マレーシアへは仕事で行った関係で、沢山の種類の訛りのアジア英語と接することになった。アジアパシフィックの様々な国から人が来ていて、英語というのはこんなに幅があるのか、ということに驚いたし、僕からしたら「めちゃくちゃだな」と思うような壮絶な訛りの英語が、ちゃんと(かは分からないが)通じたりしているのを見るのも驚きだった。
一人のエンジニアと仲良くなった。彼は沢山プレゼンテーションしていて、彼の英語を延べで12時間ぐらいは聞いたと思う。彼はベトナム人か、インドネシア人に見えた。でも英語の訛りはアジア圏ではなくて、訊いてみるとフランスからアメリカに移住したのだと言う。だから、ベトナム系フランス人で今はアメリカ人(二重国籍)だと思う。
ワインが好きで、女の子の機嫌に敏感で、この人の文化はフランスの男なんだなと感心した。ビールを飲みながら(イスラム圏ではビールかワインより強い酒にはあまりお目にかからなかった)世界中を旅している彼に、日本人の英語はどうなのか?と訊いてみた。
曰く。日本人の英語には特有のアクセントがある。でも、日本人は自分が言ったことが通じなかったら、言い換えて、通じさせようと努力する。だから、君たちの英語は OK だ。君たちにとって英語は母語じゃない、だから上手くないのは当然で、それは問題じゃない。大事なのは、伝えようとすること、コミュニケーションをとろうとすることだ。
例えば、インド人の英語は聞き取りにくい。口の中だけで発音するからなおさらだ。それ以上に問題なのは、こちらが聞き取れなかった時に、全く同じフレーズを繰り返して、言い換えようとしない事にある。コミュニケーションしようとする意志を放棄しているんだ。
ホントにインド人が言い直しをしないか、翌日僕はインド人の英語を注意して聞いていた。が、実際には割と言い直しはしていた。まあ、それでも十分聞き取りにくく、中国系の同じく聞き取りにくい英語を米語のネイティブは一発で聞き取るのに対して、インド人の英語は聞き返しが入っていたのは印象的だった。
更に印象的だったのは、インド人と一緒に昼メシを食べているとインド人同士が英語でしゃべっている。君らなんでインド人同士で英語でしゃべるの?と訊いたら片方の人はヒンズー語がしゃべれないから、次に来る共通語が英語なのだそうだ。これがデフォルト多言語の国の姿か、と思う。
アジア、とは言ってもビジネスは全部英語だった。英語はやはり、ビジネスの世界の共通プロトコルであって、しかもかなりパケットがめちゃくちゃでもデータ交換出来てしまうものなんだな。そんな印象。