マハラジャマック in ニューデリー

Photo: “Chicken maharaja MAC.”

Photo: “Chicken maharaja MAC.” 2013. New Delhi, India, Apple iPhone 4S.

世界のマックを食べるいつもの企画。

マックの入り口に、ターバンを巻いた警備員が立つ国、インド。もうすぐ夜の 9時になろうとするマックの中は、インドの若者達で結構混んでいた。中の民度はまあ、思って居たよりもマシな感じ。その価格帯を考えると、富裕層しか入れないのだろう。


ビッグマックは無かった。そもそも、いわゆる牛肉を使ったハンバーガーが無い。食べものの制限が厳しいインドだけに、そのメニューの有様は、世界共通度が高いマックにしては、えらくローカルな感じになっている。ビッグマックの代わりに、マハラジャマックといういかにもなメニューが燦然と輝いている。

オーダー。もちろん、生水から作られた氷が入るようなドリンクは頼まない。ダイエットコークなんて飲みたくないが、缶飲料一択。毎日ビオフェルミンを飲んで、善玉菌を増やして臨んだこの旅だが、生ものなんて絶対に食べたくない。


そのビッグマック然としたパッケージを開けると、見慣れたゴマ付きのバンズ。ガブリと食べながら、お、このレタスとトマトはよくよく見れば生野菜なのではないか。インドで生野菜ってあり得ないのではないか。もう食ってしまった、もう遅い。食べ進むしか無い。さらに、パティを味わう。もちろん牛肉ではなく、なにやら鶏の挽肉のように思える。それに、謎のスパイスの味付け。五香粉に比較的近いが、まったく美味しさとかけ離れた方向性の香り。カレーのダメなところだけを抜き出したような味わい。

大まかにいって、クソ不味かった。腹は壊さなかった。

積年の謎の正体、臭豆腐

Stinky tofu

Photo: “Stinky tofu” 2012. Taiwan, Apple iPhone 4S.

僕は、その臭気を、頭の何処かで人間の死臭だと確信していた。

その甘い腐敗臭は、熱風のような温度を持っていた。その臭気が鼻に入ると、熱い温度を脳が感じた。

中国大陸の至る所で、かいだ臭い。北京の公衆トイレで、少し似た気配を感じた。

上海のとっちらかった屋台街でも、感じた。中国腸詰のような露店の辺りで嗅ぐことが多い気がして、暫くは腸詰を炙った臭いだと思っていた。でも、実際は腸詰はそんな匂いはしていなかった。

あれは、絶対、何かの死体だ。「甘くて不快な腐敗臭」人が腐った時の臭いの記述は、たいていこんな感じだ。ということは。。中国は、怖いところだ。そう思っていた。


台北。少し迷いながら辿り着いた、点心の有名店。時間のかかる小籠包のつなぎに、ちょっと気になっていた名物も一皿取ることにした。安かったし。

そして、唐突に現れたのだ、そいつは、まさに、その臭いをさせて皿の中に収まっていた。臭いは、臭気というよりも、やはり熱気として感じられた。

台湾名物、臭豆腐。

名前は知っていた。20年近く前に台北に来た時から、名前は知っていた。臭いものだと言う事も知っていた。公衆トイレの臭いに近いとも書いてあった。だから自分から近寄ることはなかった。しかし、まさか、こいつがアレの正体だったのか。


今まで、自分の意志に反して、何かを食べられなかったことは無い。たいていの、まずい、変なものも食べてきた。でも、これは無理だ。不快を承知の表現で言うならば、目の前の丼に、ウンコが盛ってあるぐらいに無理だ。暫く逡巡した。しかし。

臭豆腐、箸の先についた一片を食べることもできなかった。

「魚片湯」が超一流にまずい

Sliced fish soup

Photo: “Sliced fish soup” 2011. Singapore, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX.

旅先の醍醐味は、驚くほど不味いものに出会うことである。

フードコートのチキンライスの旨さに気をよくした僕は、ひときは人が並んでいる魚ソバの店を目指した。「魚片湯」と書いてあるので、きっとそんな感じの食べものなんだろう。12時をまわって、近所の会社員達が、昼食を求めて長い行列を作りはじめている。


OLの後ろについて、店の中を覗きながら待つ。並んでいるのは見事に中国系ばかり。周りの会話は、完全に北京語で、まったく分からないし、店の人も北京語で応対だ。(シンガポールは英語も公用語だが、北京語も公用語だ)並んでいる人達のわくわく感、みたいなものが伝わってくる。きっと美味しいんだね、この店は。

僕の前に並んでいたオバチャンは、何人前もの持ち帰りを頼んでいる。簡単なタッパのような容器に並々とソバが入れられる。味付け?の唐辛子醤油のようなものも付いてくる。で、それがちょっと漏れているあたりが、アジア的。僕の前のOLは、一人が常連で、一人が初めて連れてこられたといった感じだ。セルフサービスのやり方に、いささか戸惑っている。


店の中では、会計係のオジサンと、調理係が2人。一人は、白濁したスープを中華鍋に煮立てて、手際よくソバを茹で仕上げる。もう一人は、ひたすら魚のフライを作って積み上げる。ひたすら、ひたすら積み上げる。ビールにも合いそうだ。どう考えても、美味いねこれは。

僕の番になって、もちろん北京語は分からないので、身振りでメニューを選ぶ。ぶっきらぼうに見えるオジサンは、結構親切だった。


たっぷりのスープに、米粉のソバ、魚のフライ、青梗菜。さて、食べてみよう。

まずはスープを。。マズッ!なんか、凄く嫌いな味がする。フライは、、なんか苦い。
致命的に合わない、劣化した脂の気配と、なんかいけない感じのする出汁。これは、まずい。中華圏の下町で出会う、机の脚みたいな例の味だ。全然、口に合わない。なんで人気なのか、まったく分からない。

いや、醍醐味だわ。