マックを家でいただく

Photo: なんだこのビールは? 2008. Tokyo, Ricoh GR DIGITAL, GR LENS F2.4/28.

Photo: "なんだこのビールは?" 2008. Tokyo, Ricoh GR DIGITAL, GR LENS F2.4/28.

マックを家で食う、ということには色々なメリットがある。バイトのポテトの塩振りが甘くても、自分で好きに味付けできる。仏産の天然塩で塩味をつけるとか、有機なケチャップを付けるとか、全て自由。(ジャンク + 良い調味料はウマイ)

それにアルコールを出さないマックでは不可能なことだが、油まみれのあのメニューには断然ビールが合う。栄養バランス的には、まったく最低のビック (メガ)マック・ポテト・ビールという組み合わせも、持ち帰りならではの技。この組み合わせは、特に飲んだ後などに、衝動的に買ってしまう危険な組み合わ せ。


帰りがけ、夜中のマックに近寄ってみる。

カウンターの上にはダンボール入りのアイスクリームコーンが放置され、フライヤーの脇にはポテトがカゴに入れて積みっぱなしになっている。カウン ターのこちら側は、ギャル男を筆頭に、電話としての原形をとどめないデコ電をいじる女、やや酔ったリーマン(俺だ)等々、荒んだ客層。「北斗の拳」か。

家マックの誘惑はあるが、今日はやめておこう。何か危険な臭いがする。あの積みっぱなしポテトが出てきたらショックだし。

日向ぼっこカメ

Photo: 日向ぼっこカメ 2008. Tokyo, Ricoh GR DIGITAL, GR LENS F2.4/28.

Photo: "日向ぼっこカメ" 2008. Tokyo, Ricoh GR DIGITAL, GR LENS F2.4/28.

もしもし?
暑い、、

もしもし?
暑いぃ、、

大丈夫ですか?
暑い、ちゅーねん

日向ぼっこしてるんじゃないんですか?
向こうに、もう一匹おるだろ

あぁ、居ますね
後から来たくせに、ぐんぐんでかくなりやがってな

でかいですね
だいたい、あいつが暑苦しいんじゃ

ゼニガメは嫌いですか?
嫌いとかじゃなくてな、もうちょっとこう、慎みとかな

、、椰子の木が生えましたね
これか、たいして日陰にもならんけどな

日向ぼっこしてるんじゃないんですか?
カメと言えば甲羅干しって思ってるだろ

まぁ、、
そういうヤツとは余り話したくないな

、、、。
暑いな、、、。


は虫類はやはり暖かいのが好きなんだろうとは思う。夏場に来て、ヤツらはもりもり動いているからな。

生きていた子猫

Photo: 生きていた子猫 2008. Tokyo, Ricoh GR DIGITAL, GR LENS F2.4/28.

Photo: "生きていた子猫" 2008. Tokyo, Ricoh GR DIGITAL, GR LENS F2.4/28.

「あ、生きてたんだ」

暗闇から飛び出してきた、見覚えのある顔は、僕の前でほんの数秒立ち止まり、そうしてまた暗闇に消えていった。


僕がそいつを初めて見たのは、まだ暑い夏の盛りだった。僕がこの街にやって来て、間もない頃の事だ。雨が上がった昼過ぎ、買い物に出かけて、運河にかかる橋にさしかかった。

その時、夏の太陽が照りつけるアスファルトの上を、白昼堂々、僕の方に向かって径の真ん中をカサカサやってくる黒いアレ。沖縄あたりでは日中も径を 闊歩するらしい、あの昆虫が、温暖化した東京でも堂々と出現するのか。結構ビックリしているところに、その昆虫を元気よく追いかけてきたのが、その猫だっ た。

白地に、黒とグレーの模様の入った猫は、まだ子猫、と言っても良かった。その昆虫は獲物、あるいは遊び相手だったのかもしれない。昆虫は僕に向かっ てきたと言うよりも、子猫に追いかけられてきたのだった。あんなものを追いかけるのか!と固まっている僕を尻目に、子猫はトコトコ走り去っていった。

どうやらその子猫は、その橋のたもと辺りに住み着いたようで、それからも結構姿を見た。車の物陰から、何かを狙っていたり、木の陰をうろうろしたり。昼寝をしている所なんかは見たことが無くて、元気なヤツだと思っていた。


とびきり暑かった夏が過ぎ、風の吹く秋が来て、そうして冷たい冬が来た。その頃になると、あまりそいつの姿は見なくなった。

冬。冷たい雨が強く降るある夜、橋を通るとどこからとも無く、猫の鳴き声がした。苦しいような、寂しいような、そういう声だった。あいつかなと思って、少し周りを探してみたが、暗くてさっぱり分からない。そうするうちに、声は止んでしまった。

春が来て、運河にさくらの花びらが散るようになっても、あいつの姿は見えなかった。あいつは首輪なんてしてなかったし、誰かに餌を貰っているようで もなかった。野良猫の生存率というのは、決して高くは無い。飢えと病気、彼らの多くが、短命に終わると聞く。そういうことなのだろう、と思った。


そうしてまた夏が来て、ひょっこり僕の前に出てきたそいつ。

暫くぶりで僕をじっと見るそいつは、もう、子猫ではなかった。精悍な若い猫になっていた。僕の目をひとしきり覗いて、スイッと走っていってしまった。そうか、生きてたのか。それは、結構嬉しいことで、そいつは僕が新しい街で初めて見つけた知り合いでもあったのだ。

それ以来、そいつの姿を、またいつもの場所でよく見るようになった。僕のことを覚えているのかどうか、それはよく分からないけれど、直ぐに逃げることは無い。ちゃんと写真を撮らせてくれるほど、のんびりはしてないのだけれど、頑張って撮ってみた。まあ、写りは酷いもんだけど、生きてたんだからね。

それにしても、橋の近所であいつに似た子猫が何匹か、遊んでる。あれらは、あいつに関係有るのかな?