マラッカでネコがニャンと出る。

Photo: kitty 2010. Malacca, Malaysia, Sony α900, Carl Zeiss Planar T* 85mm/F1.4(ZA)

Photo: "kitty" 2010. Malacca, Malaysia, Sony α900, Carl Zeiss Planar T* 85mm/F1.4(ZA)

セントポール教会跡、マラッカ海峡に臨む西側の外壁。物売りのおばさんが路面に店を広げている。

首輪のない、数匹のネコが彼女の周りで群れて遊んでいる。おばさんの方にカメラを向けると、岩陰からネコがニャンと顔を出す。マラッカのネコは足が長くて、とてもすらりとしている。


家族なのだろうか、母親のような一匹が先導して、三匹を水のお椀が置いてある木陰に連れて行く。ここはとても暑い。

日本人の英語についてマレーシアで考えた

Photo: public phone 2010. Kuala Lumpur(KL), Malaysia, Sony α900, Carl Zeiss Planar T* 85mm/F1.4(ZA)

Photo: "pay phone in the street" 2010. Kuala Lumpur(KL), Malaysia, Sony α900, Carl Zeiss Planar T* 85mm/F1.4(ZA)

マレーシアへは仕事で行った関係で、沢山の種類の訛りのアジア英語と接することになった。アジアパシフィックの様々な国から人が来ていて、英語というのはこんなに幅があるのか、ということに驚いたし、僕からしたら「めちゃくちゃだな」と思うような壮絶な訛りの英語が、ちゃんと(かは分からないが)通じたりしているのを見るのも驚きだった。


一人のエンジニアと仲良くなった。彼は沢山プレゼンテーションしていて、彼の英語を延べで12時間ぐらいは聞いたと思う。彼はベトナム人か、インドネシア人に見えた。でも英語の訛りはアジア圏ではなくて、訊いてみるとフランスからアメリカに移住したのだと言う。だから、ベトナム系フランス人で今はアメリカ人(二重国籍)だと思う。

ワインが好きで、女の子の機嫌に敏感で、この人の文化はフランスの男なんだなと感心した。ビールを飲みながら(イスラム圏ではビールかワインより強い酒にはあまりお目にかからなかった)世界中を旅している彼に、日本人の英語はどうなのか?と訊いてみた。


曰く。日本人の英語には特有のアクセントがある。でも、日本人は自分が言ったことが通じなかったら、言い換えて、通じさせようと努力する。だから、君たちの英語は OK だ。君たちにとって英語は母語じゃない、だから上手くないのは当然で、それは問題じゃない。大事なのは、伝えようとすること、コミュニケーションをとろうとすることだ。

例えば、インド人の英語は聞き取りにくい。口の中だけで発音するからなおさらだ。それ以上に問題なのは、こちらが聞き取れなかった時に、全く同じフレーズを繰り返して、言い換えようとしない事にある。コミュニケーションしようとする意志を放棄しているんだ。


ホントにインド人が言い直しをしないか、翌日僕はインド人の英語を注意して聞いていた。が、実際には割と言い直しはしていた。まあ、それでも十分聞き取りにくく、中国系の同じく聞き取りにくい英語を米語のネイティブは一発で聞き取るのに対して、インド人の英語は聞き返しが入っていたのは印象的だった。

更に印象的だったのは、インド人と一緒に昼メシを食べているとインド人同士が英語でしゃべっている。君らなんでインド人同士で英語でしゃべるの?と訊いたら片方の人はヒンズー語がしゃべれないから、次に来る共通語が英語なのだそうだ。これがデフォルト多言語の国の姿か、と思う。


アジア、とは言ってもビジネスは全部英語だった。英語はやはり、ビジネスの世界の共通プロトコルであって、しかもかなりパケットがめちゃくちゃでもデータ交換出来てしまうものなんだな。そんな印象。

マラッカ

Photo: 冷や汁 2010. Tokyo, Japan, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

Photo: Duch Square 2010. Malacca, Malaysia, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

運河にかかる橋を渡ると、まさに、ここは僕が成田空港で一週間前に買い求めた、ガイドブックに載っていた写真と同じ場所。マラッカ観光の中心であるオランダ広場だった。特徴的な、赤茶色の土壁が赤道至近の太陽に焼かれている。


一匹の痩せた子猫が、車道を渡ろうとあたりを伺っている。僕はとても嫌な予感がして子猫を遮ろうとするが、怯えたネコは一時停止している車の下に潜り込んでしまう。呼んでも出てこない、このままでは轢かれてしまうだろう。

同行者も気づいて子猫を呼ぶ、車をのぞき込む。ドライバーも気付いて、恐る恐る車を動かした。

刹那、車輪の間から子猫は間一髪滑り出して、元来た植え込みの方に消えていった。ホッとするが、あの要領で長生き出来るのだろうか。何かあったの?とスペイン人のオバチャンが僕に訊く。


「Kitty!」
「?」
「Cat」
「Oh..Gato」
「そうそう」

この東洋人達はちょっと不思議ね、という顔をされる。

オランダ広場は酷く暑い。ド派手なリキシャーのようなものが、沢山止まっている。アイスクリーム売りがキンキンと鐘を鳴らし、お土産売りの露店がとりどりの帽子を並べている。僕は、ガイドブックにある構図の写真が一体どこから撮られたのか、不思議に思って周囲を見回す。


露店の脇にひっそりある階段から、広場を見渡すバルコニーに登った。特に制止する物は無いのに、誰も登っていない。そう、ここから撮ったに違いない。実に、この広場を一枚に収めるのであれば、ここしかない。

ちょっと穴場っぽかったので、ひっそり撮って、ひっそり降りた。暑い、そういえば帽子を持ってこなかった。