シウマイ弁当

もう一度、シウマイ弁当について書いておきたいと思う。シウマイ弁当とは崎陽軒を代表する駅弁である。なお、崎陽軒はシウマイ弁当しか作っていない と思っている方も居るようだが、実に色々な種類の弁当を発売している。また、崎陽軒は弁当屋だと思っている人も居るようだが、創業当時は売店のような店か ら始まり弁当は作っていなかった、現在はレストランなどもやっている。

シウマイ弁当(740円 – 2007年 5月現在)は、そのあっさりした見た目を考えるとなんだか割高に感じてしまうかもしれない。驚くようなおかずは入っていないし、パッケージも地味な感じ だ。しかし、実際に箸をつけてみれば、納得の工夫が凝らされた、クオリティーの高い弁当であることを納得いただけるのではないかと思う。また、1954年 発売の長い歴史を持つ弁当にもかかわらず、現在に至るまで細かなマイナーチェンジと改良が繰り返されている、進化する弁当でもある。


今回はエッセイではない。純粋に、シウマイ弁当について詳細に知りたいと思っている方のために書いている。ここに書いてある内容は、たまたま TVK か何かで目にしたシウマイ弁当の工場見学番組を見ながらとったメモと、公式 web サイトの情報、並びに私が今まで食べ続けてきた経験をもとにしている。なお、某掲示板にもスレッドが存在しているので、活発に議論したい方は、そちらを参 照するのも良いだろう。

それでは、シウマイ弁当の中身を順に見ていく事にしたい。


シウマイ

まず、シウマイ弁当の中核を成すシウマイである。崎陽軒のシウマイはその公式 web サイトにあるように、冷めても美味しいということを至上命題として開発されている。(実は、翌日フライパンに薄く油を引いて、焼くとこれまた美味しいとい うことは是非知っておくべきだろう)

その伝統のレシピは秘伝かとおもいきや、実は普通に web に公開されている。調味料としては塩、胡椒、砂糖のみを使用。北海道産のホタテ貝柱と、国産の豚肉が具の中核を成す。苦手でなければ、きちんと芥子を付けていただきたい。

なお、しつこいようだが、「シューマイ」ではない。「シウマイ」である。

ご飯

シウマイ弁当のもう一つの特徴は、おこわのような独特の食感のご飯だ。実はこのご飯は普通に炊くのではなくて、蒸気で蒸し炊きするという方法をとっ ている。そう言われれば、タイ料理などで食べる蒸しご飯に似た味がする。しかも、このご飯はなんと熱々のまま、弁当箱に詰められる。このような作り方は、 普通の弁当では絶対にできない。これは、シウマイ弁当の弁当箱として採用されている、エゾマツの経木の折がご飯の湯気を適度に吸い取るために可能となって いる。

お弁当の定番、俵型ご飯は車中でも取りやすく、中央には小梅が乗っている。今の電車はさほど揺れないし、冷蔵技術が発達して梅の防腐効果を期待するまでも無い時代だが、こうした部分にも手抜かりが無いことに清々しさを覚える。

あんず

シウマイ弁当の初心者が引き起こす悲劇が、このあんずをおかずとして誤って食べてしまうということだ。これはある種の通過儀礼と言っても良いだろう。確かに、何かの煮物に見えなくはない。しかし、これは最後の一箸に、デザートとして食すべきものである。

シウマイ弁当のかなりの面積を占めている筍。ちょっとビックリするぐらい沢山入っている。三温糖と醤油だけで 45分かけて煮られている。これはおかずなのか?という疑問を持つ向きもあるが、つまみとして考えるとなかなか優れていると言える。ビールと共に食べてい る時などは、余計に嬉しくなると言えよう。

鮪の照り焼き

二種類の生醤油で焼かれた照り焼き。当然冷めた状態だが、パサパサすることもなく美味しく食べられる。だいたい弁当の焼魚って美味しくないのだが、崎陽軒はこういう部分がちゃんとしている。味が濃すぎないのもたいしたものだ。

玉子焼き&鶏唐揚げ&かまぼこ

この 3つは、さくっと食べてしまうおかずトリオ。シウマイ弁当の緩い部分、とでも言えば良いだろうか。小さいながらも卵焼きは相当ちゃんとつくってある。崎陽 軒の他のタイプの弁当では、より大きく切られたバージョンの卵焼きが入っていることがあり、味わいをより容易に確認することができるだろう。唐揚げはあま り大きくないので、味はよく分からない感じでどんどん食べてしまうのだが、唐揚げ弁当並みに沢山あってもうまいのかもしれない。かまぼこは、かまぼこだ が、、何か工夫があるのだろうか。これは正直よく分からない。ラーメンに於けるナルトのような立場だろうか。

切り昆布&千切り生姜

漬け物の類は好きなのだが、何故かいつも最後にあまってしまう謎の漬け物コンビ。漬け物マニアとしては、シウマイ弁当で唯一、よく理解できないのが この漬け物セクションかもしれない。しかし、ほぼ食べ終わって名残惜しい感じが漂うなかで、ちまちまと昆布をつまむのもまた、シウマイ弁当の豊かな味わい と言えるかもしれない。


さて、シウマイ弁当について改めてふり返ってみると、全てにおいて「冷めてから美味しく食べられる」という大原則が貫かれていることが分かる。これ はお弁当の基本ではあるが、ここまで徹底的に考えられている弁当は、コンビニでの弁当のレンジアップが一般的になった現在では、少ないように思う。

