新幹線の崎陽軒

Photo: "Shiumai bento box."

Photo: “Not-Shiumai bento box.” 2006. Osaka, Japan, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX.

古い写真を発掘すると言って、1枚目がシウマイ弁当かよと言う話だが、新幹線の崎陽軒というのはなんとも堪えられないものがある。

それに、滅多に飲まないのだけれど、サイダーは好きだ。

14年前の写真だけれど、シウマイ弁当の完成され切った組み合わせは、今も何も変わらない。

来年の目標は、台北に進出したと言う、崎陽軒シウマイ弁当を食べること、だな。


、、なんて書いていて、なんか違和感を感じたのだが、これシウマイ弁当じゃないな。仕切りが違うし、シウマイ弁当にバランなんて入ってない。

単なる謎の弁当と、サイダーの写真だった。

シウマイ弁当

もう一度、シウマイ弁当について書いておきたいと思う。シウマイ弁当とは崎陽軒を代表する駅弁である。なお、崎陽軒はシウマイ弁当しか作っていない と思っている方も居るようだが、実に色々な種類の弁当を発売している。また、崎陽軒は弁当屋だと思っている人も居るようだが、創業当時は売店のような店か ら始まり弁当は作っていなかった、現在はレストランなどもやっている。

シウマイ弁当(740円 – 2007年 5月現在)は、そのあっさりした見た目を考えるとなんだか割高に感じてしまうかもしれない。驚くようなおかずは入っていないし、パッケージも地味な感じ だ。しかし、実際に箸をつけてみれば、納得の工夫が凝らされた、クオリティーの高い弁当であることを納得いただけるのではないかと思う。また、1954年 発売の長い歴史を持つ弁当にもかかわらず、現在に至るまで細かなマイナーチェンジと改良が繰り返されている、進化する弁当でもある。


今回はエッセイではない。純粋に、シウマイ弁当について詳細に知りたいと思っている方のために書いている。ここに書いてある内容は、たまたま TVK か何かで目にしたシウマイ弁当の工場見学番組を見ながらとったメモと、公式 web サイトの情報、並びに私が今まで食べ続けてきた経験をもとにしている。なお、某掲示板にもスレッドが存在しているので、活発に議論したい方は、そちらを参 照するのも良いだろう。

それでは、シウマイ弁当の中身を順に見ていく事にしたい。


シウマイ

まず、シウマイ弁当の中核を成すシウマイである。崎陽軒のシウマイはその公式 web サイトにあるように、冷めても美味しいということを至上命題として開発されている。(実は、翌日フライパンに薄く油を引いて、焼くとこれまた美味しいとい うことは是非知っておくべきだろう)

その伝統のレシピは秘伝かとおもいきや、実は普通に web に公開されている。調味料としては塩、胡椒、砂糖のみを使用。北海道産のホタテ貝柱と、国産の豚肉が具の中核を成す。苦手でなければ、きちんと芥子を付けていただきたい。

なお、しつこいようだが、「シューマイ」ではない。「シウマイ」である。

ご飯

シウマイ弁当のもう一つの特徴は、おこわのような独特の食感のご飯だ。実はこのご飯は普通に炊くのではなくて、蒸気で蒸し炊きするという方法をとっ ている。そう言われれば、タイ料理などで食べる蒸しご飯に似た味がする。しかも、このご飯はなんと熱々のまま、弁当箱に詰められる。このような作り方は、 普通の弁当では絶対にできない。これは、シウマイ弁当の弁当箱として採用されている、エゾマツの経木の折がご飯の湯気を適度に吸い取るために可能となって いる。

お弁当の定番、俵型ご飯は車中でも取りやすく、中央には小梅が乗っている。今の電車はさほど揺れないし、冷蔵技術が発達して梅の防腐効果を期待するまでも無い時代だが、こうした部分にも手抜かりが無いことに清々しさを覚える。

あんず

シウマイ弁当の初心者が引き起こす悲劇が、このあんずをおかずとして誤って食べてしまうということだ。これはある種の通過儀礼と言っても良いだろう。確かに、何かの煮物に見えなくはない。しかし、これは最後の一箸に、デザートとして食すべきものである。

