世界遺産(のレプリカ)の横

Photo: 長城の横の遊園地 2004. Contax Tvs Digital, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105

Photo: "長城の横の遊園地" 2004. Contax Tvs Digital, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105

中国に来たからには、万里の長城は見たい。しかも高速道路ができて、3時間もあれば往復できるらしい。時間は無いが、早起きすれば、、。「早朝とかでも来てくれるんですかね?」

日の出、息も白い頃、ちゃんとツアーのバンが待っていた。


光化学スモッグに曇る北京市中心部を抜けて、郊外(!)の万里の長城へ。なんだ、万里の長城って市内にあるのか。しかし、市といっても 1.68万平方キロ(東京都が 1,781平方キロだから、その 10倍弱)もあるから、やっぱりそんなに近くには無い。

20代前半のガイドは分かりやすい英語を話す。農民籍の出身だが、大学を出て観光の勉強をし、英語も覚え、ガイドになったらしい。将来のニューリッ チの予備軍というわけだ。そのガイド曰く「万里の長城は年々短くなっています。近所の住人が家をたてるのに石や土を持っていってしまうから」

ホントかよ。でも高速道路から見る古い長城は崩れ果て、埃っぽい景色の中に貧しい家々が建つのを見ると、それもうなずけるように思う。それに、中国、というこの土地なら、それぐらいはあるだろう、と思える。


そして万里の長城へ。車を降りた瞬間から、立ち並ぶお土産屋、ノシノシ歩く記念撮影用のラクダ(なんでラクダ、、)、もう完全に予想できた世界ではある。(ガイド曰く「ラクダを写真に撮ると、金をせびられますよ!」)

実際に長城を歩いてみると(ガイド曰く「これは 30年ぐらい前につくったものです」)、まさに山の稜線に沿って建築されているのであって、観光用に整備された部分(ガイド曰く「もう 600回以上来ましたよ、ここ」)を歩くのでさえ、ちょっとうんざりするぐらい長い。長すぎて、途中で引き返した。いったい、あれをどんどん歩いていく と、どこまで行けるのだろう?南に行けば、(本当の長城は)海に出る。


長城は、壁の部分と見張り台の部分から成っており、見張り台部分では 監視カメラが目を光らせ、おみやげ屋と、ラクダ屋(写真が撮れる)が待ちかまえている。(ガイド曰く「とんでもなく高いから、買うべきじゃありませ ん」))お客は、日本人もちょっと居るけど、大半は中国の他の地方から来た人たち。日本で言えば、天橋立とか、浅草とか、そいういう感じか。まるで、遊園 地だな、、と振り向くと遊園地があったよ。

世界遺産(のレプリカ)の横に、何の躊躇もなく遊園地をつくってしまうこの国、このシュールな光景。よく見るとジェットコースターが走ってる。もの すごく乗ってみたかったが、誰も乗っていなくて、そもそも何の動力で動いているのかいまいち分からなくて、やめた。(戻って来られないような気がした)こ の勢いでは、北京五輪に向けて、「万里の長城ホテル」ぐらいは建てそうな気がするよ。
ガイド曰く「翡翠の工場があるんですが、帰りに見に行きますか?」

なんだ、結局、お前も何か売りつけたいのか。(しまいに、お茶を買わされた)

魔女の鍋的食い物

Photo: 2004. Beijing, Mainland China, Sony Cyber-shot U20, 5mm(33mm)/F2.8

Photo: 2004. Beijing, Mainland China, Sony Cyber-shot U20, 5mm(33mm)/F2.8

羊ページ管理者たる者、羊を食べなくてはいかん。


先ほどの油炒飯の店。周りのテーブルを眺めると、皆、仕切りのある鍋でグツグツ何かを煮ている。火鍋ってヤツか。言葉が全く分からないので、あれくれ、あれくれと指さして頼む。2回行って(気に入ったのだ)何となく分かったのだが、この火鍋屋はセミオーダーメイドみたいな仕組みになっている。

まず、基本になる鍋を頼む。そうすると、辛いスープと、そうでも無いスープの二色が入った鍋が来る。中には出汁の素なんだか木っ端くずなんだか分か らない変なものがいろいろ浮いているが、具は入っていないので、適宜具になる肉を選ばなくてはいけない。肉は、1つ頼むと、普通に山盛り 3人前ぐらい出てくるので、知らないで人数分頼むとものすごい量の肉が運ばれてくる。(運ばれてきた)


肉は、牛と羊のいろいろな部位をかなり細かく(30種類以上)選べる。羊脳だって頼める。その次には、野菜(29種類)を頼む。キノコ(13種類ぐ らいある)も別に頼む。ただし、時々「メイヨー」な素材もあるから、全部頼めるわけではない。肉だけ頼んだら、野菜を頼めと、しきりに店員が言う。しゃぶ しゃぶみたいに、もう肉しか食わないとか、そういうのはダメみたいだ、バランスが大事。これらをまとめてぶち込んで、グツグツ煮込むと、「ヘルシーな火鍋 が今 OL に人気です」とかそういう甘っちょろいジャパナイズされた食い物ではなくて、呪われてるとしか思えない、魔女の鍋的食い物ができあがる。おお、レゲエスタ イル。


最後に、つけだれを注文する。つけだれは、大根おろしでさっぱりと、、ってこれは、おろしニンニクじゃないか!大根おろしの代わりに、なんかの油の 中にたっぷりおろしニンニクが投入された、強烈なつけだれ。これに、グツグツ煮込んだ羊肉をごっそり突っ込んで、焼けるような白乾(中国焼酎)蒙古王で飲 み下すと、なんか変な脳波が出る。値段は恐ろしく安くて、「机一杯」頼んでも 2,000円しない。酒をボトル一本頼んで、3,000円。

この火鍋は下品に煮込んで、まぜて、飲み下すと、旨い。中国いいなぁ、と白乾に酔いながら思う。

なんでまた俺はマックを食っているのか

Photo: ビッグマックセット in NRT 2004. Chiba, Sony Cyber-shot U20, 5mm(33mm)/F2.8

Photo: “ビッグマックセット in NRT” 2004. Chiba, Sony Cyber-shot U20, 5mm(33mm)/F2.8

なんでまた俺はマックを食っているのか。

そう、旅立ちの前にはマックを食うのだ。成田空港のマクドナルドには、2種類の人間が居る。日本食にうんざりして、母の味 McDonald’s を食う不良外国人。そして、海外出張の直前だというのに少しでも飯代を浮かせたいジャパニーズサラリーメンだ。


俺は別に飯代を浮かせたいとは思わないが、決まり事なのでビッグマックを食べる。うーん、うまくない。このグローバルスタンダード(!)なうまくなさは、すごい。

それにしても、ワクワク海外旅行が今から始まろうとしている成田という場所にあって、これほど客の目が濁っている店もないな。僕の前の背広姿の若い 男は、怠そうにチーズバーガーを食っている、多分味は分かってない。横のおやじは、雑誌を眺めながら、ただの義務感としか言いようのない動作でポテトを食 い続けている、残せばいいのに、飢えてるのか。


早起きのせいで腹は減っていたので(午前中の便なんかにするんじゃなかった)あっという間に食い終わる。気分ワルイ。俺は、カップ、包装紙諸々を、残りのポテトもろともゴミ箱に放り込むと、イミグレーションに向けて歩き出す。帰ってきたら、絶対スーパーサイズ・ミーを見よう、と誓った。(もちろんマックを食いながら見るのだ)