traveling

Photo: 2001. Tokyo, Japan, CONTAX T3 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/35, Knodak DYNA 400, F.S.,

Photo: 2001. Tokyo, Japan, CONTAX T3 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/35, Knodak DYNA 400, F.S.,

「疲れたなぁ」

と思って見上げると、もう秋が終わろうとしていた。業界は、やたらと不景気で、それでも忙しい場所というのはあくまで忙しい。いろんな事を、実務的に片づけ続けたここ数週間。そういうリズムの中で、いろんな事にすれ違って、でも、心は気が付かない。


山積していた諸々に、ようやく片が付き、僕は久しぶりに休みをとった。電車にのって、街を出た。

ヘッドフォンから、宇多田ヒカルの「traveling」が流れてきた。いままでと、ちょっと感じが違う曲。リズムと、流れる街の灯りは、よく合っている感じがした。

縄文杉

2001. Yakushima, Japan, Nikon F100, AF ZOOM NIKKOR 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji-Film RHP III

2001. Yakushima, Japan, Nikon F100, AF ZOOM NIKKOR 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji-Film RHP III

はい。これが縄文杉。

「あ、杉だ」

「杉だね」

感想、以上。


登山開始から、4時間。途中からトロッコ道もなくなり、ただひたすらに山を登った。背負ってきたのは、1日分の非常食(チョコレート、ハイチュウ詰 め合わせ、カロリーメイト等)、弁当(おにぎり2つ、唐揚げ、エビフライ等)、水1リットル(縄文水)、合羽(生協の見切り品)、フィルム10本、3脚、 一眼レフカメラ1台、コンパクトカメラ1台。撮影機材の重さのため、水の量を削ったのはあとあと大きな後悔を招くことに。とにかく、カメラが重い。

森の中は、湿度が高い割に涼しかったが、それでも汗がしたたり落ち、体がほてる。時々、小さな沢に出たが、去年の四万十川では生水に当たっているので、口をつけることはしなかった。野生動物が多いので、寄生虫でも居たら大変なことになる。

手を浸けて、顔を洗うだけで、その冷たさがしみる。飲んだら旨いんだろうなぁ。背負っている縄文水の残りは、かなりこころもとない。へろへろになっ て山を登る道すがら飲む水は美味いので、つい飲んでしまうのだ。丁度、運動会の後で、水道の蛇口からゴクゴクのんだ、あの水の味がする。


そして4時間、縄文杉にたどり着いた。

樹齢は、諸説あって2,600年とか、7,000年とか、とにかくいろいろ。朝から、木ばっかりの風景を見てきたので、この杉にたどり着く頃には、もはや巨木にも慣れきっていた。

そして出てきた感想は、「あ、杉だ(また杉かよ、、)」

以上。

てくてく

Photo: 2001. Yakushima, Japan, CONTAX T3 Carl Zeiss Sonnar T* 2.8/35, Fuji-Film RHP III

Photo: 2001. Yakushima, Japan, CONTAX T3 Carl Zeiss Sonnar T* 2.8/35, Fuji-Film RHP III

てくてくてくてくてくてくてく。

縄文杉を目指す道は一本道で、とにかくルートに従って歩く以外に、方法は無かった。ひたすら、トロッコの軌道をづたいに頂上を目指す。獣道が多い屋 久島の山中で、ろくな装備も持たないままにルートをはずれることがいかに危険かは、容易に想像が付く。今年、既に3人が山から帰っていない。


てくてくてくてくてくてくてく。

苔と、水たまりと、濃い森。足元に続く線路。

「やっぱ、我々人生レールの上ってことかね?」

、、仰る通り。