シウマイ弁当のかなりの面積を占めている筍。ちょっとビックリするぐらい沢山入っている。三温糖と醤油だけで 45分かけて煮られている。これはおかずなのか?という疑問を持つ向きもあるが、つまみとして考えるとなかなか優れていると言える。ビールと共に食べてい る時などは、余計に嬉しくなると言えよう。

鮪の照り焼き

二種類の生醤油で焼かれた照り焼き。当然冷めた状態だが、パサパサすることもなく美味しく食べられる。だいたい弁当の焼魚って美味しくないのだが、崎陽軒はこういう部分がちゃんとしている。味が濃すぎないのもたいしたものだ。

玉子焼き&鶏唐揚げ&かまぼこ

この 3つは、さくっと食べてしまうおかずトリオ。シウマイ弁当の緩い部分、とでも言えば良いだろうか。小さいながらも卵焼きは相当ちゃんとつくってある。崎陽 軒の他のタイプの弁当では、より大きく切られたバージョンの卵焼きが入っていることがあり、味わいをより容易に確認することができるだろう。唐揚げはあま り大きくないので、味はよく分からない感じでどんどん食べてしまうのだが、唐揚げ弁当並みに沢山あってもうまいのかもしれない。かまぼこは、かまぼこだ が、、何か工夫があるのだろうか。これは正直よく分からない。ラーメンに於けるナルトのような立場だろうか。

切り昆布&千切り生姜

漬け物の類は好きなのだが、何故かいつも最後にあまってしまう謎の漬け物コンビ。漬け物マニアとしては、シウマイ弁当で唯一、よく理解できないのが この漬け物セクションかもしれない。しかし、ほぼ食べ終わって名残惜しい感じが漂うなかで、ちまちまと昆布をつまむのもまた、シウマイ弁当の豊かな味わい と言えるかもしれない。


さて、シウマイ弁当について改めてふり返ってみると、全てにおいて「冷めてから美味しく食べられる」という大原則が貫かれていることが分かる。これ はお弁当の基本ではあるが、ここまで徹底的に考えられている弁当は、コンビニでの弁当のレンジアップが一般的になった現在では、少ないように思う。

崎陽軒は現在、期間限定のものも含めて、かなりの種類の弁当を提供しているが、やはり定番のシウマイ弁当には揺るぎない安定感がある。たまには趣を 変えようと、崎陽軒の他の弁当を食べてみたりして、それはそれでやはり美味しいのではあるが、一方でシウマイ弁当の完成度の高さには驚かされる。定番に甘 えない、おかずと、ご飯に対する工夫と確実な仕事が、シウマイ弁当を日本で最も売れている駅弁にしている理由であろう。そして、なによりもいつも同じ味わ い。これが一番大切なことだ。

スーツケースと崎陽軒のシウマイ

Photo: 崎陽軒のシウマイ 2004. Contax Tvs Digital, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105.

Photo: "崎陽軒のシウマイ" 2004. Contax Tvs Digital, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105.

午前 2時。大阪市内のとあるホテルの一室。目の前には、30個入りの崎陽軒のシウマイが手つかずの状態で置かれている。腹はすでに一杯だ。


大阪へのお土産は、崎陽軒のシウマイと決まっている。毎回、同じ人に、同じものを、あげるのも芸がないので、今回はいつもの倍の30個入りだ。相手 は、今日はメタルのスーツケースを持っている。シウマイを入れるのに、もっとも向かない鞄があるとすれば、それはメタルのスーツケースに違いない。いい感 じだ。スーツケースにシウマイ、カッコワルイ。

打ち合わせも終わって、ちょっと遅い晩飯を食べて、ちょっと(かなり)風変わりなバーに行ってみたりする。マンションの最上階にある、バー。普通に チャイムを鳴らして入るのだ。淀川の向こうに大阪市街を眺めつつ、思いっきり、ベタベタにセレブな感じが演出されるのは、やはり関西だからか。(値段は驚 くほど安い)


夜半、大阪組と東京組は分かれて、僕たちはいい気分で今日の宿に向かう。やっぱり、夜食だろ、というところで「レゲエ飯」をつくるべくコンビニに入って思い出した。
「シウマイ!」
「あー、鞄に入れっぱなし!」

喰うのかよ。(喰ったが)


注:付け合わせはパスタになっております。