ニャー。ニャー。ニャー。

Photo: でかねこ 2004. Tokyo, Japan, Contax Tvs Digital, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105.

Photo: "でかねこ" 2004. Tokyo, Japan, Contax Tvs Digital, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105.

「はじめて来たのかな?」
「ええ」

ボウッとした暗闇から、でかい猫が見下ろしている。大きいの、小さいの、あたりは猫だらけだ。1,000匹はいるらしい。なかでも、こいつがひときは大きい。胴体なんか、抱えきれないぐらいだ。
「でかいですね」
「そうかな」
「いつからここに?」
「どうだろう、ずっと前から居るよ」


「それより何を飲むのかな?」
「いや、何でもいいですけど」
「マタタビ酒なんてどうかな。これはなかなか評判がいいんだ」
「、、いや、それはいらない」

僕には黒ビールが運ばれてきて、連れには(やはり)マタタビ酒が運ばれてきた。ちょっと飲ませてもらったけれど、えらく辛い泡盛のような味がして、舌が少し痺れた。
「これ、凄いですね」
ニャー。
「あれ?」
ニャー。

匂いに酔った??


注:まねき猫とジャズのお店だそうです。

凄く酷いポジションから、なんとかここまで来たなぁ

Photo: BMW Z3 2003. Okinawa, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8

Photo: "BMW Z3" 2003. Okinawa, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8

やっぱり人には波があると思っていて、ここ数年は落ち込んでいるような感じがしていた。沈まないようにがんばって浮いておく、というのが精一杯。そんな感じだった。

信じたことを沢山裏切られたし、知らなくても良いことを沢山知った気がする。周りは皆どんどんリタイアしていったけれど、僕はまだ踏みとどまっている。まだ、戦っている。単に、取り残されているだけ、なのかもしれないけれど。

凄く酷いポジションから、なんとかここまで来たなぁ、と思っている。臆病に負けて引き下がるよりは、むしろ、前倒れやら、前のめりやらで、お願いしたい。


えーと、つまり、ようやく株の損を取り戻した。(どうにかトントンか、、)

「ビールでも買ってあげようか?」

Photo: "発電機でライトアップ"

Photo: “発電機でライトアップ” 2004. Tokyo, Japan, Contax Tvs Digital, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105.

花見をしたことがない、という人が居たので、せっかくだからきっちり花を見に行くことにする。さすが、首都のど真ん中だけあって、派手にライトアップされた内堀の夜桜は綺麗だ。せっかくだから「ビールでも買ってあげようか?」と提案したけれど、さすがに歩きながら飲むのは嫌みたい。

頭の上をドームのように、桜が覆っている。「これは綺麗だなぁ」なんて言葉を、久しぶりに言った気がする。


そういえば、小さい頃に住んでいた家の直ぐ近くは、桜の植えられた長い長い遊歩道だった。僕はいつもそこを通って、バス停に歩いていたんだった。だから、桜の幹の独特のあの感じとか、若葉のそよぐ音とか、そういうものがとても懐かしい。驟雨に濡れた新緑の並木道とか、でかい毛虫が落ちてきたこととか、そんなことが次々思い出される。でも不思議なことに、咲いていた花の景色だけは、思い出せないんだ。