思いつきの旅(ただし、御安全に)

Photo: “Shinjyuku 2021.”

Photo: “Shinjyuku 2021.” 2021. Tokyo, Japan, Apple iPhone XS max.

緊急事態宣言が再発令されようとする、まさにそのタイミングで、ならず者氏から小旅行の提案がある。相変わらず、ノールールだ。彼の思いつきで、旅のようなものが決行されるのは今も昔も変わらない。

しかし、安全性に最大限の配慮を行う彼のこと、旅の内容は僕の家の前から、もう一人の家の近所まで、ドラクエウォークドライブをする、なお、会食等はせずさっさと解散する、というものだった。さすが、ISOなんちゃか、とかの世界に生きているだけの事はある。


文字通り家の真ん前まで迎えに来てもらって、ドラクエウォークしながら(彼はウォークモード)、ゲーム会社勤務氏の家までドライブ。高速は使わずに、なんやかんやで片道1.5時間ぐらいかかる。甲州街道から、久しぶりに見た新宿駅の光。バスタ新宿のある景色に慣れる前に、まったく電車に乗らなくなった。

車の数が減り、少し山のような地形が混じり始める頃に目的地に到着。ここは、そういえば自分の実家のあたりにむしろ近い。社外に出ると、大気はずいぶんと寒く、セブンの駐車場はえらく広かった。待ち合わせの友人を探す。あの駐車場の隅に座ってる怪しい人物、あれじゃね?(違った)


合流して、たわいの無い話をする。気がつけば、3人が物理的に顔を合わせるのは2年近くぶりだ。ゲーム氏の奥さんもちょっと顔を出す。こちらは10年ぶりぐらい、全然変わらない。酒も飲まないし、食事もしない。ただ、距離をとって静かに話しただけ。途中で駐車場の冷えを感じて、午後の紅茶ホットの加温中を買う。それ程には熱くなかった。

日清の激辛の焼きそばと、謎のエナジードリンク (version 1.0.0と書いてあった)をお土産にもらってきた。

YOUR CHOICE

Photo: “YOUR CHOICE.”

Photo: “YOUR CHOICE.” 2018. Tokyo, Japan, Apple iPhone 6S.

「あんた、俺を誰かと勘違いしてるよ!」

前を歩いていたサラリーマンが突然振り返り、僕の友人に啖呵を切った。

「は?どうかしましたか?」

イヤフォンを外して、礼儀正しく問い返した友人に、サラリーマンもア然として「は?」

朝の駅のどまんなかで、大の大人が顔を見合わせてしばし呆然としている。そんな話を、ワインを飲みながら聞いている。


何者かに自分がつけられていると勘違いしたとして、こんな啖呵を切らせるのには、相当な覚悟というか、相当な恐怖が必要だろう。

友人にたまたま後ろを歩かれただけで、そんな恐怖を味わうものなのか。

確かに、見た目は怖い。最近、運動不足で一回りガタイが大きくなった友人は、仕事仲間の若者達からは企業舎弟とか、そんな風に言われているらしい。20年前に、僕が初めて出会ったときも、この人はきっと怖い人だから、間違っても深入りしないようにしよう、と考えた。

実際、かれは至極まっとうな人間で、反社会勢力でもないし、昔やんちゃだった、みたいな事も無い。外資系 ITに 10年以上勤めて、自ら選んで起業して、最初は色々苦労しながらも、今は着実に歩んでいる。しかし、残念ながら人は見た目が 100パーセント。


さて、ワインだけでは寂しいので、なにかつまみでもとろう。チーズの 3種盛りなんて良いんじゃないか。これはリストの中から選ぶのか?勝手に選ばれるの?

「君のおすすめを持ってきてくれたまえ、的な感じでいいんじゃない?」
と彼は言う。しかし、そんな見た目で、しかも、今日のトレーナーには「YOUR CHOICE」って書いてある。(しかも全部大文字だ)俺ならそんな人間に、「君のセンスで選んでくれたまえ」みたいなことを言われたくないね。震える。

で、頼んでみた。チーズの銘柄を訊かれることも無く、無難なセレクションで勝手に選ばれて運ばれてきた。まあ、そんなもんだ。

サーファーに貝を貰う

Photo: plain-pasta 2010. Tokyo, Japan, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

Photo: “sleeping seeshell” 2010. Tokyo, Japan, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

サーファーに貝を貰った。

元々飲む約束をしていた、友人のサーファーが、ビヤバーのカウンターにおもむろに瓶にみっしり詰まった何かを出したときには、にわかにその正体は分からなかった。

「今日は、暮らしに彩りを添える、ちょっとした生(い)きものをお土産に持ってきた」

と言うので、何?育てる系?と勘違いしたのだが、どうやら貝を育てろ、ということではなく、美味しく調理して一杯やってくれということらしい。


そのサーファーは例えば、「俺はトイレットペーパーで拭いても、確認などしない」などと、常日頃から言い切るならず者であり、どうやってこの貝を入手したのか懸念したが、ちゃんと採って良い場所で採集してきたものだそうだ。

それにしても、貝ほど調理するときに、一抹の憐憫を感じてしまう素材もない。今日は良さそうなアサリがあるな、などと高いテンションで買ってきても、砂を吐かせているうちに、なんとなく目が合うと(目は無いが)、熱したフライパンの中に放り込む気力が10%程減衰する。

それでも、家で飼える類のものではない(ないよね?飼えるもの?)ので、ザラッとオリーブオイルに放り込めば、数分で美味しくなってしまうのではあるが。


さて、今朝程から塩水の中で息を潜めているこれらの貝。アサリっぽいが、平貝というらしい。(名前が、でかいムール貝みたいな平貝とまぎらわしい)一個だけでかいのは蛤。

味は格別とのことなので、トマトソースまみれにしてパスタにかけるのも気が引ける。さて、どう調理しよう?