コーラ、うどん、昆布の天ぷら

"コーラ、うどん、昆布の天ぷら"

Photo: "コーラ、うどん、昆布の天ぷら" 2010. Tokyo, Japan, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

飲んだ後にラーメン屋に行くと言っていた友人は、店の手前の路地を右に折れた。

「やっぱ、うどんにしよう」

僕は正直、少しホッとした。飲んだ後のラーメンは色々な点から見て最悪だが、うどんなら、だいぶマシな気がする。


で、最近のお気に入り、普通のコーラ、うどん、昆布の天ぷら。

普通のコーラといっても、もうゼロカロリーの方が普通なのだろうか?僕が言う普通のコーラは、そういう意味ではカロリーの沢山ある全糖のコーラだ。数年間飲んだこともなかったのだけれど、あるとき、久々に飲んだらハッとするぐらい美味しかった。

うどんは、そういうものが食事になるとはあまり考えていなかったのだが、何軒かちゃんと美味しいうどん屋をみつけて、食生活のローテーションに入った気がする。

昆布の天ぷら。多分、出汁を取った後の廃品利用なんだと思うのだが、これ美味しい。天ぷら衣と出汁のカタマリのような昆布が、予想外に合う。ある意味、店でしか食べられないタイプの食べ物。

夏の最後のレンゲショウマ

レンゲショウマ

Photo: "レンゲショウマ" 2010. Tokyo, Japan, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

だいたい、大きなカメラを持っていると、おばちゃんに記念撮影を頼まれる。あんなものを持っているんだから、写真が撮れるはず。芸術的な部分は別にして、確かにそれは正しい。実に国内外を問わず、記念写真はよく頼まれる。

夏の最後の日のような、その日はとても暑かった。御岳山の山頂、社の奥に立っていると、とても涼しい風が吹き抜け、汗が少し引く。そろそろ先を行こうかという所で、二人組のおばちゃんに呼び止められたのだ。

差し出された携帯で撮ってあげた。だいたいおばちゃん達というのは、「ここで撮って何の記念になるの?」というような、分かりにくい背景を選ぶ。今回で言えば、ただの雑木林にしか見えない背景。だから、経験的に言って、人を少し大きめに撮った方が、評判が良い。


おばちゃん達と別れた刹那、

「あなたたち、レンゲショウマよ、これご覧になった?」

と再び呼ばれる。

御岳山の夏の風物、レンゲショウマの開花時期はとっくに終わっていた。しかも、この夏の暑さだ。しかし、吹き抜ける風が、少し長く花を持たせたのかもしれない。社の片隅に、少し虫に食われながら、二輪のレンゲショウマが咲いていた。僕は多分、その姿を初めて見た。

「こんな所で、待っててくれたのね」


俯き気味に咲く花に、おばちゃん達のお陰で、気がついた。記念撮影にも良いことはある。石段で一休みし、小腹空きスナックみたいなものを分けて食べて、水を飲んでさて今度こそ行こうか。

マラッカに行こう。

Photo: highway 2010. Kuala Lumpur(KL), Malaysia, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

Photo: "highway" 2010. Kuala Lumpur(KL), Malaysia, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

ホテルのコンシェルジュとは、もちろん、あらゆるお客のあらゆるリクエストを訊く立場にあり、我々が夜の9時にもなって「明日マラッカに行きたい」と言い出しても、特に動じることは無かった。マレー訛りの弾むような英語でにこやかに、


「それは良い考えです」

とさえ言い切った。ただ、バスで現地に行くというプランは


「外国人には無理です」

ということらしい。マラッカ行きの高速バスのバス停は現在工事中で場所も移っており、恐らく飛行機の時間までに帰ってくることはできないだろう、というのがコンシェルジュの主張だった。

どうするか。ホテルが紹介するバスツアーというもがあるという。一人、220リンギットで安くはない。(タクシーを雇うと4時間で800リンギット、これは高すぎるので却下)ツアーねぇ、というのが我々の雰囲気ではあったが、マラッカに行ってなおかつ飛行機に間に合わせるためにはこれ以外の選択肢は無いように思えた。マラッカはそういえば、世界遺産なのだ。ならば行こう、マラッカへ。


翌朝八時半、ホテルに現れたのは、バス、ではなく「バンだろ」という代物であった。日本で見るメルセデスとは違う、業務車両メルセデスのバンに詰め込まれて、我々はマラッカに向かう。昨日の雨は上がり、メルセデスのガラスについた水滴越しに、朝八時半のクアラルンプール市街を眺める。良く晴れている。

街は、ブロックによってイスラム風、中華風、コスモポリタン風と景色が分かれる。モスクの尖塔が、高層ビルをバックに目立つ。クアラルンプールの市街では、ほとんどクラクションを聞かない。信号と横断歩道はいい加減で、交通ルールも緩いが、人が横断しようとすると車はクラクションを鳴らすでもなく、ちゃんと待ってくれる。その優しさと余裕というのが、僕にとってはとても新鮮だった。そこに作り物ではない、優しいアジア、みたいなものを感じたのだ。