食糧ビルの入り口は美しい。
アーチ型の梁が生み出す、柔らかい影と、歴史に裏打ちされた存在感。
この近代洋風建築は、もともと米穀の取引のために建てられた。1927年のことだ。高い天井、美しいアーチ、そして建物を特徴づける、広い中庭。かつては、この中庭に商品の米を並べて、取引をした。
このビルの三階に居を構えるオルタナティブ・スペース。「佐賀町エキジッビト・スペース」が、17年の歴史に幕を閉じようとしていた。20世紀があと 2日で終わろうとする 2000年12月30日、この場所は今日を限りに終幕を迎えようとしていた。
世紀の終わり、ふとしたきっかけで、その場所に行ってみたくなった。普通の生活。その中で 20世紀の最後は、なんの感慨も区切りもなく過ぎてしまいそうであり、それならばむしろ、なんの馴染みもないとはいえ、一つの「場」の終焉でも見に行った方がリアルなんじゃないか。
そんな気分だったのだ。
注:オルタナティブ・スペースって何?と言われるとちょっと分からないのだが、モダンアートとか展示しておくところで、かつ、美術館とかではない、ぐらいの意味だろうか。違ってたらゴメンなさい。