不要不急の荒木町

Photo: “Araki-cho.”

Photo: “Araki-cho.” 2020. Tokyo, Japan, Apple iPhone XS max.

震災のときは、他の多くの人がそうだったように何を書いてよいのか分からなかったし、あらゆるところに非日常の緊張感と悲劇的なニュースが存在していて何を書くべきかも分からなかった。

それから時間が経って分かったのは、歴史的な悲劇が襲ってきても、未来はあり日常は続くということ。そして、普通に暮らすことの大事さと、その時の普通の生活を書き残しておくこともまた大切だという事を思い知ったのだった。


震災の時、家に閉じこもるのは精神に大変よろしくないことを学んだ。所詮はバランス。非常事態とは言っても、我々が必要とする日常の要素に変わりはない。この状況で違うのは、一方に生命に関わる明示されたリスクがある、という事にすぎない。

と言うことで、不要不急に外出してオフ会をしてみる。といっても、相手は昔からの友達で、僕にドラクエウォークを勧めた張本人。都内某所の、メタルドラゴンが湧いている場所で、仕事終わりに待ち合わせる。


ひな祭りキャンペーンの「まもの」を倒して歩きながら、そして荒木町。店は、安易にRettyで探して、店の雰囲気からカンで選んだ。最初に出てきた、どこかの地鶏正肉、焼き鳥って正直見た目がそんなに変わらない。でも、それはあまりにもうまく、二人の口から出てきた感想は、

「凄いなこれ。」

材料は正肉の地鶏を除けば普通のもの、しかし焼く技術が凄い。塩が、割と昭和な強めに付いているのも、好みに合った。

荒木町のこんな店ががら空きなのは、やっぱり世間から少しずらすのが大事なんだなと思う。それでもこの日は1階は予約で埋まっていて、2階に通された。お客は我々だけ、貸切。普段なら気まずく感じてしまうが、今の時期はかえって良いと言えるだろう。人混みを避けろ、という意味ではこれ以上低リスクなものは無い。


レバーは、ここ数年食べた中で一番美味しかった。ハツは丁寧に掃除されて、見た目も美しかった。勧められた、薄皮もまだ柔らかいそら豆は、春の香り。標準よりも大ぶりの串に、最初の一連のオーダーで腹八分目。じゃあ、いつもの2軒目に行こうか、という流れになる。

久しぶりに良い店を見つけて、気分良く外に出る。また来週も、この辺りの小路に来ようか、そんな気分になった。

ラスベガスから、どこへも続かない道

Photo: “Last meal.”

Photo: “Last meal.” 2018. Las Vegas, U.S., Apple iPhone 6S.

“A desert road from Vegas to nowhere..”

ヘッドフォンの向こうでホリーコールが歌っている。飛行機はベガスの空港から動かない。

操縦室のドアが開きっぱなしで、パーサーとパイロットが何やら話し込んでいる。機体の調子が悪いのか、単に何かの順番待ちのような事なのか。なんのアナウンスも無く、小一時間地上から動かない。


調子が悪いなら、飛ばないで欲しい。そういうのを無理すると、やっぱりな感じで事故になるんだよ、とエンジニア的に思う。トラブりそうなものは、トラブるのだ。

陽炎に揺らぐ滑走路をひたすら眺める。こんな薄汚い機械の狭間で、一生を終えるのか、という気持ちがある。

Apple TV(初代)をApple TV 4Kに買い換える

諸般の事情でCSが見られなくなって、初代Apple TVのみで生活してみたら結構いける。何年前に買ったのか忘れてしまったが、初代Apple TVはけなげに故障も無く動いていて、置き換えるのは忍びないものがあったが、リモコン問題(後述)と、年月に伴う性能の進化も見てみたくてApple TV 4Kを新たに買った。


注文は素直にAppleのオンラインストアから。時間指定で翌々日に届く。ニセモノとか嫌なので、普通にオフィシャルサイトで買っていきたい気分がある。セットアップは箱から出して繋ぐだけ。Ethernetを繋いで、電源ケーブルを挿して、4Kは使わないので既存のHDMIケーブルで繋ぐだけで特に問題なし、完了。(テレビが4K / 8Kの人は互換性のあるHDMIケーブルが必要になるだろう)

