蝦蛄

Photo: 蝦蛄 2006. Japan, Contax i4R, Carl Zeiss Tessar T* F2.8/6.5.

Photo: "蝦蛄" 2006. Japan, Contax i4R, Carl Zeiss Tessar T* F2.8/6.5.

行ってみると、香川は海だらけだった。どこへ行っても、海が当たり前のように見える。

そんな香川の、ちょっと高そうな鮨屋に行ってみた。ちょっとお刺身をもらって、なかなか美味しかったので、お勧めを聞いてみると、蝦蛄が良いという。


僕は別に蝦蛄がそんなに好きというわけでもないのだけれど、せっかくなのでとってみた。そうすると、とても大ぶりで、良い香りの蝦蛄が、これでもかと出てくる。蝦蛄というと、ちょっとモソモソした食べ物という認識だったのだけれど、これはもっと瑞々しい。

香川の海産物で一番感心したのは、この蝦蛄でした。(んで、高級店とは言っても、お会計はとても安く感じました)

旅の終わり

Photo: zeissikon 2006. Kagawa, Japan, Contax i4R, Carl Zeiss Tessar T* F2.8/6.5.

Photo: "zeissikon" 2006. Kagawa, Japan, Contax i4R, Carl Zeiss Tessar T* F2.8/6.5.

旅の終わり。

ホテルをチェックアウトし、荷物をフロントに預けて、少し街を歩く。飛行機の時間まで、まだ少しある。

うどんとか、鮨とか、なんとなく和風なモノばかり食べていて、ふとマクドナルドが食べたくなった。でも、こんな時に限って、マクドナルドが見つから ない。google に聞いてみると、瓦町の方に 1軒あるだけ。遠くて、とても行く気になれない。そういえば、駅のモールにロッテリアがあったような気がする。そう、ちゃんと見たわけではないけれど、記 憶の中にひっかかる。

昼食を買いに来る会社員で混むロッテリアで、ハンバーガーを買う。向かいの天ぷら屋で、天ぷらを一つだけ買う。香川独特の、平天と呼ばれる、平らな薩摩揚げのようなもの。ひどくノロノロとした店のオバチャンは、1つだけ天ぷらを買う僕に、酷く愛想が悪かった。


また港に行った。もう用が無くなった市街の案内図を草むらにひいて、腰を下ろす。酷く熱い。

学生風の4人の男女が、海を見ながらはしゃいでいる。留学生だろうか、西洋系の男が1人居て、皆でさかんにビデオカメラを撮っている。僕は、港の光 を、さして考えもしないでパシパシ撮って、そうして、最後のフィルムを使い切った。全部写真を撮ってしまうと、カメラもようやく役目を終えたような気がし た。思えば、旅の中でこれだけ自分に近く感じたカメラは、初めてかもしれなかった。


缶ビールを飲みながら、ハンバーガーと平天を食べた。ビールを飲みながら、どっちかと言えば、コーラの方が飲みたかったと思った。いつも、後から気がつく。街は平日の日中で、ごく普通に動いている。僕だけが、なにもせず、どこにも行かず、そこに座っていた。

五右衛門風呂

Photo: 五右衛門風呂 2006. Kagawa, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Planar T* 1.4/85(MM), Kodak EBX

Photo: "五右衛門風呂" 2006. Kagawa, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Planar T* 1.4/85(MM), Kodak EBX

旅番組でおなじみ、五右衛門風呂。

見るとやるとでは大違い。そうは言うけれど、やっぱりやってみないと分からない。


夢をおっかける貧乏さんを扱うテレビ番組が、ちょっと前に取材をしていったという。高松空港から山一つ越えて、その貧乏さんの隠れ家にやって来た。 放棄された農家を買い取って改装し、畑を作り、生活をしている。ここで、五右衛門風呂に入れるらしい。田んぼに囲まれたわらぶき屋根。うん、いかにもだ。

あらかじめ連絡を入れてもらっていて、着いた時には、庭の隅に据え付けられた五右衛門風呂からは煙があがり、お湯が沸かされていた。

どうぞ、と言われてまじまじと触ってみると、当たり前の事だが鉄むき出しの底面がやけに熱い。本当にこれに入るのだろうか?


「あのー、なんか底に敷いたりしないんですかね?」
「あー、ごめんごめん、忘れてた。」

危ない。あまりにも危ない。そのまま入ったのでは、ただの釜揚げだ。貧乏さんは、あまり細かいことは気にしないのだ。畑の脇の五右衛門風呂で、体を 洗うのもそこそこに、窯につかる。貧乏さんが、畑の生け垣あたりに生えている花を切っている。何に使うのだろうと思ったら、窯の中に入れてくれた。ハーブ の束だった。結構嬉しい。


薪に落ちたお湯が、水蒸気になって釜の周りを取り囲む。灰に水がかかって、なんだろう、焼き芋みたいな匂いがするなかで、首だけを出して、真っ昼間 に風呂に入る。非日常すぎて、アトラクションのようだ。釜の底に板を敷いているとは言っても、足の裏は、じわじわどんどん熱くなってくる。五右衛門風呂の 暖かさというか、熱さの独特さはやっぱり入ってみないと分からないものだ。

このお風呂の設計上の難点は、水道の蛇口が5メーターぐらい向うの、畑の真ん中にあることだ。そこからホースで水が引っ張られている。つまり、自力 ではうめられない。かといって、貧乏さんも、ガイドさんも、女性なので遠慮して母屋の方に引っ込んでしまった。つまり、僕は一人、うだり続ける構造。


五右衛門風呂は庭に面して置かれている。景色を見たかったので、簾は上げておいてもらった。

畑を挟んで、道の向うから、農家のオッサンが歩いてくる。微妙に目があって、会釈するものの、見ないふりをされる。じーーーっと、オッサンを目で追いながらつかる五右衛門風呂は、なかなかに味わい深い。