西ノ宮神社

Photo: 1999. Kobe, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Fuji-Film

Photo: 1999. Kobe, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Fuji-Film

西ノ宮神社の池。

池の中に網をいれて、おじいちゃんと子供が、なにかを掬っている。夏は、盛りを迎えていた。池は青々とした藤棚に囲まれ、静寂がある。何故か、セミが鳴いていない。

この子にとって、この夏の一日は忘れがたいものになるのだろうか。あるいは、記憶の底にひっそりとしまわれた、日常の風景になるのだろうか。この写真を見ていると、ふと自分の記憶の底をさらってみたくなるような、そんな気になる。

神戸を印象付けたものの一つが、水。この境内の池の水。殺伐とした海の水。夙川の柔らかい水。酒場で飲んだ、灘の酒の水、、。

神戸#1

Photo: 1999. Kobe, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Fuji-Film

Photo: 1999. Kobe, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Fuji-Film

半年前のある日、神戸にいくことに決めた。村上春樹の「辺境・近境」の中に書かれた旅を、自分でやってみようというのが、動機。この時の様子は、 [今日の一言] に書いた。

実は、出かけるときにカメラも持っていった。そこらへんに転がっていたフィルムをカメラに詰めて、いつものT2をバックパックに入れた。後で見た ら、2年以上前のフィルムだった。感光剤が劣化して、なんか、ずいぶん前の景色を撮ったような、不思議な写真が出来上がった。

この旅から幾らかの時間がたって、部屋の隅から忘れていたこの時の写真が出てきた。何枚かを選んで、記憶を辿りながら書いてみることにする。

1枚目は、西ノ宮神社。静かな境内には、家族連れがポツポツと歩いている。宗教は、その是非はともかくとして、文化の一つの現れ方。神社もまた、日 本というあやふやな形の文化の一例。神戸という、少しハイカラ」な土地の神社。

阪神電車

Photo: 1999. Kobe, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Fuji-Film

Photo: 1999. Kobe, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Fuji-Film

阪神電車が通り過ぎる。

地図もガイドブックも持たず、ただエッセイの文面だけを参考にして歩いたので、自分がいる場所がよく分からない。少なくとも、線路に沿って歩いていけば、目的地に着くことは確かだ。

しかし、線路沿いの道には、飲食店はおろか(どんな「いけてない」店でも、迷わず入ったはずだ、もしあれば)日陰すらなく、通すがる人も無く、無意味に疲労だけがかさんでいく。太陽がジリジリしている。