やっぱりね、田舎だよ

Photo: "The observer in the summer."

Photo: “Observer in the summer.” 2018. Kochi, Japan, Fujifilm X-Pro2, Fujifilm M Mount Adaptor + Carl Zeiss Biogon T*2,8/28 ZM, ACROS+Ye filter

「やっぱりね、田舎だよ」

友人は、諦めたように、そして断定的に、言った。
高松の空港から 20分も南に走ると、もうそこは温泉街になってしまう。日曜日の店のやって無さ加減、恐ろしく広いコンビニの駐車場、沿道の見知らぬ名前の地方銀行。空港に行く前に、最後に訪れる場所として友人が選んだのは、自宅から車で 30分ほどの温泉街の日帰り湯だった。

こっちに向かって飛んでくるアブと戦いながら、露天風呂に浸かっていると、未だ新緑の楓の葉を、風が渡る。良い気分、でもここに住めるか?と聞かれたら無理だなと思う。


小学生の頃、東北のある県の小さな町で 3年間を過ごした僕にとって、田舎暮らしの苦痛、「世間」から置いていかれてる感は、思い出すのに時間はかかったが、理解できる話だった。あふれる自然、自らの意志で選んだならいいだろう。だが、そこに住まざるおえなくなった人間にとっては、不便の象徴でしかなかった。小学生の僕は「田舎」を憎んだし、将来田舎に住みたいとは今でも思えない。

その土地で生まれ、育ったなら、愛着なり、沢山の知り合いなり、そういうものがあるだろう。だが、よそから来た僕たちにとって、そこは故郷では無い。そして、はなからそこに根を張る気のない人間というのは、地元の人間にもきっと分かってしまう。


それでも、今はコンビニというものがあって、日本全国どこでも同じようなものを売っている。同じキャンペーンが行われ、同じ雑誌が並ぶ。赴任した当初、コンビニに行くとほっとした。そう言った友人のコメントには、なんだか妙な説得力があった。

早く戻ってこられると良いね。

ホテルのケータリングのお菓子盛り

Photo: "Flower arrangement."

Photo: “Flower arrangement.” 2016. Bangkok, Thailand, Richo GR.

やたらプレッシャーのかかる出張で、なんともやるせない気分でホテルの部屋に入ったとき、窓際に美しい南国の花が生けられていた。レースのカーテン越しに、ゆったりと河が流れるのが見える。その景色を、本当にまいったな、と思いながら眺めた。


ホテルは言ってみれば一つの国だし、一流どころになれば世界のどこに行ったって、同じサービスを受ける事ができる。枕の固さも、匂いだって同じだ。でも、値段はその国の事情を如実に反映していて、驚きの価格差。個人的には日本のビジネスホテルみたいな値段で泊まれる、台南のシャングリラはすばらしすぎると思って居る。

価格の違いは宿泊費用だけでは無くて、イベント費用なんかにも現れる。例えば、日本のホテルだと、イベントでの飲食物の提供はびっくり価格になっていて、ミネラルウォーター1本、バカウケ 1つ出すんだって凄い金額を取られるらしい。その水の値段でビックマック食えるぞ。


でも、マレーシアあたりのホテルだと、もっと鷹揚にしてくれて、お菓子だって景気がいい。お菓子というか、焼きそばとか、餃子とかが積まれていることに、最初かなりのショックを受けた。もはや夜店。ミーティングの合間に、なんで焼売とか食うんだろう。文化がよくわかない。でも、鷹揚でいい。

そして、それにしても、リッツ・カールトンだとお菓子盛りがマカロンであることに、戦慄すら感じる。マカロン好き放題食えるって、どんだけの王侯貴族?

人生の中で、あとにも先も、マカロン食い放題ってあの時だけだった。
マカロンって、トップバリュで作れないのかな?絶対売れるよ。

アジアの向こう側のフィッシュ & チップス

Photo: "Fish and Chips."

Photo: “Fish and Chips.” 2016 Sidney, Australia, Apple iPhone 6S.

時差は無いけど直行便でも 10時間。近いような、遠いような、よく分からない国、オーストラリア。白人がマジョリティーを占める、アジア太平洋の国。言葉で言うと簡単だが、実際に目にするとなんとも奇妙な印象を受ける。

ビーチ沿いのレストランは、パラソルもソファーも、センスが良い。焼けるような日差しを避けて、傘の陰に席をとって、何を食べようか。イギリス文化圏なら、きっと美味しいに違いない Fish & Chips にしよう。

オーストラリア全体的に感じるのは、どこも値段が高いって事。あるいは、日本の経済的立場が弱くなっているからそう感じるのか、それとも、世界的に貧富の差がハッキリして高級品はどんどん高くなっているのか。多分両方だろう。


味は悪くない。ピクルスが水っぽくて巨大だったり、フィッシュがおかずで、チップスが喰いきれない量入っているのも欧米文化。ソーダで Fish & Chips といのも、なんだか割り切れない気分だが、浜辺の風は気持ちいい。

ここで一緒に、Fish & Chips をつまんだ同期が、この後直ぐに辞めていった。それはそれで、人生の分岐点。(と思ったら、戻ってきた)