「ドーン、ドーン」という爆発音がして、ベランダに出た。目の前に、特大の花火が揚がっていた。光の帯が、教会の尖塔を赤く照らす。
ラグーンに囲まれたリゾートの一角。いくぶん塩の香りがする夜風が吹き込んでくる。静かな夜だと思っていたら、いきなり、花火だ。何発か派手に打ち上げて、終了した模様。なんの花火だったのかは謎。この脈絡のなさが、アジアか。
夏になると、日本では花火大会が開かれ、みんな大挙して見に行く。「みえねーぞ、このやろー、頭さげろー」「ビールいかがですかー」「通路に立ち止 まらないでください!通路をあけてください!」などと、一触即発の危機をはらみつつ、花火大会は進行する。そんな花火大会にあっては、場所取りが全て。だから、日々の計画性に欠ける僕のような人間は、まともに花火大会というものを見たことがない。記憶に残るのは、オヤジのケンカ、アワアワのビール、ピクニックシート代わりの新聞紙。うーん、花火は、、どんなだっけ。
そんな折り、この花火は子供の頃、米軍キャンプで見た花火を思い出させた。頭の上に降ってくるような、そんな花火だった。