春景

Photo: 春景1 2008. Tokyo, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 35-135mm/F3.3-4.5(MM), Kodak EBX

Photo: "春景1" 2008. Tokyo, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 35-135mm/F3.3-4.5(MM), Kodak EBX

早朝の堀端は、カメラを手にした人々でごった返していた。にもかかわらず、朝の冷たい空気と、ひときわ静かな桜の花のせいで、騒々しい気配は無かった。全てが、静かで澄み切っていた。


誰もが同じものを撮っている。誰もが美しい桜の姿を創造しようと、撮っている。奇妙な熱気の中で、人々はファインダーをのぞき込み、桜と自分だけの会話をしようとする。沢山の人が居るのに、誰もお互いを見ては居ない。ただ、桜に魅入られるようにシャッターを切っている。

僕も同じ事だ。浅ましいな、と少し思う。


結局、東京で桜が咲いて空が晴れたのは、この日のこの一時だけだった。上がってきたフィルムに写った桜の景色は、今までとは少し違っていて、それは、いつもとは違うレンズを使ったからというだけでは、無いように思えた。

伊豆半島

Photo: 突堤 2006. Izu, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 35-135mm/F3.3-4.5(MM), Kodak EBX

Photo: "突堤" 2006. Izu, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 35-135mm/F3.3-4.5(MM), Kodak EBX

伊豆半島、朝。

前の夜に酷く飲んで、それでもまずまずの時間に目を覚まして、浜に出た。今日は天気があまり良くなくて、少し寒いぐらいだ。海も荒れていて、ロマンチックもなにも、吹き飛びそうな風が時折吹く。


ここの突堤は、テトラポットで組まれている。テトラポットは見た目よりも危なくて、もし足を滑らせてはまったりすると大変なことになるらしい。カタ チが複雑なので、下手をすると上がれなくなってしまうのだ。だから、突堤マニアではあるが、テトラポットの上には立たないようにしている。安全第一なの だ。


もう、サーファー達が海に出ている。途中で、一緒に泊まりに来ているメンバーとすれ違う。

「おはよう」

朝一から完璧に OL ファッションを纏っている。流石だ。