セントポール教会跡、マラッカ海峡に臨む西側の外壁。物売りのおばさんが路面に店を広げている。
首輪のない、数匹のネコが彼女の周りで群れて遊んでいる。おばさんの方にカメラを向けると、岩陰からネコがニャンと顔を出す。マラッカのネコは足が長くて、とてもすらりとしている。
家族なのだろうか、母親のような一匹が先導して、三匹を水のお椀が置いてある木陰に連れて行く。ここはとても暑い。
写真と紀行文
セントポール教会跡、マラッカ海峡に臨む西側の外壁。物売りのおばさんが路面に店を広げている。
首輪のない、数匹のネコが彼女の周りで群れて遊んでいる。おばさんの方にカメラを向けると、岩陰からネコがニャンと顔を出す。マラッカのネコは足が長くて、とてもすらりとしている。
家族なのだろうか、母親のような一匹が先導して、三匹を水のお椀が置いてある木陰に連れて行く。ここはとても暑い。
運河にかかる橋を渡ると、まさに、ここは僕が成田空港で一週間前に買い求めた、ガイドブックに載っていた写真と同じ場所。マラッカ観光の中心であるオランダ広場だった。特徴的な、赤茶色の土壁が赤道至近の太陽に焼かれている。
一匹の痩せた子猫が、車道を渡ろうとあたりを伺っている。僕はとても嫌な予感がして子猫を遮ろうとするが、怯えたネコは一時停止している車の下に潜り込んでしまう。呼んでも出てこない、このままでは轢かれてしまうだろう。
同行者も気づいて子猫を呼ぶ、車をのぞき込む。ドライバーも気付いて、恐る恐る車を動かした。
刹那、車輪の間から子猫は間一髪滑り出して、元来た植え込みの方に消えていった。ホッとするが、あの要領で長生き出来るのだろうか。何かあったの?とスペイン人のオバチャンが僕に訊く。
「Kitty!」
「?」
「Cat」
「Oh..Gato」
「そうそう」
この東洋人達はちょっと不思議ね、という顔をされる。
オランダ広場は酷く暑い。ド派手なリキシャーのようなものが、沢山止まっている。アイスクリーム売りがキンキンと鐘を鳴らし、お土産売りの露店がとりどりの帽子を並べている。僕は、ガイドブックにある構図の写真が一体どこから撮られたのか、不思議に思って周囲を見回す。
露店の脇にひっそりある階段から、広場を見渡すバルコニーに登った。特に制止する物は無いのに、誰も登っていない。そう、ここから撮ったに違いない。実に、この広場を一枚に収めるのであれば、ここしかない。
ちょっと穴場っぽかったので、ひっそり撮って、ひっそり降りた。暑い、そういえば帽子を持ってこなかった。