電源投入、付属リモコンのペアリング、iPhoneのペアリングなどをして普通に使い始められる。画質、反応速度、全く問題無い。iPhoneユーザーでないと、アカウントの二段階認証などで不便が有るのかもしれない。しかし、この製品をAndroidオンリーのユーザーが買うことはまずあり得ないので、実害は無いだろう。


スペックで初代Apple TVと比較すると、これはまったくの別物に進化していて(iPhone X程度のCPU、同量の3GBメモリ)だいたいiPhoneなモノがテレビに繋がってると思って良い代物。プロセッサもメモリも、全てが余裕をもって動いていて、反応速度に不満が一切無い。画面遷移、スリープからの復帰、アプリ間の切り替え、とにかく速い。だいたいiPhoneなモノが繋がっていると言うことは、それ用のアプリが動いていて、動画配信はそのアプリによって行われる。つまり、配信事業者による独自機能が、アプリとして自由に実装できる事を意味している訳で、恐ろしく高機能化しているYouTubeアプリなどの動作も快適、ライブ放送のチャット表示もスムーズ。ChromecastやFire TVとは、スペックも値段も全然違うApple TV 4Kの余裕感と安定感は凄い。そして、やたらにでかい。


実は、買い換えを考えた最初の理由は、本体とは別の所に有った。初代Apple TVのリモコンが金属の削り出しで、それは格好が良いのだが、手元にiPhoneと一緒に置いて常用したら、いつかiPhone側に傷を付けるな、という懸念をもったのだ。4Kの新しいリモコンは面取りされていて、そのような心配は少ない。リモコン上部はキーからタッチバッドに変わった。そして、なにより音量ボタンが新たに付いた。これは地味に、というか革新的に便利だ。赤外線で動く初代のリモコンであれば、学習型のリモコンに統合が可能だったが、タッチバッドにSiriのマイクが付いて、Bluetoothで接続される4Kのリモコンでそれは無理。となると、テレビ側のコントロールは4Kのリモコンに寄せざるおえない。となると、実際に常用するテレビ側の機能は音量ボタンなわけで、実際にとても便利だ。

ただ、リモコンには不満点も有って、Siriボタンと、ホームボタンは使わないし押し間違えて邪魔なので、即刻廃止して欲しい。あと、タッチパッドはあまりにもセンシティブで、軽く触れただけで再生が止まるのが結構なストレス。感度は変えられるようにして欲しい。そして、ライトニングでの充電式なのは良いけれど、バッテリがへたったら、どうなるんだろうという漠然とした不安。


新しいApple TVを買ったというと、ティッカーは出せるのかとか、iPhoneの通知は出せるのかとか、そういう事を聞いてくる人が結構居るのだが、そういう事は今のところ出来ない(し、個人的にはそういう機能には全く興味が無い)単機能のSTBに2万円超を誰が出すのか?という疑問はあるものの、きちんとした体験でストリーミングコンテンツを見る、という所に完全にフォーカスされている良い製品だと思う。ハードウェアの内容を考えれば、値段も高くない。

コンテンツに関して言うと、だいたいのメジャーな配信サービスはカバーされていて不便は無い。ゲームアプリなんかもあるが、まず使わないのは予想通り。今、Apple TV 4Kを買うと、Apple TV+が1年間無料だが、別に見たいものはないし、使わないし、ホームスクリーンを占拠してなんか邪魔。その一方で、常々思っていた、この手のアプライアンスに設定されたスクリーンセーバーの、やがて見飽きるプリセット問題が解消されていて画期的。設定するとスクリーンセーバー画面が、毎週更新される(といいつつ、結構同じものを見る気がするけど)。しかも、超・ハイクオリティの動画(風景動画)なのだ。素材のバラエティ、クオリティが高く、これは凄く金がかかってるなぁという感じ。こういうのは、出来そうでなかなかできないし、ユーザー体験を凄く上げる。こういう事の大事さが分かってるのは、Appleだよなぁ、と久々に思った。