「ビール持ってきてちょうだい。」
箱根は大涌谷の飯屋で、常連のていでオヤジが店のおばちゃんに声をかけている。
そもそも大涌谷に常連というものが存在しうるのか。
「この地獄丼てのは何?」
それは辛いのよぉ、凄く。と、オバチャンはまるでお勧めしない
それは、つまり僕が今まさに食べているやつだ。大ぶりのチャーシューが、白髪葱と唐辛子で少し辛めに味付けされている。
自分的にはチャーシューも柔らかくて、結構美味しいんだけど。いや、この手の店のものとしては、むしろぜんぜんありだけどな。。
写真と紀行文
箱根は大涌谷の飯屋で、常連のていでオヤジが店のおばちゃんに声をかけている。
そもそも大涌谷に常連というものが存在しうるのか。
「この地獄丼てのは何?」
それは辛いのよぉ、凄く。と、オバチャンはまるでお勧めしない
それは、つまり僕が今まさに食べているやつだ。大ぶりのチャーシューが、白髪葱と唐辛子で少し辛めに味付けされている。
自分的にはチャーシューも柔らかくて、結構美味しいんだけど。いや、この手の店のものとしては、むしろぜんぜんありだけどな。。
今日のお任せを頼んだら、3皿目にミスターマッシュルームが現れた。
「ハロー、おいしいよ!」
と言ってるね。
大阪に来た時には、少し無理をしても、行きたい店がある。鶴橋の焼肉街からは外れた場所にある、もう40年以上やっている店だ。
カウンターに並んだロースター、造花と黒電話、阪神戦を流すテレビ。出てくるホルモンは安くてうまい。オヤジと息子の二人で、ずっと切り盛りしている。僕は人情肌の店主というのが苦手なのだが、ここのオヤジさんの威勢は好きだ。
半年ほど前、オヤジは少し元気が無くて、息子が店に立っていないことへの、常連客の質問にも言葉を濁したものだった。
だから、盛夏の折、久々の店に近づきながらも、オヤジ大丈夫かな、と少なからず心配だったのだ。
しかし、今日は入口近くのカウンターに腰掛けたオヤジは、戸が開くと嬉しそうに、よぉ、久しぶり!と迎えてくれた。
先客の居ないカウンターの奥では、だいぶ白髪の増えた息子が、いつものようにビビンバの支度をしていた。オヤジほど、愛想があるわけじゃないが、そんな空気も含めてのこの店だ。
息子は店に戻って来ていた。いいかげん肉の仕事は息子に任せたのかとおもったら、やっぱりオヤジが肉を切ってタレと和えている。息子が(とはいっても、僕よりもだいぶ上なわけだが)ビールを出してくれる。
切りたてのばら肉も、瑞々しいシンゾウ(ハツ)も、しみじみいい色をしている。
そんな店の仕事を見ながら、良かったなぁ、と思う。
オヤジはとても幸せそうで、最初にこの店の暖簾をくぐった十年前と同じように、さ、何にしよか、何からいくか。と声をかけてくる。いつもの掛け声だ。
新幹線の時間を気にしつつ、今日は良かったなぁ、と、本当に思った。