大手町のハンブルグステーキ

Photo: “Hamburg Steak.(Tsubame Kitchen)”

Photo: “Hamburg Steak.(Tsubame Kitchen)” 2019. Tokyo, Japan, Apple iPhone XS max.

大手町で仕事が終わった11:24。ランチに絶好のタイミング。どんな人気店でも入れる。

田舎侍には、大手町ランチの選択肢なんてとっさには浮かばない。そう言えば、つばめグリルで食べた、という話をたまに聞くが、行ったことがない。Oazoまで少し歩く。

つばめKITCHEN、なんか名前が違うけれど、だいたい同じようなものだろう。接客はとてもきちんとしていて、カウンターもあったけれど、うまくテーブルに案内してくれた。


初めて来たのだから、30年前からの看板メニューを選ぶのが良いのだろう。つばめ風ハンブルグステーキを頼むと、出てくるまで暫く時間がかかった。ランチ時の人気メニューでも、作り置きをしていないのだろう。

後で調べると、アルミフォイルで包まれたハンバーグの演出が目新しくて、当初は人気が出たと書いてあった。今となっては、フォイル包みは目新しくないが、この店がパイオニアなのだろう。包みを破ると、小さなシチュー肉も添えられていて、嬉しくなる。店内でひいた粗めの肉はうまいし、付け合わせの野菜も、皮付きのジャガイモも、丁寧に作られている。

飾りに付いている立派なクレソン。自分で料理をしない人は、クレソンを食べずに放っておく。僕にはできない。


右隣の二人組は、仕事の打ちあわせをしながらの食事。せっかくの料理を、もうちょっと楽しめば良いのに。左隣の老人は、僕より後に注文して、僕より早く食べ終わり、丁度の小銭をきっちり数えてから席を立った。永く、つばめグリルに来ているのだろうか。

大手町は支店だが、元は戦前から続く店だ。現代のランチ価格から言えば、少しだけ高いと思う。しかし外食が贅沢であった時代の、ちゃんとした材料を使う店だ。12時を過ぎて店が混んでも、丁寧な接客は変わらなかった。東京駅の目の前で、こういうものがこういう値段で食べられるのは嬉しい。浅草あたりの、意味不明な洋食を意味不明な値段で食わされる店よりずっと良い。気が利いている。

しみじみPrime Bone-In Rib Eyeを食べる、そして食べきれない

Photo: “Prime Bone-In Rib Eye.”

Photo: “Prime Bone-In Rib Eye.” 2019. San Jose, CA, US, Apple iPhone XS max.

店には少し早めに着いた。コンシェルジュのお勧めと、このあたりに詳しい営業のお勧めが一致したのがこの店で、週末とはいえ大層な繁盛ぶり。今回一緒に来ているお客さん達は、先にウェイティングバーで地ビールをやっていた。なにはともあれ、仕事はうまくいったのだから、この数日の難しい表情も無くなって、皆朗らかだ。判断力も言語力も使い果たしていて、席順もろくに決められずにもたもたして、合コン形式で混ぜる感じで行きましょうという方針で、なんとか席に皆を押し込む。全員オッサンだけど。


別に、料理に期待をしていたわけではない。もう、仕事は終わったので、何を食べたってたいていかまわない気分で、エレクトリックタワーというとんでもない名前の地ビールからスタートした。アルコール度数 7.1% IPA でアルコールの後味を感じる強さ。半ば強引に前菜の盛り合わせをお勧めされて、出てきたありがちなフライドカラマリに、一同驚く。これ、明らかにうまい。出張で行くようなアメリカのレストランて、油断していると直ぐに前菜に烏賊を揚げはじめるイメージなのだけれど、衣の薄付き具合といい、塩加減といい、火の通し方といい、明らかに一段うまい。これは期待できるんじゃないか、ってみんなが思った。


ゆっくり食べて、ゆっくり選んで、1時間以上過ぎたところで、骨付きのTボーンステーキ、Prime Bone-In Rib Eye が運ばれてきた。香り高く、塩味は濃い。アメリカのステーキレストランの印象というのは、肝心の味付けはお客に任せるという、それって料理という意味ではどうなの?と思ってしまう印象なのだが、この店はステーキもきっちり味を決めて出してきた。ジャリッとした炭化さえ感じる直火で仕上げた外側、しっかり脂のとけたミディアムレアの内側。肉を食べる文化は、やはり恐れずに火を通す、その思い切り。これは美味しいですねぇ、と話しは弾む。

けれど、やっぱり食べきるのは難しかった。頼むのは、半分の量で良かったかな。

ジャッキーステーキハウスのタコスがやたら安い

Photo: “TENDER LOIN STEAK SIZE L x3.”

Photo: “TENDER LOIN STEAK SIZE L x3.” 2019. Okinawa, Japan, Apple iPhone XS max.

その日のジャッキーは、青信号だった。

入り口には、Aサインと混み具合を示す信号機がある。ジャッキーステーキハウスは予約を受けない。信号機の青、は直ぐに入れることを示している。

相変わらずやけに明るい照明、背の高いシートに囲まれたダイナー然とした店内。テキパキした店員に、いささかプレッシャーを受けながらオーダーする。テンダーロインステーキ、なんかLもMもSもたいして値段変わらないから、Lだよね。

「テンダーロインステーキ」
「3つで」
「レアで」
「ミディアムレア」
「レア」

で、なんで人数分頼んでるんだ。ステーキを1つとって、つまみにするんじゃなかったのか。

ステーキ以外のものを頼んでいると、地元っぽい、というアドバイスに従って、タコスも頼む。タコスは5つ入って650円ととても安い、アメリカより安いかもしれない。


相変わらずの粉っぽい微妙なスープを啜りながら店内を伺っていると、観光シーズンを外しているせいか、地元っぽい人が多い。そして、あんまりステーキとか食べてない。冷静にメニューを見ると、ハンバーガーステーキは900円だし、スキヤキは750円だ。地場のファミレス、と考えると割にリーズナブルなのかもしれない。

ステーキ登場。以前来たときに、ブルーで頼んでいるテーブルがあって、頼んだ本人がドン引きしていた。だって、ほぼ「炙り」みたいな肉なのだ。元々、この店の焼き加減は、あまり火が入らない印象だったので、僕は「ミディアムレア「にしたのだが、それでも相当にレアな食べもの。しかし、同行者達が頼んだ「レア」はまた世界が違うらしい。一切れもらうと、なんというか、魚みたいな感じ。いや、美味しいとは思うけれど、それが肉か?っていうと違う気がする。


連れて行った若手の最近の悩みは「太れない」事。その悩みに対応すべく、ここまで栄養価に富んだメニューを選んできた。しかし、ここに来て流石にステーキ+ご飯+タコスに容量の限界を感じているようだ。自分の割り当てのタコスを前に、「限界っす」。

僕はライスではなく、パンに逃げていたし、まだ腹の余裕はあったから彼のタコスをフォローすることは不可能では無かった。しかし、シメのステーキを希望したのは、若手自身ではある。さて、もう一人の友人の判定はいかなるものだろう。普段は物事に対して、実に寛容な人ではあるが、

「ダメ、食え」

そこはえらい厳しいんだな。