日間参加した。内容は酷かったのだが、参加者は素晴らしかった。そこには、いろいろな会社から、だいたいが幹部候補というか、この人はコースに乗っているんだなという人達が多かった。(当時、僕はそういう感じでは無かったが数あわせで参加していた)皆、魅力的で能力が高いなと感じた。

しかし、その中に、なんでこの人が?という人が居た。彼は、ある日本の会社で、社内ベンチャーを手がけているという。彼のやった仕事、というか、ベンチャーのサービスは、その概要を聞いただけで、「それは、どうなんだろう?」と首を傾げたくなるものだった。(そのサービスは。とうに終了している)


どこかに書いたが、僕はベンチャー担当を暫くしていたので、そういったものにはちょっと慣れている。確かに、ベンチャーの世界には、成功する素晴らしい会社もある。が、数パーセントだ(小数点が付くかもしれない)。大多数は、失敗だ。自分がやっても、おそらくは積み上がるクソを作るだけだという確信がある。だから、他人を批判する気は全く無いのだが、なぜ、この人が会社のアセットを使って、ベンチャーをドライブすることができるのだろう?と、休憩時間に薄っぺらい話をくどくど続ける彼に相づちを打ちながら、純粋に疑問に思った。

そして、随分たってから、同僚に見せてもらった、まったく別の日本の会社の、社内ベンチャーについての資料を見たとき、その理由が分かった気がした。社内ベンチャーを推進するに当たって、「求められる人物像」がそこには書かれていた。正確に覚えているわけでは無いが、修羅場力、向上心、素直さ、そんな感じのことが書いてあったと思う。なにこれきもちわるい。これはブラック企業の管理職が求める都合の良い部下像、であって、ベンチャーを立ち上げる人間の姿ではないだろう。


しかし、ふと思うと前述の彼はそれを満たしていたように思う。(ある種の上司の受けだって多分良いのだ、だから参加しているのだろうし)つまり、そんな能力を使うと、社内のお偉いさんの気分を良くして、多様なステークホルダーの全ての顔を立てる、素晴らしいプランができあがるに違いない。ただし、利用者のことは二の次だ。関係者向けプレゼン資料の上でのアカウンタビリティーだけが高い、利用者無視のサービスが生まれるのだ。

そう考えると、とても納得させられる。と、同時に、日本で成功するベンチャーが生まれづらい、特に社内ベンチャーは、という理由も分かった気がした。