世界の中心で愛を叫ぶ

Photo: 世界の中心で、愛を叫ぶ突堤 2006. Kagawa, Japan, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX

Photo: “世界の中心で、愛を叫ぶ突堤” 2006. Kagawa, Japan, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX

「世界の中心で、愛を叫ぶ」をもちろん僕は見ていない。しかし、そのロケ地に来てしまった。(そんなのばっかり)

地元では、当初撮影が終わると、セットも何もさっさと壊してしまったそうだが、暫くして観光客が引きも切らずに訪れるようになると、遅まきながら「なにやら観光資源になるらしい」と気がついたという。


今では、一部のロケセットは再建され、ロケ地の名所には案内板が付けられ、市役所の入り口にはロケ地マップが置かれている。とは言っても、ここは至って普通の地方の漁村。ぐるぐる迷いながら、なんとかロケ地の「突堤」にたどり着いた。突堤マニアとしては、ここは外せない。

さて、この突堤はかなり良い、相当良い。長くて、真っ直ぐで、シンプルだ。文句のない、突堤だ。


狭い幅の割に、長く突き出た突堤を、どんどん歩く。気の抜けたような、瀬戸の内海が、ただ広がって、波はろくに打ち寄せもしない。自主制作の映画のロケハンだろうか、大学生風の二人組が、デジカメを手にしながらフレーミングをあれこれ試している。

ジリジリと暑い。僕はいつもやるように、突堤に腰をおろしたりはせず、そのまま元来た道を戻った。

地獄の黙示録 特別完全版

地獄の黙示録 特別完全版原題は、Apocalypse Now Redux.
「帰ってきた黙示録」とかそんなぐらいか。特別完全版とかいう変な邦題を付けた人のセンスというか、映画に対する愛情を疑いたくなる。「地獄の」って何だ。
何か凄い字幕だなぁ、と思ってみたら、戸田奈津子字幕。調べてみると、もともとの「地獄の黙示録」の翻訳が彼女が字幕翻訳家として名を成すきっかけになった作品だったらしい。
いきなりひっかかったのは、有名な襲撃シーンの1カットでヒューイにフレアが飛び込むところ。”Flare! Flare!”を「信号弾だ!信号弾だ!」って、なんだそれ。チャフとかフレアって専門用語なのかもしれないけど、作品の性格から考えたらあくまで正確に訳して欲しい。(そういうのが分からない人が、わざわざこの「帰ってきた」を見るとは思えないし、今の時期にこの作品のDVDを買う人って、分からなかったら調べるタイプだろ)シーン自体が、信号弾を使うような状況じゃないし。
その他、至る所でなっち訳が爆発している。英語はあんまり得意じゃない僕が見ても、おかしいと思うところが結構ある。
作品自体はオリジナルのわけのわからない強引さは薄れたけど、より入りやすくなってるし、マスタリングもとても良い。テストでたまたまカメラを回していたナパーム着弾のシーンを、そのまま使ったというオープニングは、本当に凄い。これCGじゃ、ないんだよな。

釜玉うどん

Photo: 三太郎 2006. Kagawa, Japan, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX

Photo: "三太郎" 2006. Kagawa, Japan, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX

腹が減っていた。

朝から何も食べていなかった、いや、正確に言えば、買い置きのオレンジジュースを飲んだきりだ。

朝起きてカーテンを開けると天気が良かったので、ホテルの部屋から見える港に行って、船に乗ってみた。あずきじま、と昨日まで読んでいた小豆島へ。港で、何か食べればいい、とその時は思っていた。


フェリーに乗ると、直ぐにデッキに上がって、遠ざかる高松を見送った。もうすぐ秋の気候だというのに、太陽が暑い。

小豆島に港は幾つもあるが、結構小さい部類の港に着いてしまった。農協の直売所と、土産物屋、フェリーの切符売り場、駐車場、ガソリンスタンド。そ れで全部。唯一あった怪しげな定食屋は「本日休業」の札が下がっていた。腹が減った。どこか街まで行けば、なにか食べるモノがあるだろうか。スタンドで、 アクエリアスのペットボトルを買った。水分だけは無いとまずい。しかし、まさかそれから数時間、本当になにも食べられないとは思わなかった。


島を歩き回って、結局午後 4時になってしまった。何か食べたい。何か、とはいっても、結局、うどんなのだ。香川にはうどん屋しかない、とは言わないけれど、それはそれで間違いが少 ないのだ。一時間に 2本のバスに乗って、なんとか少し大きな港にたどり着くと、ついに一軒の飲食店を発見した。うどん屋だ。もう、このさい、うどん屋で良い。

入り口の脇に自販機が置かれた、店の見た目はいけてない。ぜんぜんいけてない。中に入っても、全然いけてない。だぼシャツのオヤジが 1人と、オバチャンが 2人。オバチャンは、なにやら天ぷらを揚げている。


丁度、障子の張り替えをする業者が入っていて、店の中はバタバタしている。嫌な予感がする、うまいわけがない。先客は一人。数時間前にバスの運転手 に行き先を聞いていた、多分北欧系のガイジン女性。所在なげに、注文が出来上がるのを待っている。多分、天ぷらうどんを頼んだのは彼女だろう。

天ぷらうどんは、えらい高いので(なんとなく香川のうどん価格に慣れていたので、500円オーバーは高く感じるのだ)、安い釜玉にする。それでも香 川で見た中では、結構高めの値付けで嫌な予感がする。観光地にありがちな、トラップだろうか。出来上がるのを待っていると、白いゴム長を履いた、スーパー の精肉部の従業員といった風情のおっさんがやってきて、大きなビニール袋一杯のウドンを仕入れていった。なるほど、自家製麺を、どこかに売っているのだ。 少しは、期待が持てるか。


釜玉うどんは、先客であるスウェーデンの(憶測)彼女よりも早く出てきた。うどん醤油も一緒に出てきた。なるほど、うどん専用の醤油があるのか。天かすもツボに入って付いてきた。ショウガと葱も付いてきた。結構、ちゃんとしてる。

そして、出てきた釜玉は相当うまかった。うどんの評価方法について、僕は詳しくはないが、うどんのエッジがえらく立っているし、色もやけに良い。小 麦の香りがする。出汁の味のきいたうどん醤油もなかなか。これが地元の実力なのか、それとも腹が減りすぎていたせいだろうか。あっという間に食べて、終 わった。

そして、フェリー乗り場に向かった。