それは、祈っているのか、あるいは午後の眠りなのか。あまりにも静かな空気。
イスラム寺院の気配は、仏教寺院にも、キリスト教会にも似ていない。ただ、風が、よく吹き抜ける場所だな、と思う。
今回の旅で、僕は自分がイスラムの事を何も知らないのだと言うことを知った。これだけ知らないものに、おいそれと意見を言えたものでは無いな、とも思った。
モスクの中から、僕たち観光客を眺める、髭の男達が僕には正直少し怖かった。しかし、彼らは至って静かに、吹き抜ける風に身を任せていた。そんな場所を、僕は見たことがなかった。
体を清めるための泉に、水がたたえられている。大理石の泉に、安っぽくてカラフルなプラスティックの柄杓が浮いていた。モスクは、水と風の場所だった。