デジカメの写真をフォーマットしてしまったら

酔っているときに、デジカメの設定画面を開くというのは、愚かなことである。フォーマットしますか?はい。その瞬間に、酔いは完全に覚める。

そういうときに限って、PCに同期したのは随分前のことだったりする。この一ヶ月何を撮ったんだっけ?


さて、デジカメのカードを間違ってフォーマットしてしまったときは、カードのライトプロテクトをONにして(書き込み禁止にして)、新たに写真は絶対に撮らないで家まで持って帰る。写真を撮ってしまうと、前のデータが上書きされてしまう。その日は作業はあきらめてぐっすり寝る(大事)。

翌朝落ち着いた気分になったら、PCに直接メディアを接続する。(デジカメ経由でストレージクラスとして認識させても良いが、トラブル防止のため単純な接続の方が良いだろう)普通はSDカードか、CFカードを使っていると思うので、当該のメディアをPCのスロットか、PCに繋がったカードリーダに入れる。この際、ライトプロテクトがかかっているかどうかチェックしよう。ライトプロテクトされていれば、復旧操作でミスをしても、データをこれ以上壊さないで済む。


次に、フォーマットしてしまったデータをサルベージする。一般的に、デジカメのフォーマット操作というのは、ファイルの管理データからファイルエントリだけを削除しているので(Windows のクイックフォーマットに相当)、写真データ自体は残っている。復旧ソフトはその失われたエントリ情報を類推し、ファイルを取り戻す。

有料の復旧サービスも色々あるが(人が困ったことには、金は払われるので、それなりの値段をとるサービスもあるようだ)、実は無償のソフトウェアを使っても、巧く取り戻すことができる。メディアの物理破損でなければ、無償のソフトウェアでも十分にトライ可能だ。

僕が「やってしまった」時に、幾つか試してみた中では、Pandora Recovery というソフトが最も優秀だった。このソフトは唯一、全てのファイルを救出することが出来、ファイルの破損も無かった。無償にもかかわらず、ちゃんと復旧してくれるのは偉い。Pandora Recovery にたどり着くまで、幾つかのソフトでは復旧に失敗したので、やはり復旧方法次第で成功率は変わってくるようだ。ソフトウェアによっては、ファイルを全く見つけられなかったり、ファイルの終端部分を間違えてしまい、JPEGファイルとしては壊れた状態でしか復旧できないものもあった。

Pandora Recovery の使い方は難しくない。 Pandora Recovery をインストール後起動し、フォーマットしてしまったカードを選択すると、消されてしまったファイルの一覧を見ることができる。復旧したいファイルを選んで(基本、全部選ぶ形になると思う)、PC側のハードディスクに復旧(コピー)すればOKだ。


フォーマットされた時点で、ファイル名などの一部の情報は失われてしまっているが、デジカメに限って言えば、それはあまり問題ではないだろう。このソフトのお陰で一ヶ月分の記録を取り戻すことができて、僕はとてもホッとした。くれぐれも、間違ってフォーマットしたときは、写真を撮らないで持ち帰ること、それが大事だ。

なお、英語のサイトからソフトを落とすのが怖い人は、窓の杜の Pandra Recovery の紹介から落としても良いだろう(同じ事だが)

僕の場合は、RICHO GR DIGITAL III でフォーマットしてしまったSDカードと、Pandora Recovery の組み合わせで全てのデータを復旧できた。デジカメによって、フォーマットや書きこみの実装が微妙に違ったりする可能性もあるので(FAT32はFAT32だろうが)、一概に Pandora Recovery が最も有効とは言えないが、他のソフトではファイル長を正しく推定できないなどの問題があった。

それから、この手のソフトで、例えば自分の使っているPCのファイルをおもしろ半分に復旧したりするのはやめた方がいい。ディスクの管理情報を操作するので、ミスをするとかえってデータを失う危険がある。

CONTAX TVS DIGITAL, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105

Photo: Contax TVS Digital

Photo: Contax TVS Digital

発売後まもなく衝動買いした CONTAX TVS DIGITAL。

一般的なデジカメの評価としては、きっと「ダメ」なんだと思う。プロユースを考えるなら、もっと当たり障りのない、着実に結果を出せる多機 能&高性能のものを撰んだ方が良い。かといって、通常のアマチュアユースを考えると、遅すぎるレリーズラグが致命的だし、撮れる絵のくせも強すぎ る。価格的にも、マスプロダクションな ASIC を使った他社のデジカメに比べてしまうと、このカメラの電子的な部分でのコストパフォーマンスは低い。(でも、最近では 40,000円とかにまで値崩れしているようで、それなら全くお買い得だと思う)

よって、一般的な価値観でデジカメを買おうという方は、これ以上レビューを読む必要はないし、他のデジカメについて調べた方が時間の節約になるだろ う。

そこまで書かれてもなお、CONTAX T の名前をつけられたコンパクトデジカメというのはなんなのか、買ってみる価値があるものなのか知りたいという人は、これ以降を読んで欲しい。言っておく が、僕はこのカメラを「とても気に入って」いるのであって、論調は辛いかもしれないが、決してけなしているわけではない。こんなに「愛をもって」使えるデジカメもそうは無い。


