香川雑感 その1

Photo: “Hiyashi x2 in Nakanishi-Udon.”

Photo: “Hiyashi x2 in Nakanishi-Udon.” 2018. Kagawa, Japan, Apple iPhone 6S.

香川に誰かを招いたからには、うどんを食わせなければならない。半ば、そんな義務感だけで、友人は僕をこのうどん店に連れてきたのだろう。

地元の人、外回りの営業マン、近所で働く職人、そんな人々が平日昼時の店内に溢れている。つまり、観光的要素はゼロ。と言うことは、システムが全く不明、メニューもノットシュアー。

しかし、ここは頑張って自力で注文してみよう。お盆を持って、まず天ぷらなどのサイドメニューを選び、しかる後に、メインのうどんを選択。薬味は最後にセルフで。まあ、その辺りの流れは、近年乱立気味の東京のうどん店でもよく見かけるし、十分に対処可能。


天ぷらは穴子みたいなのがあるからそれ、あと卵天も好きなので取る。うどんは、、今日も暑いから、冷たいうどんが良いね。飲んだ後に、ひんやりした出汁で食べるうどんの美味しさを、随分前に知った。えーと、どれだ、「冷やし」か?玉数?2玉で。ん?お猪口を取るの?どういう事。んで、このご飯茶碗みたいなのに氷まみれで盛られたうどんの山は何??なんだよこれ、これじゃないよ。。

僕が食べたかったのは、正しい名称としては友人が目の前で食べている「ぶっかけ」だったのだが、僕の「冷やし2玉」のコールで出てきたのは、氷が盛られて丼に入ったうどん。小さい冷やした汁のお猪口がついてくる。何これ、笊蕎麦なの、なんなの。知らないと思っていじめてるの。まあ良いよ、冷たいから、それにしたって、こんな量いらないよ。ホントにこれで 2玉なのかよ。

気を取り直して、穴子天ぷらを、と思ったらそれはタコのゲソだったり。タコのげそ天って、瀬戸内の標準メニュー?

注文難易度高すぎるし、腹も膨れすぎる。
あと、氷が冷たすぎる。

 

コーラ、うどん、昆布の天ぷら

"コーラ、うどん、昆布の天ぷら"

Photo: "コーラ、うどん、昆布の天ぷら" 2010. Tokyo, Japan, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

飲んだ後にラーメン屋に行くと言っていた友人は、店の手前の路地を右に折れた。

「やっぱ、うどんにしよう」

僕は正直、少しホッとした。飲んだ後のラーメンは色々な点から見て最悪だが、うどんなら、だいぶマシな気がする。


で、最近のお気に入り、普通のコーラ、うどん、昆布の天ぷら。

普通のコーラといっても、もうゼロカロリーの方が普通なのだろうか?僕が言う普通のコーラは、そういう意味ではカロリーの沢山ある全糖のコーラだ。数年間飲んだこともなかったのだけれど、あるとき、久々に飲んだらハッとするぐらい美味しかった。

うどんは、そういうものが食事になるとはあまり考えていなかったのだが、何軒かちゃんと美味しいうどん屋をみつけて、食生活のローテーションに入った気がする。

昆布の天ぷら。多分、出汁を取った後の廃品利用なんだと思うのだが、これ美味しい。天ぷら衣と出汁のカタマリのような昆布が、予想外に合う。ある意味、店でしか食べられないタイプの食べ物。

釜玉うどん

Photo: 三太郎 2006. Kagawa, Japan, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX

Photo: "三太郎" 2006. Kagawa, Japan, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX

腹が減っていた。

朝から何も食べていなかった、いや、正確に言えば、買い置きのオレンジジュースを飲んだきりだ。

朝起きてカーテンを開けると天気が良かったので、ホテルの部屋から見える港に行って、船に乗ってみた。あずきじま、と昨日まで読んでいた小豆島へ。港で、何か食べればいい、とその時は思っていた。


フェリーに乗ると、直ぐにデッキに上がって、遠ざかる高松を見送った。もうすぐ秋の気候だというのに、太陽が暑い。

小豆島に港は幾つもあるが、結構小さい部類の港に着いてしまった。農協の直売所と、土産物屋、フェリーの切符売り場、駐車場、ガソリンスタンド。そ れで全部。唯一あった怪しげな定食屋は「本日休業」の札が下がっていた。腹が減った。どこか街まで行けば、なにか食べるモノがあるだろうか。スタンドで、 アクエリアスのペットボトルを買った。水分だけは無いとまずい。しかし、まさかそれから数時間、本当になにも食べられないとは思わなかった。


島を歩き回って、結局午後 4時になってしまった。何か食べたい。何か、とはいっても、結局、うどんなのだ。香川にはうどん屋しかない、とは言わないけれど、それはそれで間違いが少 ないのだ。一時間に 2本のバスに乗って、なんとか少し大きな港にたどり着くと、ついに一軒の飲食店を発見した。うどん屋だ。もう、このさい、うどん屋で良い。

入り口の脇に自販機が置かれた、店の見た目はいけてない。ぜんぜんいけてない。中に入っても、全然いけてない。だぼシャツのオヤジが 1人と、オバチャンが 2人。オバチャンは、なにやら天ぷらを揚げている。


丁度、障子の張り替えをする業者が入っていて、店の中はバタバタしている。嫌な予感がする、うまいわけがない。先客は一人。数時間前にバスの運転手 に行き先を聞いていた、多分北欧系のガイジン女性。所在なげに、注文が出来上がるのを待っている。多分、天ぷらうどんを頼んだのは彼女だろう。

天ぷらうどんは、えらい高いので(なんとなく香川のうどん価格に慣れていたので、500円オーバーは高く感じるのだ)、安い釜玉にする。それでも香 川で見た中では、結構高めの値付けで嫌な予感がする。観光地にありがちな、トラップだろうか。出来上がるのを待っていると、白いゴム長を履いた、スーパー の精肉部の従業員といった風情のおっさんがやってきて、大きなビニール袋一杯のウドンを仕入れていった。なるほど、自家製麺を、どこかに売っているのだ。 少しは、期待が持てるか。


釜玉うどんは、先客であるスウェーデンの(憶測)彼女よりも早く出てきた。うどん醤油も一緒に出てきた。なるほど、うどん専用の醤油があるのか。天かすもツボに入って付いてきた。ショウガと葱も付いてきた。結構、ちゃんとしてる。

そして、出てきた釜玉は相当うまかった。うどんの評価方法について、僕は詳しくはないが、うどんのエッジがえらく立っているし、色もやけに良い。小 麦の香りがする。出汁の味のきいたうどん醤油もなかなか。これが地元の実力なのか、それとも腹が減りすぎていたせいだろうか。あっという間に食べて、終 わった。

そして、フェリー乗り場に向かった。