I can see clearly now

Bar in daylight.

Photo: “Bar in daylight.” 2016. Okinawa, Japan, Richo GR.

“I can see clearly now the rain is gone.”

と Holly Cole は歌うが、飛行機の窓から見る沖縄は雲が結構な頻度でちぎられて、まだ夏のなごりを感じさせる水蒸気立ち昇る海。

イヤフォンを外すと、空港の混雑でなかなか着陸できない、とアナウンスがある。飛行機は、那覇上空をずっと旋回している。さて、本当の理由は何でしょう。

1. 既にハイジャックされている
2. 実は主脚が下りない
3. 琉球が独立したので降りられない

正解は、尖閣諸島周辺への F15J 要撃機のスクランブル。

台南、休日の朝の牛肉湯(石精臼牛肉湯)

Bouillon for breakfast.

Photo: “Bouillon for breakfast.” 2016. Tainan, Taiwan, Apple iPhone 6S.

台南、二度目。ホテルの朝食は予約していない。台湾人が週末の朝に食べるものを食べたい。Xiaomi の地元アプリで、繁体字を解読しながら牛肉湯の店を見つける。Xaomiの画面を見せると、タクシーの運転手は直ぐに場所を把握した。


店は台湾のよくある路面店。通路に面したカウンターで、青い Tシャツ姿の大将が赤身の固まりを切っている。既に熱気を帯び始めた台南の朝。

牛肉湯は熱いスープに、赤身の牛生肉の細切りを入れて、しゃぶしゃぶというか湯上げのようにして喫する料理。一緒に、魯肉飯も頼みましょう。朝飯には重そうだが、上品なスープに、脂っ気のないさっぱりした肉で、とても軽く感じられる。そこに生姜のアクセント。暑い台南で生肉?とも思ったが、表面にしっかり熱が入るし、これはとても気候に合っているように感じた。


食べ進んでいると、店の人がレンゲにスープを取れという。卓に備え付けの、「米酒」と書かれた調味料を入れてくれる。沖縄に於けるコーレーグースのような、そんな風味が付く。なるほど、レンゲで試して気に入ったらどうぞという事か。そんな細かい気遣いを、地元の繁盛店で受けられるとは思わなかった。

向かいのテーブルでは、小さな女の子と父親が、親子で朝ご飯だ。シンプルな肉スープを前に、いささか退屈げにしている彼女にとっても、やがては忘れられない懐かしい故郷の味になるのではないかな、と思う。

なんだろう、何年後にでも戻ってきて食べたい、そういう味なのだ。お会計は全部で 200円ぐらい。安いね。

河は流れて

Over the entanglement.

Photo: “Over the entanglement.” 2016. Hangang River, South Korea, Richo GR.

実際に行ってみるまで思い至らなかったのだが、朝鮮半島には河が流れている。それも、北から南に。河の流れは国境には関係ない。

北朝鮮を源流とする臨津江は、板門店のあるJSAのあたりを流れ、やがてソウルまで流れ下る漢江に合流する。

この長大な河岸をくまなく警備するというのは、物理的に言って相当に無理がある。それも、異民族ならばともかく、見た目も言語も同じなのだ。24時間365日、驚くべきコストだ。戦争というのはそんな金のかかる事を延々と続けることで、押井守が何かの本で戦争のコストについて「札束をくべて焚き火をするようなもの」と言っていた事を思い出す。

そのような冗長なことを、規律を持って何十年も続けることが、本当にできるのだろうか。河岸には、監視ポストと鉄条網が延々と張り巡らされている。警備兵の姿は、こちらからは見えない。昔は歩哨が襲われる事もあったという。この長大な国境から、夜陰に乗じて韓国に侵入するのは、素人目に見ても不可能では無いように思える。

皮肉なことに、立入が制限された河は、人の手に荒らされずに自然の景色をたたえ、鷺のような鳥の姿を遠くに認める。人の都合も、彼らには関係が無い。