ごく簡単にこのカメラ CONTAX TVS DIGITAL を紹介すると、CONTAX の名前が付いた初めての(そして、もしかして最後の)、コンパクト・デジタルカメラで、500万画素 CCD を搭載した、ハイエンドモデル。レンズは当然、Carl Zeiss を搭載する。レンズが Zeiss、それだけで、即買ってしまう人は買ってしまうのかもしれない。ただし、その他の中身は京セラ(現在、CONTAX ブランドのカメラは京セラが生産している)のファインカムとどう違うんだ、という声も有る。価格の高さもあって、使っている人をほとんど見ない、もはや都 市伝説なデジカメ。

さて、TVS の最大の特徴は、撮った絵の当たり外れの激しさ。安定&安心して撮れ「ない」かわりに、多分この機械でしか撮れない絵が、間違いなく撮れる、あるいは撮れ てしまう。これって、キライな人もいっぱいいるんだろうと思う。なんというか、この機械の妙な挙動を笑って許せる人が買った方がいい。あるいは、単なる高 性能なデジカメに飽きた人なんかにもいいだろう。もちろん、CONTAX と聞いたら、試さずにはおれない、という人の期待にもある意味答えるはずだ。逆に、これをデジカメ最初の一台にするのは、まったくお勧めできない。個人的 には、このカメラの癖が分かって来るにつれて、どんどん気に入ってきている。個性的で、使いにくくて、コレでしか撮れないものが撮れるからだ。以下、思い ついた点を、いろいろ書いてみる。


デザイン的に言うと、多くのデジカメのデザインは安普請家電の典型とも言える最悪のものばかりなので、それを考えるとかなりまともで気に入ってい る。少なくとも、何かの気品は感じるし、フィルムカメラに近い保守的なデザインなので、他の CONTAX のカメラと並べても違和感は少ない。実際、ほとんどの人が背面を見るまでは、銀塩カメラだと思うようだ。無駄にでかいと言われるが、実は大きさ自体は、 T3 よりちょっと大きいぐらい。重量は一般的なデジカメより重いが、軽いカメラなんて信用したくないので、これはこれで良い。背面がプラスチックで安っぽいと いう意見もあるが、僕は別に問題ないと思う。所詮、デジタル機器なんだし。ボタンの押し心地も悪くはない。ただし、モード切替ダイアルが、かなり緩いの で、ポケットやケースに入れた時に知らぬ間にずれてしまっていることが多い。これは要注意。

操作系については、「こうやったら、こうなるはず」というオペレーションができる秀逸なもの。動作も速く、これについては高く評価できる。マニュア ル無しでも操作は可能だ。ただ、使っていて Mac ぽいなーと思うロジックが多々あって、コンピュータユーザではなくて、純粋なカメラ使いにとって使いやすいかは、謎だ。

その他のギミックとして評価できるのは、Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105 を搭載しながら、フラットなレンズ沈胴式を採用した点。Canon G1で、沈胴式ではないコンパクトデジカメが、いかにコンパクトではないかを思い知った身としては、このクラスでこのギミックを採用しているのはとてもポイントが高い。


Photo: ソーセージのペペロンチーノ 2003. Tokyo, Japan, Contax Tvs Digital, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105.

Photo: "ソーセージのペペロンチーノ" 2003. Tokyo, Japan, Contax Tvs Digital, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105.

起動時間はあまり速くない。というか遅い。とっさのシャッターチャンスには、強くないと考えた方がよい。また、レリーズラグは相当あるので、それだ けで、いらいらいする人もいると思う。書きこみも速くないので、連写とかスポーツ撮影とかは考えるべきではない。ただ、プレイバックの処理が恐ろしく高速 で、ズームや表示位置の移動などの追従も同じカメラとは思えないほど速い。これは快適だ。

画質についてだが、ノイズや偽色は多く、デジタル処理部分での性能が高いとは思えない。ただ、コントラストの高さ、フィルムカメラに近いトーンカー ブ、なんだかよく分からないがやたらに派手な色乗り、などなど、面白い点が多々ある。Carl Zeiss + Digital ならではの味なのか、何なのかは分からないが、とにかく従来のデジカメでもなければフィルムカメラでもない、独特なものが撮れる。この明確なキャラクター を好むか、嫌うかは、完全に使い手の好みだろう。僕はこのカメラは好きだ、そういうカメラだ。

充電については、悪夢のように遅い。ただ、予備のバッテリや急速充電器については、買っていない。バッテリ自体の持ちは良く、毎日何十枚も撮るので ない限り、思い出したタイミングで充電すれば、十分といった感じだ。


最後に、暗い環境でのスローシャッターでの写りがかなりいい。バーでいろいろいじって遊んでいると、見たこともない絵が撮れたりして面白い。夜型の 都市放浪人間には、まったくもって面白いカメラだ。

追加情報:京セラからファームウェアのアップデートが出ている。ファームが、ver. 1.05 未満の場合は、書きこみ速度がだいぶ速くなるので、必ず適用して使用したい。このカメラの挙動に慣れた身だと、正直「すげー早い!!」と思った。(実際に は、やや普通、ぐらいになるだけなんだが)詳細は、京セラのページからどうぞ。