歯医者に通う

二ヶ月近く通わされていた歯の治療が、ようやく終わった。

とかく、歯医者というものは際限なくダラダラと治療をするものであり、黙っているといつまでも通うはめになる。案の定、僕は3本の虫歯の治療のために8回も通院した。
「もっとまとめて治療できないんですかねぇー」と、言えばいいのだろう。(職業柄、お客のそういう反応が、予想以上にプレッシャーになることは知っている)

しかし、僕の通っている歯科の医院長に限っては、とてもそんなことを言える相手ではない。


医院長の特徴は、二人の有名人に集約される。

見た目は、石原慎太郎である。目には、揺るぎない自信がみなぎり、ロマンスグレーの髪をなびかせて、鮮やかな手際で治療する。

受付には、権威のありそうなデンタルスクールの卒業プレートが幾つも飾られており、スタッフは若いねーちゃんではなく、ベテランの助手を揃えてい る。治療には容赦がなく、いざとなれば患者の不意を付いて、虫歯を隠す歯茎を電気メスで焼き切ることも辞さない(めちゃくちゃ痛かったぞ、コレは)。


声は、田崎真也である。
「ここのかみ合わせが良くないから、歯茎に負担がかかっているのです。」
まるで、ワインの特徴を説明するかのように、ささやく。
「全部入れ歯だね」と宣告されても、「はぁ、そうですかぁ」と言ってしまいそうな声だ。

そして、見事なテクニックで、虫歯をミクロン単位で追いつめていく。削った歯を埋める金属は一発で収まり、麻酔の使いどころもバッチリだ。


こんな人に、「あと何回ぐらいで終わるんでしょうかぁー?」なんて、僕は聞けない。

そういうわけで、僕は素直に 8回通院し、晴れて虫歯を全て治した。とりあえず、やり残して気がかりだった宿題を片づけてしまったような、そういう気分である。

写真のページ

[写真鑑賞]を作り直している。(極めてまれに)送られてくるアンケートの結果を見ても、このコーナーが「良い」と書いてくる人は滅多にいない。

原因は幾つかあるのだろう。(そもそも写真自体が「カス」なのかもしれないけど、、。)しかし、原因の一つに操作性の悪さがあることは間違いない。 このコーナーはとにかく重いし、操作がしにくい。あまりの操作性の悪さに、僕自身滅多に見ないので、ますますメンテナンスされずにほったらかしになるとい う悪循環、、。


なんで重いのか、というとデカイ写真を載せているためだ。なんで操作がしにくいのか、というとデカイ写真を載せているためだ。じゃあ、小さくすれば?

そうはしたくないのだ。写真を撮った僕としては、なるべく大きなものを見て欲しいという気持ちがある。写真を小さくし、圧縮率を上げれば、操作性は良くなり、ダウンロードの時間も短くなる。

しかし、そうはしたくない。それは、作り手の一方的な思いこみに過ぎないことは、分かっている。しかし、その手の思いこみを正すのは難しい。事実、 「出来の悪いもの」には、そういう思いこみに失敗の原因があることが多い。思いこみを正すのは、難しい。特に、芸術的やセンスの部分では。


しかし、今回は思い切って写真も小さくし、見栄えの点から拘っていた黒の背景もやめ、リニューアルしてみた。なんだ、少し見た目を変えただけじゃないか、と思われるかもしれないが、画像データは全て作り直し(作り直しだ!)、HTML も全て書き直した。膨大な作業量だ。

でも、どうせ分からないのだろうけど、、。

なんといっても、この羊ページ自体、サーバーに乗っているデータは 8MBぐらいだが(今回のリニューアルでかなり減った)、マスターデータは 400MBもあるのだ。(知らなかったでしょ)

大阪のタクシー

「もう、サミットは大阪で決まったようなもんですわぁーーーっ。」
「はぁ、そうですか、、。」
「そらそうですわ。なんや言うても、、(以下略)」

僕は、生まれた初めて降り立った大阪で、ものすごい勢いでしゃべり続ける運転手と一緒にタクシーに詰め込まれ、窓の外の渋滞をウンザリしながら眺めていた。

僕にとっては日本でサミットが開かれること、そしていくつかの地方都市がサミットの会場として誘致合戦を繰り広げていること自体が、ほぼ初耳に近かった。そいうえば、なんかのニュースでやっていたような、、。


「むこうには、どれぐらいで着きますかね?」

と尋ねると
「いや、そんなにかかりまへんで。どんなに混んでも、まぁ1,700円ぐらいですなぁ。それ以上は、ぜったい、いきまへん。まぁ、ようお客さんで、、(以下略)」

僕にとっては値段はどうでもよかったが(僕は所用時間が聞きたかったのだ)、まだまだ先は長いようだった。


新幹線や飛行機で通り過ぎたことはあったが、一度も歩いたことのない街、大阪。新大阪の駅を降り立ち、とりあえず今日の仕事先であるホテル・ニューオータニに向かおうと、タクシーに乗った。(電車の接続が、いまいち分からなかったのだ)

しかし、乗りこんでわずか10秒で、僕は大いに後悔することになった。このタクシーはハズレだ。
「きょうは、暑おまんなぁー。」

から始まった運転手のおしゃべりは、大阪府の中心街で日常的に発生している大渋滞に巻き込まれてから、ますます冴え渡った。50代半ばの白髪の運転 手は、まさに生粋の大阪人といった様子である。この運転手にとって、お客様にさまざまなおしゃべりを持ちかけることは、明らかに「サービス」の一環である らしかった。

東京から来た大阪は初めての、20代のサラリーマン。「サービス」したくてしょうがない運転手にとって、僕は全くのカモネギだった。

大阪のタクシー運転手というのは、みんなこうなのだろうか?ならば、このタクシーがハズレというよりも、タクシーに乗るという選択自体がハズレだったのかもしれない、、。(これ以降、僕は全日程電車で移動した)


結局、2000年のサミットは、沖縄県名護市で開催されることになった。(落選した都市の代表者からは、「あまりにも政治的な判断だ」という意見が見られたが、サミットの開催地選定が政治的でなくてどうするのだろう?)

僕はサミットの開催地に決まった名護に滞在したことがある。そこには、基地と、それにべったり依存して、今は寂れ疲弊しきった街があった。(繁華街 の外れに、「ジェイズ・バー」という看板を見つけ、おおいに盛り上がったりしたものの、その店も閉じられて久しいようだった。)

本土の政治に長年振り回され続けていながら、政治の力に頼らざる終えない現実が、名護にはある。


さて、大阪城公園にほど近い、ホテルニューオータニの車寄せに着いたとき、メーターの料金はとっくに 2,000円を越えていた。

それでも、「サービス」から解放された僕は、喜んで料金を払い、車を降りた。