午後のカフェ

Photo: 1995. California, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Agfa

Photo: 1995. California, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Agfa

午後のカフェ。

カリフォルニア随一のテーマパークユニバーサルスタジオだが、水辺のカフェは静かだ。

西海岸の太陽が、美しいコントラストをつくっている。時間がとまったように思える。

パン屑をおっかける小鳥だけが元気だ。

光の驚異

Photo: 1995. Rome, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Agfa

Photo: 1995. Rome, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Agfa

大聖堂の内側から、天井を見上げる。南欧の太陽がステンドグラス越しに照らす、壁面のフレスコ画。幾重にも重なる色。

バチカン大聖堂。光源は日光と僅かな蝋燭の燈だけだが、室内は明るく柔らかな光に包まれている。バチカンの建物で感心したのは、広大な室内の明る さ。さほど多くもない窓から、至る所に埋め込まれた金箔や大理石が、聖堂の奥まで光を運ぶのだ。この建物が建てられた当時、礼拝した人々の目には、この光の驚異が焼きついたに違いない。

ヨーロッパの他の由緒正しい聖堂の幾つかを見たが、ここに比する光の美しさを持つものには出会わなかった。この建物の中を満たす光の色合いには、実際にこの場所に立って見るだけの価値がある。

親切星の人

今日は、猫の舘と 同じテーマを書いています。とは言っても、羊ページは、物凄くのんびりしているので、該当するテーマは、猫の舘では、とっくの昔に掲載されています が、、。で、今回の「今日の一言」は、読者からクレームがついたので、書き直してみました。愛情をこめて書いたつもりでしたが、「悪口じゃねーかよ」とい う不満の声があったのです。


以前、僕の友達のプチ成金について書いた。一言で言うと、小金持ちで、衝動買いが大好きで、ポルシェに乗ってる、気のいい男だ。今日は、彼の特徴についてもう少し掘り下げて書いてみようかと思う。

プチ成金は、友達が多い。

以前の「今日の一言」で書いたが、僕が「一般的な動物」に警戒されないのと同じように、彼は、「たいていの人間」に警戒されない。(赤の他人の)食 堂のおばちゃん、(赤の他人の)ビルの警備のおっさん、(赤の他人の)弁当屋の配達員、(赤の他人の)駐車場でたまたま隣に駐車した人、(赤の他人の)旅 先の宿の主、、。あらゆる人と、瞬時にお友達になってしまう。英語などの外国語はあまりしゃべれないらしいが、相手が(赤の他人の)ガイジンでも 「ビューッ」とか「ダーン」とか「パッパッ」とか、意味不明な擬音語と、妙なアクションを駆使して、意思を疎通させる。(赤の他人の)ガイジンだって友達 だ。

プチ成金は手厚い。

友人が多いと、普通は1人1人に手厚くしているわけにはいかない。だから、個々にはどうしてもその場限りの付き合いになりがちだ。しかし、彼はそう いうタイプの人間ではない。真夜中に(頼みもしないのに)「面白いジュースを見つけた」と言って何十キロも離れた家まで押しかけてきたり、「車復活計画」 と称して、(頼みもしないのに)朝の4時まで他人の車を洗車したりする。(頼みもしないのに)とても手厚い。

プチ成金は恐ろしく親切だ。

スキーに行くと、(恐ろしく)親切なことに、チェーンをはめられない見知らぬ人のために、吹雪の中、チェーンを着けてやったりする。しかも、手伝う ならまだしも、全部やっていた。冷酷な僕は、傍で見ていて、「さっさと見捨てろよ、ボケがぁ」と怒り狂う。帰りは帰りで、自分の車に乗った人は、(恐ろし く)遠くに住んでいる人でも、家まで送ってくれる。とにかく(恐ろしく)親切だ。

つまりは、あきれ果てるほど「いい人」である。彼は、親切の星から来た人なのだ。本人は、それら全ての行動は、「冷徹な計算」から導かれたものだと 主張している。しかし、親切星の人の「冷徹な計算」とは、いかようなものか、僕にはよく分からない。「冷徹に計算」すると、赤の他人のチェーンを巻くのだ ろうか。


スキーに行ったときの話しだ。(超最近なんだけどね)

僕は、その日の午後から体調崩れ気味。一緒に働いてきたチームの人たちが、とあるプロジェクトに続々と買われてしまい、僕のやるべきことがべらぼうに大きくなってしまったせいだ。そのまま帰ればよかったが、あいにく飲み会が用意されていた。

午前1時に家に帰って、仕度をしたら、もうスキーに出発。集合場所である駐車場に着いた段階で、事態は極めて悪い状態にあった。息苦しい上に、妙な 寒さが、腰のあたりに上ってくる。荷物の積み下ろしを他のメンバーに任せて、車の中でウトウトする。気分が悪くて、ちゃんと眠ることができない。

ドアが開いて、袋が差し出された。プチ成金だ。彼が差し出した袋の中には、タケダの C1000、アリナミンV、ユンケルなど、あらゆる種類の滋養強壮系ドリンク、そして缶入りのポタージュスープ。そんなものが、袋一杯に入っていた。真夜 中の駐車場、どっからそんなものを入手してきたのかは謎だったが、親切星の人に不可能は無い。

ブルブル震えながら、キャップをねじ切って、彼が買ってきてくれた液体を飲み込んだ。アリナミンVの味は最悪だった。結局、体調は回復するどころ か、直後に全部吐く羽目になった。でも、良い意味で、忘れがたい味だった。僕のために買ってきてくれた、心のこもった、夜中のアリナミンV。それは、たぶ ん美味しかったのだ。

プチ成金はいい人だ。

注:チェーンの件だが、僕は偽善者なので結局は一緒に手伝わざるをえなくなる。とても寒い。