ぷりぷり

Photo: ぷりぷり 2004. Tokyo, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8

Photo: "ぷりぷり" 2004. Tokyo, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8

大人になったら食べられるようになると思っていたモノ。塩辛、コーヒー。

コーヒーは未だに好きじゃないが、塩辛は好きになった。


お土産のお裾分けでもらった、海老の塩辛。旨み成分のカタマリを食べているような、濃厚な味。ぼたんえびだと思うんだけど、塩味で引き締まって、ぷりぷりしてる。もらい物じゃなかったらお代わりしてるね。

故郷

Photo: 花火 2004. Kyusyu, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8

Photo: “花火” 2004. Kyusyu, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8

幼い頃に引っ越してばかりだった僕には、故郷と呼べるような場所はない。

その年の夏休み、遙か九州の田んぼの中の一軒家に集まったのは、僕の後輩とその幼なじみ達。一人九州に残って教師をやっている友達の家に、みんな 帰ってきた。彼らだけに分かる歴史を共有した、仲間達。彼らの思い出の土地と、懐かしい空気。僕はいろんないきがかりで、その中に混ぜてもらいながら、で も傍観者としてその景色を眺めている。

車のヘッドライトを照らしながら、ギターを鳴らして歌ったり、花火を打ち合ったり。そういうドラマみたいな、映画みたいな光景ってあるんだな。夜まで大騒ぎしても大丈夫、だって、隣の家は山の向こうだから。


自分に故郷があったら、僕はこうして帰ってくるのだろうか。あるいは、そもそも都会になんて行かないで、ずっとそこで過ごしたんだろうか。無数の可能性、でも、決して実現しない。「根無し草は強い」なんてよく言うけれど、それは間違っていると思う。強くあらねばならない、のであって、強いわけじゃな い。

ヘッドライトに照らされた顔を見て、故郷があるっていいなと思う。でも、僕の人生とは違うんだ、ということもよく分かる。寂しさとも、嫉妬とも違う、ちょっとした憧れぐらい。

縁台とかき氷(牛に引かれて善光寺参り)

Photo: 縁台とかき氷 2005. Nagano, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Planar T* 1.4/85(MM), Kodak EBX.

Photo: "縁台とかき氷" 2005. Nagano, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Planar T* 1.4/85(MM), Kodak EBX.

友人曰く、手塩にかけて育てた後輩が、会社を辞めることになったらしい。自分が付けているのと同じお守りを請われて、記念に買ってやると言う。それは、善光寺で売られている。

善光寺って、「牛に引かれて善光寺参り」の善光寺ですか?どこにあんの、それ。


東京から 200km ちょっと、善光寺は長野にある。後輩のためにわざわざ善光寺までお守りを買いに行く友人に、温泉がてらつきあうことにした。なんかよく分からないけど、牛とか居るかもしれないし、カメラも持って行く。

昨日まで降っていた雨は上がり、長野に着く頃には太陽が眩しく輝き始めた。肌がヒリつく乾いた空気と、強い太陽。人出は思ったよりも少なくて静か だ。境内の外れで、涼しげに翻る「氷」の文字が誘う。氷はカチッと硬く、それだけで仄かに甘い。水がいいんだろうね、と話をする。


いつか見た景色のような蓙引きの縁台と、かき氷。それを楽しめる自分が、少し嬉しく思える。

注:絶対メロン味を頼んでしまう。