砂漠の中のサターンロケット

Saturn V S-IVB

Photo: “Saturn V S-IVB” 2011. TX, U.S., Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

サターンロケット。月に人類を運んだロケット。

開発者チームを率いたのは、あのV2ロケットを作ったウェルナー・フォン・ブラウン。

計画は道半ばで中止され、打ち上げられることのなかった機体が、NASAの巨大な倉庫に展示されている。まったく馬鹿馬鹿しい大きさ。背伸びして、その切り離し部分を覗きこむことができた。


中身は、メカメカしい。ボードコンピュータと、見たことのない規格のレセプタ。職人技の無数の配線。当時の技術の粋が結集されたのだな、と一目で分かる。この配線の塊が、人間を月まで運んだのか。

打ち捨てられたメカは、厚い埃をかぶっている。年月に凝り固まり、ラバーは劣化している。だが、もし電気を入れたら、眠りから覚めて動き出すかもしれない。そんなリアリティーが漂っていた。


国家の威信をかけたプロジェクトの成果は、今は砂漠の中の倉庫で眠っている。地上で飢える人を尻目に、ロケットを打ち上げる愚かさを、あるいは思うかもしれない。だが、埃をかぶって目前にあるこの機械には、この国が世界の覇権に向けて突き進んだ時代の空気が、まだ残っているように思えた。


本当は打ち上げられて、大気圏で燃え尽きる運命だった機械だ。

予算は確保されず、計画は道半ばでキャンセルされ、ロケットはここに有る。

船越気分で覗く

The raised aqueduct

Photo: “The raised aqueduct” 2013. Nanzen-ji, Kyoto, Richo GR.


様式美、というのはあって、実にそれを作り上げる努力というのは、並々ならないものがあるのだと、最近は思う。

ただのマンネリじゃねーか、という、そのマンネリを作る力というのは、バカにできない。様式美は合理性に勝つ。それって、凄いことだと、改めて思う。

この間、仕事で対談した「エバンジェリスト」みたいな人も、いったいそのテーマで、どれだけのことがいまさら言えるんだろう?と思っていたのだけれど、実際話してみると、すげぇな、と思ってしまった。職人が行き着くと、様式美になるのだ。

別に伝統芸能とか伝統工芸とかに限らない。それが、ITみたいなものであっても、何であっても。


京都南禅寺、水路閣。火サスに出てくる、あのシーン。絶対に見たことがあるはず。

船越が待ち合わせたり、追いかけたり、襲われたりする、例の水道橋だ。これが実際に行ってみると、南禅寺の一番奥まった場所にあって、たまたま行き着くような場所ではない。交通の便も良くないし、この場所へのアプローチは長い一本道だから、さぞかし尾行などもしづらいだろう。

ようは、ここで襲われたりする事は無いだろうし、待ち合わせるような場所でも無いのだ。しかし、絵にはなる。


ということで、ここで事件が展開する妥当性は、実際ところまったく無いのだけれど、京都ゆけむり殺人紀行の様式美としての水道橋は、絶対に必要なのだ。

ここに来たら、どうしたって、船越気分で覗くしかない。この現場に立った僕は、むしろ様式美に自分を合わせてしまうのだった。

Mac 版 ATOK2012 から Google 日本語入力に切り替える

Google 日本語入力 環境設定

Google 日本語入力 環境設定

買った最初の頃は、その SSD の速さに愕然とした MacBook Air Mid 2011 だったが、いつの頃からかやけに不安定になっていた。

動作が遅い。突っかかる、レインボーカーソルが出まくる。アクティビティーモニタすら固まってしまい、SSH で外から入ることもできず、日に一度は電源ボタン長押しになる。このマシンって、こんなに遅かったっけ、と腹立たしくなる。ディスクの修復も、キャッシュのクリーンアップも効果が無い。

OS なんて使っているうちに遅くなるもの、と言うのは宿命的にわかっているのだが、どうも何かがおかしそうだ。

調べていくと、ATOKが原因という気がしてくる。僕が使っているのは、ATOK2012 で Mountain Lion に正式対応しているが、アップデータの適用で不安定さが改善するという。確かに、適用すると暫く改善したように思える。しかし、間もなく症状が再発。元の激遅 Core i7マシンになってしまった。


ふと、別のIMEに試しに変えてみようかと思う。ATOK2013 にバージョンアップする事も考えたが、基本となるコードは同じだろうから躊躇してしまう。Google日本語入力なら無償だから、それで試してみようかと思い立つ。なんとなく、サーバーに情報を送って変換候補を出していたら怖いなと思ってしまうが、そういう事はしていないようだ

ATOK のアンインストールまではせずに、使用する IME を Google 日本語入力に変更してみる。正直、IMEの変更で、これだけの不安定さが完治するとまでは思っていなかったのだが。

ATOK の辞書ユーティリティーを使い、テキスト形式でATOKのユーザー辞書をエクスポート。Google 日本語入力にインポートする。実際、辞書のコンバートは数秒で終わってしまう。少なくともユーザー登録単語については、ここ20年近い僕の成果というのは所詮その程度のものなのだ。

[言語とテキスト]->[入力ソース]で、日本語関連を全てGoogle日本語入力に変更する。念のため再起動して様子を見てみる。


結果、驚くほど動作が速い。クリーンインストールでもしたかのような速度。レインボーカーソルは、全く出ない。入力メソッドを切り替えるときのつっかかりも無い。IME を変えて約一週間、電源ボタン長押しを一度もやっていない。IME だけで、これだけシステムに影響が出るというのは正直意外だ。

サジェスト機能を切って(これが便利という人は多いのだろうが、僕にとっては違和感が凄かった)、キー割り当てを MS IME 互換に変更してしまえば(Windows でキーボードを叩いている時間のほうがやはり長いので、そちらに合わせている)、機能が少なくなった ATOK な感じで別に変換にも利用に耐えないような違和感はない。もともと、それほど ATOK 固有の拡張機能を使っていたわけではない。文法的な誤りの指摘や、送り仮名のルールなどそういう機能が無いことにいささかの不安を感じはする。しかし、圧倒的な速さは魅力だ。

やはり、自分の慣れていない環境での変換なので、そこが漢字かよとか、変換候補の順番がそれかよ(結構、意味不明な変換順序が出てくる場合がある)、とかやっぱり気にしてしまうと、どうかとは思う。だが、実用的な安定性が無いと使いようがないのだから、仕方がない。


そういえば、System 7.x の頃って、Mac の動作が不安定という質問をすると、ATOK をアンインストールしてから出なおせ、というのがデフォルトの回答だったのを思い出した。Windows版の ATOK は、なんの問題もなく 10年以上使い続けている。そう考えると、Mac 版に固有の不安定さだと思う。ATOK 自体の変換や機能への愛着はある。是非、Maverick 版では安定したものを出してほしい。