春景

Photo: 春景1 2008. Tokyo, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 35-135mm/F3.3-4.5(MM), Kodak EBX

Photo: "春景1" 2008. Tokyo, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 35-135mm/F3.3-4.5(MM), Kodak EBX

早朝の堀端は、カメラを手にした人々でごった返していた。にもかかわらず、朝の冷たい空気と、ひときわ静かな桜の花のせいで、騒々しい気配は無かった。全てが、静かで澄み切っていた。


誰もが同じものを撮っている。誰もが美しい桜の姿を創造しようと、撮っている。奇妙な熱気の中で、人々はファインダーをのぞき込み、桜と自分だけの会話をしようとする。沢山の人が居るのに、誰もお互いを見ては居ない。ただ、桜に魅入られるようにシャッターを切っている。

僕も同じ事だ。浅ましいな、と少し思う。


結局、東京で桜が咲いて空が晴れたのは、この日のこの一時だけだった。上がってきたフィルムに写った桜の景色は、今までとは少し違っていて、それは、いつもとは違うレンズを使ったからというだけでは、無いように思えた。

桜、堀、鮎

Photo: 堀端の桜 2003. Tokyo, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Planar T* 1.4/85(MM), Kodak EBX.

Photo: “堀端の桜” 2003. Tokyo, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Planar T* 1.4/85(MM), Kodak EBX.

都心の桜も結構綺麗。特に、空襲を逃れた皇居のまわりの桜は、樹齢も古く堂々としたものだ。空襲?それは、はるか昔のことだけれど、そんな歴史も、やはり今日の街並みをつくる傷の跡。


去年の桜の時期に撮った写真、結構綺麗だったのにお蔵入りしていたので、載せておく。今年は、あまりちゃんと撮りに行けなかった。その代わり、花見はちゃんとした。堀端を歩いて、近くの縁日で鮎を食べて(塩辛かった)、馴染みの店で白アスパラとビール。桜は長持ちするけれど、少し肌寒い春だ。