アンコウ鍋

sea devil hot pot

Photo: "sea devil hot pot" 2011. Tokyo, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

都心から地下鉄で少し、駅の階段を登るとすぐ国道が通っている。商店街も何も無いそんな道沿いに、古くからの鮨屋が一軒。

引き戸を開けると、カウンターはもうお客で一杯だ。座敷でビールを飲みながら、集合まで少し待つ。去年のアンコウ鍋会では、やや熱燗をがぶ飲みし、お会計もだいぶ大変な事になった様であり、今年はもう少しじっくり鍋を頂こうという感じ。


丸一匹分?だろうか。とんでもない量のアンコウが、野菜も控えめに大皿に盛られてくる。良く行く居酒屋の料理番が、今日は客の一人として、鍋奉行をしてくれる。

「料理人の手だから、そのまんま手づかみでいいわよね」

と、鍋にリズム良く具を入れていく。それが、妙に説得力があるのだ。


アンコウの身を山と鍋に入れて、とどめに、かぶせるように肝をどっさり載せる。もう、下の野菜も身も見えない。
あとは、グツグツ肝が煮融けるのを待つばかり。

東京マラソン恐怖の真実

買い物に行こうと、少し遠くの駅に向かって歩いていると、もの凄く交通規制されていて、殆ど車が入れないようになっている。そして、僕の行く先には人垣が出来ていて、週末の都心には珍しく、人出がある。今日は東京マラソンなのか。

僕がマラソンに出くわしたのは、もう午後になってのことで、選手の列ももう後ろの方。頭の上によく分からない謎キャラのマスコットをつけてグループで走る人も居て、結構ゆるい。

僕の目的地は、マラソンコースが完全に遮っていて、進めない。さてどうやってここを突破したものか、ランナーを眺めながら考えていると、はとバスが目に入った。

なぜ、はとバスが?よく見ると、はとバスはマラソンの最後尾にぴったり付けている。あれは何をしているのだ?


どんなマラソンにも、最低限守らなければならない規定のタイムというものがある。最後のランナーが、自分のペースで走り終わるのを待ってくれるマラソン大会は(町内健康マラソンならともかく)多分無い。つまり、はとバスは、規定タイムに間に合わないランナーを、回収しているのだ。

パックマンのモンスターのように、どん尻のランナーがパクパクと食われていく。

そうやって、回収されてしまったランナーはどうなるのか。はとバスがゴールに着いた後、家に帰されるのか。いや、そんな甘いものでは無いかも知れない。東京都最果ての、どこかの離島に連れて行かれ、来年の東京マラソンの記念品を作る労働をさせられるのかもしれない。

恐らく、彼らがビックサイトに帰還できるのは、来年の今頃になるだろう。

鮨屋のショーケースのカッパ

Photo: 河童 2010. Tokyo, Japan, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

Photo: "河童" 2010. Tokyo, Japan, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

慣れない町で、初めてのバーを開拓して、窓際のテーブルで飲んでいると、向かいの鮨屋のショーケースがどうも気になる。鮨屋のショーケースなのに、鮨のようなものが全く入っていない。何故か、カッパのようなものが入っている。


店を出て、ショーケースをのぞき込むと、やはりカッパである。

「なにしてんですか?」

「ん?俺か?」

「ここは鮨屋ですよ」

「まあ、ほらカッパ巻きとかあるから」

「まあ、そうでしょうが。」

「広い意味では、プロモーションだよ」

「なるほど、、なんかこう、和む雰囲気がありますね」

「よく、誰かに似てるって言われるんだけどね」

「ああ、そうかもしれません」

「いや、でも俺カッパだから」