崎陽軒は現在、期間限定のものも含めて、かなりの種類の弁当を提供しているが、やはり定番のシウマイ弁当には揺るぎない安定感がある。たまには趣を 変えようと、崎陽軒の他の弁当を食べてみたりして、それはそれでやはり美味しいのではあるが、一方でシウマイ弁当の完成度の高さには驚かされる。定番に甘 えない、おかずと、ご飯に対する工夫と確実な仕事が、シウマイ弁当を日本で最も売れている駅弁にしている理由であろう。そして、なによりもいつも同じ味わ い。これが一番大切なことだ。

きのこシウマイ by崎陽軒

Photo: きのこシウマイ 崎陽軒作 2003. on the table, Japan, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8, JPEG.

Photo: "きのこシウマイ 崎陽軒作" 2003. on the table, Japan, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8, JPEG.

選挙も行ったし、秋冬のスーツも買ったし、何かコジャレおかずでも買おうかとデパ地下へ。ワインセラーのコーナーから、高っかそーなワインを手にして、ロマンスグレーなご婦人が出てくる。ハモンセラーノを量り売りで買いそうな感じ。デフレだ、デパ地下戦争とか言っているけど、美味しくて高いものを、きちんと高く売っているゾーンというのも確かにあるわけで。

瓶詰めのロブスターのビスクスープみたいなやつ、美味そうだけど多分飯に合わない、つーか高い。漬け物マニアとしては、心が動く京都の漬け物ゾーンをスルーして、和食の総菜屋の西京焼きにちょっと心が動く。揚げ物系はちょっといただけないし、予約の取れないレストランのポテトサラダ?ポテトサラダと飯はうまいけどなぁ。

その時、目に入ったのはいつもの崎陽軒。なんでこんなところに崎陽軒が。なんでまたシウマイ買わないといけないんだ。しかし、体が勝手に、、特選シウマイあります?何?あいにく売り切れ?
「きのこシウマイならございますが」

なんだそれ。「いか」の次は「きのこ」か。


ひとまず、買ってみました。シウマイというのは、全然コジャレおかずじゃないが。

早速食べてみましょう。今回も独特なテイストのパッケージを開けると、大ぶりのシウマイが6粒。普通のシウマイと同じように、芥子醤油でいただきます。冷たいままなのに、ちゃんと柔らかい食感は、さすが崎陽軒。かのいかシウマイ程のインパクトはなくて、なんとなくしみじみした味。秋だなぁと。肉々感も控えめで、後味は「きのこ」の優しい香りが立つ。いかシウマイと同じで、おかずというより、前菜・点心という感じ。ほんのり椎茸が入っているので、椎茸が敵の人はやめた方がいい。

あと、一人で一箱食べると、飽きると思いますね。(シウマイマニアとはいえ)俺はちょっと飽きた。


注:11月 30日までの限定販売です。

崎陽軒のいかシウマイ

Photo: いかシウマイ 2003. Tokyo, Japan, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8, JPEG.

Photo: "いかシウマイ" 2003. Tokyo, Japan, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8, JPEG.

何度も書いているが、僕は崎陽軒シウマイを愛している。

家に買って帰って晩飯のおかずにしてもいいし、駅弁(シウマイ弁当!)を新幹線で食べるのも良い。また、一日たったのを焼いてもいい。崎陽軒のシウマイは、昔からおんなじ味だ。


いつものように、駅の崎陽軒で弁当を買おうとすると、、。
「いかシウマイ」

そのフォント、緑っぽいイカ三杯の絵、これは何かの「ネタ」ですか。しかも、なんか凄く高い(6個で550円。普通のシウマイは、15個で510円だ)率直に言って、「崎陽軒がつくるとは思えない」感じの商品だ。
で、あれば、買わねばなるまい。
「すいません、いかシウマイください」

いかシウマイは、ホシザキの業務用冷蔵庫に大切に保管されている。そして、銀色の保冷バッグに保冷剤付で渡される。なんとなく、宇宙から来た物体X みたいな、(ちょっと恥ずかしい)サイバーなビジュアルで手渡される。いかシウマイは温度が大事、冷えたところを、山葵醤油でいただくという趣向なのだ。 だから、保冷庫のある店舗でしか買えないし、通販も出来ない。まさに限定の味だ。


さて、新幹線に乗ったところで食べてみましょう。さっき「高い」と書いてしまったが、包装の手間や、1つ1つがでかいこと、また、明らかに手作りしてそうな手間のかかった感じを見るに、意外と割安かも、と思う。

食感は、実に滑らかで、(想像しにくいかもしれないが)烏賊の喉越しと風味が涼やかだ。はっきり言って、凄くちゃんとつくってある。いくらでも安易 につくれてしまいそうなものを(切った烏賊を適当に丸めて、蒸せば、なんとなく烏賊のシウマイみたいなものはできるわけで)、ここまで完成度高くつくると は、さすが崎陽軒。

矢のようにすぎていく小田原あたりの景色を眺めながら、「恐るべし、崎陽軒、、」と感心することしきり。


注1:いかシウマイは、夏季限定商品。今年の販売は、9月30日まで、ショップに急げ!
注2:残念ながら、あまり馬鹿売れしているようには見えなかった。でも、これは美味しいと思うのだが。