タージ・マハルの日傘警官

A parasol with Indian police officer.

Photo: “A parasol with Indian police officer.” 2013. Taj Mahal, India, Richo GR.

命が満ちすぎている感じのインド。その中で、タージ・マハルは、一切の生命を拒否するように、大理石の固まりとして、周りの混沌とした世界から隔絶して整然としている。

それが、見るものを驚かせる。

こんな混沌とした世界で、どんなプロジェクト管理をしたら、どんな人材育成をしたら、こんな建物を建てられるのか。ノイシュバンシュタイン城も、万里の長城も、実際みてみるとそんなに、、という感じだけれど、タージ・マハルには、これ凄いなと感心する。


緑がもさもさ生い茂り、日が容赦なく照りつけ、野良犬すら地べたに張り付いて動かないこんな土地で、ただ后への追悼のために、こんなものを作ってしまった一人の人間が居た事に、慄然とする。

タージ・マハルから大楼門を望む階段に、日傘警官を見る。ここは僕が今まで行ったことのある「観光地」で一番、過酷な場所だと思う。地元の警官でさえ、日傘が必要な、そんな場所なのだ。日傘というか雨傘だけど。

本場の「ほんだし」

Okinawa soba (thick noodles served in a pork soup)

Photo: “Okinawa soba (thick noodles served in a pork soup)” 2015. Naha, Okinawa, Japan, Apple iPhone 5S.

台風が去った後の那覇は、暑さがぶり返していた。

一人で昼メシを探しに、国際通りの方まで歩いてきた。昼間の裏路地には、どこか寝ぼけたような空気が漂い、夜の喧噪を想像するのは難しい。

お土産屋、沖縄料理屋、お土産屋、沖縄料理屋。通りは、そんな感じで観光客相手の店が連なっている。あまりの暑さに、大きな土産屋に入って涼む。マーケティング的な工夫が凝らされた、およそ思いつく限りの土産物が並んでいる。

紅芋は、ちんすこうにされ、ケーキにされ、アイスにされ、行儀良く買われるのを待っている。どれもピンとこない。


店を出て、料理屋のメニューを覗いて、また歩き出す。昨日、仕事で会った新聞社の人とすれ違う。向こうも驚いた風で、いくら島とはいっても、那覇の大通りで再会するとは思いも寄らない。でもやっぱり、島は狭いのかもしれない。

すいぶん歩いているうちに、通りの外れの方まで来てしまった。ここまで来たなら、公設市場で何か食べるのも良いかと思って、市場に入る。自分の学生時代の記憶にある市場とはちょっと違って、アジアのいろんな所で見てきた市場に凄く近い。特に、臭いが。

アジアの臭いだと思って居たものは、有機物と、温度と、風の感じと、そういうものが作り上げているのかもしれない。本土では嗅がない臭い。


市場の二階は、大騒ぎだ。屋内だが屋台街のようになっていて、何軒もの食堂が、だいたい同じようなメニューで客を奪い合っている。ひっきりなしに料理が運ばれ、観光客の口に運ばれ、喧噪が市場の高い天井に響いている。

僕は、エレベーターの脇の椅子に座って、たいして違いの感じられない店を、ネットで調べている。で、うんざりする。ここはやめて、沖縄そばを食べに行こう。もっと、地元の人が毎日食べてるようなやつを。


市場を出て商店街を奥に進むと、だんだん売っているものが変わってくる。土産物屋は減り、ジューシーをパックに詰めたお総菜なんかが、たぶん、地元の人のお昼用に並んでいる。良い感じだ。

ついに商店街が途切れ、目当ての沖縄そば屋が見えてくる。やはり、かなり、そうとう、入りづらい。というか、入る感じじゃ無い。厨房をぐるっと取り囲むように半分野外にカウンターが配置され、場末のスナックのような椅子が、並んでいる。

客はまばら。食券で一番普通の沖縄そばを買う。400円、安い。厨房の様子を見ながら、自分でお茶をくんで飲む。クソ暑い那覇で、クソ熱いお茶。ほどなく、そばが出てきた。


甘口の鰹だしに、ぼそっとしたそば。すごくうまい、とかそういうのでは無い。土曜日の昼ご飯みたいな味。甘く味付けされた豚肉と、青ネギが嬉しい。カウンターを挟んで厨房では仕込みが続いている。そばの汁を仕込んでいるのだろうか、大きな鍋を相手に女将さんが格闘している。よっこらせっと、大きな袋を取り出す。業務用「ほんだし」

沖縄料理の出汁の基本は鰹だしだ。特に、沖縄の人は「ほんだし」を好んで使うと、沖縄出身の人に聞いたことがある。そして、業務用ほんだしを、客の眼前でなんのてらいもなく、がばっとお玉でとって、鍋にぶち込むその感じ。その清々しい感じで、むしろ、そばの味は2割ほど美味しく感じたのだ。

最後の紫陽花

A round fan

Photo: “A round fan” 2013. Kyoto, Japan, Richo GR.

落ち葉を踏んで果てしない坂を登ると、実際には、ちょっとした小山のようなものだけれど、蹲(つくばい)に最後の紫陽花が浮かんでいた。
京都の初夏はやはり暑くて、涼を求めて頂の喫茶店に逃げ込んだ。

かき氷の氷は、フワフワというよりシャクシャクだったけれど、ペタペタに汗まみれになって、カラカラに乾いた体には気持ちが良い。


古民家改造カフェ、みたいなものは、とっても苦手なのだけれど、これはいいね。
特に空いてるのが、凄くいい。(休日は大行列だそうです)