インド料理屋に於ける人種差別に関して

Photo: “4 sticks of sugar”

Photo: “4 sticks of sugar” Winter 2020. Tokyo, Japan, Apple iPhone XS max.

いつものインド料理屋。相変わらず、ビリヤニが最高すぎる。

食後、もうアルコールを飲まない僕のためにか、友人はマサラティーを頼んでくれた。ほどなく、熱いカップが置かれる。そして、スティックの砂糖も置かれる。インド人には砂糖が4本、日本人には砂糖が1本。

”砂糖が、4本?”

そして、躊躇無くカップに注がれる砂糖。嫁にコーラを禁じられている人がやることでは無い。


特に別注された訳では無い。インド人には4倍の砂糖が、規定値で供されるのだ。なんというアンチポリティカルコレクトネス、なんという非インクルージョン。ふと疑問に思ったのだが、日本で作られる砂糖スティックは、つまり日本人用の量で作られているという事なのだろうか。

という事は、インド産の砂糖スティックなら、1つで済むのだろうか。そして、そんなジャリジャリの紅茶は美味しいのだろうか。

ん?砂糖の追加?あ、僕は要らないです。

揚げ卵への愛

Photo: plain-pasta 2010. Tokyo, Japan, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

卵カレーがうまい、という話を何年も前に書いた。
だから僕は、自分が卵カレーが好きなのだと思っていたのだが、どうもそういうことでは無いようだ。問題は、カレーの中に沈む「揚げた」卵だったのだ。


有楽町あたりのタイ料理屋で、僕がメニューの写真に釘付けになり、なんとしてもオーダーしたいと DNA レベルで思ってしまったのが、揚げ卵盛り。(タイ料理の名前は、例によって覚えられない)

注文してみると、薄く衣を付けて揚げた卵に、少し甘辛な挽肉がかかっている。卵1個などとケチな量では無いのが好ましい。

いったい何キロカロリーあるのか知らないが、この揚げ卵の盛り合わせは、とても魅力的なメニューであり、是非、あらゆるタイ料理店に置いて欲しい。

カレー食べ放題

Photo: Curry - free reffils 2010. Tokyo, Apple iPhone 3GS, F2.8/37.

Photo: “Curry – free refills ” 2010. Tokyo, Apple iPhone 3GS, F2.8/37.

その日、僕は昔勤めていた街に、久しぶりに足を向けた。昼には、昔良く行ったトンカツ屋に行こう、と決めていた。朝から仕事をして、昼が近づいてお腹が空いてくるにつれ、独特の衣のトンカツと、定食に付いてくる、ちょっと変わった漬け物の姿が、浮かんできた。昼、部屋ををそそくさと出ると、僕は冷たく細かい雨の中を、店の方角に歩き出した。街はあまりにも久しく、途中で一回道を間違えた。


いよいよ店が見えてくる。しかし、暖簾が収まるはずの場所には空白が。店の扉になにやら紙が貼ってあり、嫌な予感がする。幸い、店はまだ閉じられた訳ではなかった。ただ、真新しい張り紙によれば、もうランチの営業はしていないのだった。

まずい、これはまったく想定していなかった。腹が減っていて、雨が降っていて、トンカツを食べるはずが路頭に迷っている。こういう時、間違いなく僕の今日の昼飯は「外し」になる。避けようが無い。それは僕の経験からも、あらゆる食べ歩きの書物からも、明らかな真理だ。逃れられない、運命だ。


それでも、僕は無駄なあがきをすべく、無理矢理考えついた二番手の店に向かって歩き始める。

一番新しいネクタイを危険にさらすことは承知で、通り沿いの焼肉にしよう。とびきりうまいわけでもないが、リーズナブルで懐かしい。しょぼいワカメスープも、今なら美味しい。しかし、というかやはり、焼き肉屋は、意味不明なセンスの居酒屋に変わっていた。しかも、その居酒屋までもが店仕舞いしてい た。よろしい、これは想定の内だ。更に歩く。ちょっと遠いが、懐かしい中華料理屋で名物の湯麺を食べることにする。残業の途中でよく食べに行った。

床がヌルヌルして、厨房には下ごしらえで切られた野菜が笊に山盛りになっている。活気があって、台湾の下町のような匂いがする、、はずの店は、区画丸ごと、とびきり大きなタワーマンションになっていた。フロントにコンシェルジュ付き。

こうなれば、iPhoneに全てを託すしかない。食べログアプリを起動し、GPS周辺検索でランチトップに来た店に迷わず向うのだ。1位、中華料 理、ランチ平均予算2万円。無理。2位、カレー、ランチ平均予算千円。よし。ここにしよう。昔から店名だけは知っていたが、行ったことが無かった。


「お皿を取って、好きなだけ盛って下さい」

あまりの展開に、僕は業務用ジャーのご飯を大盛にし、巨大な豚タン入りのポークカレー(甘口)をかけていた。ポテトサラダを反射的に載せ、もやしの ナムルでバランスをとった。らっきょうを大量に追加した。なんだここは、カレーバイキングの店なのか?システムが分からない。席について、なにがなんだか 分からないまま、カレーを食べる。どんな状況でも、カレーはうまい。むしろ、カレーがまずいってのは、よほどのことだ。

直ぐに、左隣に二人連れのサラリーマンが座る。店を紹介したと思われる方の男は、太っている。

「ここは何度でもお代わりできるんですよ。xxなんか、いつも 4回はお代わりしますよ。僕はもう、ここ以外でカレーを食べる気がしないです。そうそう、xxなんか若いから沢山食べるんでしょう、いいと思いますよ、ここ」


うんざりだ。そう思った。カレー千円で食べ放題の店。おかずも盛り放題。お代わりし放題。それはつまり、デブまっしぐらではないか。まもなくして、 右隣にも、太った男が座る。太った男に挟まれてカウンターでカレー。まったくもって、うんざりだ。だいたい、俺は別にカレーなんて、食いたくなかったじゃないか。新しいネクタイにカレーって、最悪じゃないか。しかも、食べても食べても減らないのは、実は皿がとんでもなくでかいってことじゃないか。

しかし、もう遅い。空きっ腹をかかえて、冷たい雨の中を歩くよりは、食べ放題カレーでお腹が苦しい方が、いくらかは幸せなのだ、きっと。

左隣の男は、カレーのお代わりを盛りに行った。僕は大急ぎで残りを食べきって、外に出る。雨は止む気配は無く、しかしカレーのお陰で体は温かい。ネクタイも無事だった。満腹すぎるほど満腹だ。まあ、来年ぐらいに、もう一度食べに来てもいいか。