ロシア人はやっぱりボルシチを食べていた

"The typical Russian foods borscht, piroshiki, pickled herring and rye bread."

Photo: “The typical Russian foods borscht, piroshiki, pickled herring and rye bread.” 2017. Vladivostok, Russia, Fujifilm X-Pro2, Fujinon XF23mm F1.4 R, Velvia filter

ウラジオストク、最高気温31度。例年より10度高い。

ロシア人と言えばきっとボルシチを食べてウォッカを飲んでいるに違いないと思いつつも、まさか、こんなクソ暑い中でボルシチなんて食べてないよねと思ったが、食べていた。

彼らは高級レストランだろうが、街の食堂だろうが、外は30度の世界でボルシチを食べていた。ただし、ウォッカではなくてビールを飲んでいた。


軽く食事でもしようか、という感じでフラッと入ってきた感じのロシア人は、何の迷いも無くボルシチを頼んでいる。値段は250円から800円ぐらいで、場所によって幅は当然あるのだけれど、どこで食べても外さない感じがした。ロシアの味噌汁みたいなもんよ、と聞いたことが有るがその通りかもしれない。

ボルシチを頼むと、サワークリームと、パンと、そしてラード(!)が必ず付いてくる。値段によって、肉の多少は有る気がするが、まず間違いない味。ロシア人にとっての、ボルシチの生活へのしみこみ具合。そして鮨のガリのような風情で付いてくる薄切りのラード。そう聞くと、うわーと思うかもしれないが、少し焼き豚のような風味が付いていて美味しい。いまいちどう使うのか分からなかったので、相変わらず出来の良いパンに載せて食べていた。

これに合わせるのが、どうせ魚は酢漬け鰊しかないんだろうという偏見の元に頼んだ酢漬け鰊。これも、どこにでもメニューとして有るし、恐るべき安定感でうまい。これについては別に書きたいと思う。


それなりに冷房が効いた店(ぜんぜん効いてない店も有る。冷房が必要な日なんて、年のなかでは数えるぐらいなのだろうし、その致死性から考えたら、暖房に対する真剣さよりも、当然いい加減になるだろう)、で啜るロシアのスープは、やっぱり説得力の有る美味しさ。夏でこれなら、極寒の冬に食べたら、それは相当に沁みるものなんじゃないかな。

ウラジオストクの野良

"Black stray dog waits something at Vladivostok station"

Photo: “Black stray dog waits something at Vladivostok station” 2017. Vladivostok, Russia, Fujifilm X-Pro2, Fujinon XF23mmF1.4 R, ACROS+Ye filter

夕方、シベリア鉄道の出発時刻が近づいてくると、巨大な荷物を背負ったバックパッカー達が駅に集まってくる。
折りたたみのカヌーか何かか、とにかく大きな荷物を持っている人が多い。

そして、仕事を終えた人々がバスターミナルから家路につく。そんな混み合ったウラジオストクの駅で、初めて野良犬に出会った。目つきは至っておそロシアだが、吠えるでもなく、ゆっくりその辺りを歩き回っている。厳しい冬を乗り越えるだけあって、どこか精悍だ。


ウラジオストクの年間気温というのを調べてみると、冬はマイナス20度以下になる。そんな世界で、どうやって野良犬がやっていけるのだろうか?以前見たテレビでは、極寒の街で生活する野良猫は、冬場はその辺の家に好きに入っていって休んだり、餌を貰ったり、集合暖房の配管設備で暖を取ったりしていた。

きっとそんな工夫が、ここにもあるのだろう。


犬はひとしきり行き交う人を眺めているようだった。僕たちは、晩飯を狩りにその場を離れる。翌日の夕方、またバスターミナルで犬の姿を探したが、見つからなかった。

シベリア鉄道9400キロ

"Preaparing departure of Trans-Siberian Railway"

Photo: “Preaparing departure of Trans-Siberian Railway” 2017. Vladivostok, Russia, Fujifilm X-Pro2, Fujifilm M Mount Adaptor + Carl Zeiss Biogon T*2,8/28 ZM, ACROS+Ye filter


「シベリア鉄道9400キロ」という本を、僕は何度読み返したか分からない。その本は、恐らく僕が初めて読んだ紀行文であり、こうして自分が旅のことを書くきっかけになったのではないかと思う。というか、今、そう気がついた。


1982年の「ソ連邦」時代のシベリア鉄道の旅を描いたこの本、今は手元に無いが、酒が手に入らないやるせなさと、食堂車のメニューが軒並み「ニェット」であった事の印象ばかりがある。

そして、自分の目の前に(多分)シベリア鉄道である所の車両が停まっている。当時ウラジオストクは軍港都市として外国人の立入は許されて居らず、本にはもちろんウラジオストク駅の記述は無い。この駅はまさに、シベリア鉄道の終着駅であり、あるいは極東からモスクワに旅する人の出発点でもある。

列車の周りは、乗り降りする人も無く静かだ。地理的には極東アジアのこの一角から、遙かモスクワまでレールが続いている証が、この完璧なヨーロッパの風情をたたえた駅舎だろう。


10年前に書いたこの文章で言及しているシベリア鉄道のエピソードはまさしく、冒頭の本で得た知識。そして、そこに載せたフィルム写真を撮っている Zeiss のレンズを、今度はデジカメに載せ替えてロシアで撮っている。ちょっと目が覚めるぐらい、カチッとした絵になった。