焼きそばお粥朝食セット

breakfast in China

Photo: "breakfast in China" 2011. China, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

香港の朝食と言えば、なんとなく、そりゃお粥だろ、というイメージがあった。だいぶいまいちな(とは言っても、中華圏としてはだいぶクセの無い western style の)ホテルの朝食バイキングをやめて、今朝は外に食べに行く事にした。


そんなに早起きはできないので、朝のラッシュも過ぎた少し遅めの朝。商店が並ぶ通りを、まあ、ここらへんかとたいした当てもなく歩いてみる。なかなか繁盛している弁当屋、あまりにも敷居が高そうな超ローカルな麺物屋などはあるのだが、お粥を食べさせそうな店が無い。

これは、香港の朝食はお粥というのはただのステレオタイプだったのか?と思い始める。あるいは、朝マックのように時間帯限定のメニューだったりするのだろうか。それもあり得る。散々、裏路地の商店をのぞき込んで、「粥」的なメニューのある店を発見。お客も何人か居るし、店の人もフレンドリーっぽくて入りやすそうだ。


少しペタ付く写真付きのメニューを見る。お粥だけ、というのは何故か無くて、焼きそばらきしものがセットになっている。焼きそばとご飯とか、お好み焼きとご飯、というのは大阪国では常食されていると聞くが、お粥と焼きそばというのは、また新たな文化の幅を見る気がする。とりあえずそのセットを頼む。

でかい丼に並々のお粥と、これまたたっぷりした焼きそば。お粥は魚の出汁が利いていて、なかなか美味しい。具は、たまーにほぐれた魚の身が入っている。あと、なぜか麺の切れ端とか。多分、出汁とかが共用なのだろう。焼きそばはソース味と言えなくもない、具はもやしか何かがはいっているのだが、とにかく脂っこいのと、根底に中華風味的クセが横たわっており、とても完食は不可能。いずれにせよ、丼お粥と焼きそばは、朝食としては相当重い。

日本の外で食事をしていつも思うのが、量がたいてい多い、と言う事。ファーストフードのコーラやポテトの量もそうだし、きちんとしたレストランでスープからサラダから、順に食べていたらメインにたどり着く前に満腹だ。中華圏でもそれは同じで、残すのが許容される(気にされない)文化とは言っても、食べきるのが困難な量が常に出る。これが基準だとすると、日本人て、世界で一番小食なんじゃないか、そんな風に思ってしまう。


さて、周りを見回すと、このセットで食べている客は殆ど居ないではないか。皆、熱いチャイのようなものをメインの丼に付けて、それを啜りながら新聞なんかを見ている。よくよくメニューを吟味すると、飲み物セット、のようなものがあるみたいだ。なるほど、朝から焼きそばセットは、やっぱり無いよなぁ。

店内のテレビは何故か、ディズニーチャンネル。ミニーがフフフと笑っている。

なんちゃってペニンシュラに泊まる

Peninsula?

Photo: “Peninsula?” 2011. China, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

そもそも、iPhone上の楽天トラベルの小さな画面で、旅行先を探したのが間違いだったのだ。

上海、ペニンシュラに泊まれて飛行機代・サーチャージ・宿泊費用込みで4万円。安い、安すぎる。別に上海に行ってみたいという事はそれ程は無いけれど、飛行機も3時間と短いし、ペニンシュラに泊まれるなら、という気分で行く事にした。

僕には別の出張の予定もあったので、手配は同行者に任せたのだが。。

パスポート番号さえ訊かれずに発行された、Webチェックインできない謎のe-ticketからして、どうも怪しかった。もっと言えば、宿泊先の住所をgoogle mapsに入力すると、ザ・ペニンシュラとは河を挟んだ対岸のあたりを示すのが全く納得がいかなかった。

これ、ペニンシュラじゃないんじゃないの?


もちろん、ペニンシュラでは無かった。webをちゃんと読めば書いてあった事だし、全部で4万円というのは、そもそもありえなかった。iPhoneの小さな画面で、適当に決めては行けない。特に、それがうまそうな話ならなおさらだ。今となっては、HAYATTという名前のモーテルに泊まらされた友人の事を、あまり笑えない、そんな感じだ。

「ペニンシュラ」

と言えば、それが本物のペニンシュラならばタクシーは一撃で車寄せに横付けしたに違いない。しかし、空港から乗ったタクシーのドライバーは、我々の渡したホテルへの地図を訝しげにのぞき込み、どこかに携帯電話をかけ、あげく、「ここら辺だと思うんだけどよぉ」というような事を中国語で我々に話しかけながら、ぐるぐる下町の市場らしき街路を走り回った。

そうして、僕は「半島」という漢字のネオンを遙か先に発見し、それと同時に運転手も嬉しそうにそれを指さしていた。


一応、それはビルであり、ポーターのような人も居た。英語でフロントはどこ?と訊いたら困ったような顔をされたが、気配でああ、あっちと言われた。漢民族的な、まったく歓迎とかホスピタリティーとかを示さない無愛想極まるフロントは、それでも英語を話し、宿泊のticketを受け取った。

部屋はちゃんとカードキーで、しかし一枚しかよこさなかったのでそれはないだろ、と言ったら無言で2枚目をくれた。ここは交渉の国なのだ。ポーターのような人は、荷物を運んでくれる気配は皆無であった。ああ、中国。

ちょっと違うペニンシュラは、それでも中国本土の土地は広いと見えて部屋は結構大きく、ライティングデスクの他に、ゆったりしたソファーも置いてあった。

懸念していた風呂場も綺麗、セーフティーボックスなんかもちゃんとある。でっかいサンヨーのSDテレビが、どんと置いてある(NHKも映る)。窓の外を見ると、地上げに遭って打ち壊されたような粗末な長屋が見え、八百屋らしき商店が道路に野菜を並べ、なんとも凄い立地ではあったが。

15年後にアメリカでまずいランチボックスを開ける

lunch box

Photo: "lunch box" 2011. US, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

人の流れについて行くと、地下の広いスペースが食堂とランチボックスの配給場所になっていた。

そのスペースは、見た事が無いくらい広い。もちろん、日本でも幕張の展示場などは広いが、普通の天井高で部屋がひたすら奥に続いている光景は日本ではちょと見ない。あえていえば、もの凄く明るい地下駐車場?そんな雰囲気。まるでテレビで見た、アメリカの航空母艦か州刑務所の食堂のようだ。


ホットミールというのも選べたが、時間が無いので、ランチボックスにする。普通のと、ベジと、イタリアン、みたいな選択肢になっている。イタリアンが大量にあまっており、嫌な予感はしたが、あえて取ってみた。

もう、15年前のように、ランチボックスの中身に面食らったりはしない。危険そうなショートパスタの容器は開けもしないし、岩のようなパニーニはちょっとづつ囓る。ポテチみたいなスナックの袋が丸ごとはいっていても、それは、そんなもんかと思えるようになった。そうだ、初めての海外出張でアメリカに行ってから、もう15年が経ったのだ。


その時と、感じる事は変わっただろうか。ITという世界に無限の未来があった15年前とは、やっぱり気分は違う。おっかない外人にしか見えなかった人々は、その中にも良い人と悪い人が居るんだな、ということぐらいは分かるようになった。空港やホテルに漂う、何とも言えない外国の臭いが怖くはなくなった。

そうして、ちょっと落ち着いて、外の国を見ている気がする。