Photo: "シロタレ" 2005. Tokyo, Sony Cyber-shot U40, 5mm(33mm)/F2.8
北区、某モツ焼き屋。
「モツだ!モツだ!今日はモツだ!」とモツ気分が高まる時期があって、そんな時は、圧倒的に行きにくい場所でありながら、勢いで電車に乗ってしまう。(勢いがないと行けない)
この店で美味しく食べるには少しコツがあって、とりあえず最初のところは黙っておくこと。焼き台の前に陣取る名物(?)の大将が上手く塩梅して、客の注文をさばくので、勝手にわーわー注文するのは御法度。この店では、あくまで謙虚に空気を読むのだ。さしあたり飲み物は?と訊かれたら、レモンハイが良い。ホワイトリカーをシャーベット状になるまで冷やしたものを割り、レモンを4つばかりひねって落とし込む。作るのに手間が掛かるのに400円しない、このチューハイが妙に旨くて、妙に酔う。虎一ファッションの職人にまじって座りながら、チューハイをグイグイ飲んで待つ。
まもなく、本日の一串目が出てくる。「どうだい?うまいだろ?」と自信たっぷりに出してくる串は、その通りに美味しい。ここは大将の呼吸が気に入るなら、とても良い店。Web を見ると半可通のコメントで、常連となれ合っている、と書いてあることもあるが、そこは下町の口調というか客あしらいというだけ。気に入らないなら、来なければいい。
よくよく見てみれば、一見も常連も区別せずに、出来るだけ公平にネタを出し、均等に注文を受けているのが分かる。少し荒っぽいけれど、独特の客あしらいは、ある種心地よい。顔を真っ赤にしていればお茶も出してくれるし、遅く来て並んでいる人用に、人気のネタを取っておいてもくれる。最近、土曜の閉店が早くなったと思ったら、客の引く時間はちっとも変わってない。あげくに、閉まったシャッターをくぐって、お客が入ってきてしまうのは驚く。(しかも大将、OK出すし)
名物はいくつかあって、上シロはその一つ。塩で焼かれた、フワフワのシロは、他の店でお目にかかる機会は殆どない。でも、個人的には、もう少しあっさりした普通のシロに、少し甘いタレを付けたヤツが好きだ。脂が少なくて、あっさり食べられる。シロの質が良いから、臭くない。こういうものを、こういう 火加減で食べられるのって、日本だけじゃないかなぁ、と思う。
ノスタルジーで旨い、というのではなくて、料理としてちゃんと美味しい。偉い。