一連の騒ぎで、入港は 3時間遅れた。日没は近いが、いっこうに着かない。宿も決まっていない。「船長のお詫びのディナーは無いのか?」と冗談で言っていると、無償の晩ご飯が出ると言うアナウンス。そんな話をしていたタイミングだったので、凄い勢いで食堂に行く。
カレーと焼きそばが出た。ちゃんとレタスのサラダも付いている。具とかはあんまりなかったけれど、僕の好きなチープな味の焼きそばだったし、緊張感の続いた後で夕日を見ながら食べると、美味に感じた。なんかタダで食べるのも申し訳ないので、せめてビールを買って飲む。
乗る前は、フェリーって「船酔いするんじゃないか?」と思って恐かったのだが、そんなことは全くなかった。乗船後、最初はこわごわビールを飲んでみたが、気分は悪くならない。しまいには、売店で売られていた黒霧島(焼酎)を飲んでみたりしたが、大丈夫だった。
そういえば、一連の転落・救出・ヘリ来る、その大騒ぎを通して、デッキで寝ながら日焼けを続けていた人が居る。
死んでるんじゃないか?と思うほど、動かないのだが、ちゃんと寝返りは打っていた。いつの間にか誰言うともなく、「猛者」という名前がついていた。夕方太陽が沈んで、ふと不安になって(死んでんじゃないか?)見にいくと、猛者はちゃんといなくなっていた。
この猛者に限らず、転落事故で停船したことにブチ切れるトラックドライバーやら、全身彫り物が施されたお父さんと子供たちとか、なんか普段はあまり お目にかからない感じのお客さんが一杯。そんな人たちが、狭い(といっても全長 170メートル以上あるんだが)船の中でまる 1日の人生をシェアする。飛行機で行けばものの 1時間のこの距離を、ゆっくり進むフェリーって面白いかもしれない。
宮崎港に入ったのは 9時過ぎで、もう日もすっかり暮れてあたりは真っ暗だ。
「このような旅ばかりではありませんので、是非またフェリーをご利用下さい」
という船長のアナウンスが印象的だった。言われなくても、帰りもフェリーなんだよね、、。