WordPressをCside Netからさくらインターネットに移行する

今回のエントリは、レンタルサーバを使って自分で WordPress を運用している人にだけ役に立つ(かもしれない)エントリです。Cside Netから、さくらインターネットに移行した際の手順をメモしたエントリです。WordPress のデータレポジトリを MySQL4 から MySQL5 に移行する場合の手順を含んています。羊ページはこうやって運用されているのか、という雰囲気が分かって面白い人には、面白いかもしれません。


羊ページは約 8年に渡って、Cside のレンタルサーバ上で運用してきた。この間、長時間のサービス停止やデータロストもなく、おおむね満足すべき運用だったと思う。しかし、2010年の 5月から WordPress を CMS として全面的に使用するようになって、MySQL のバージョンが4.0.x であること、またそのパフォーマンスには不満を感じていた。特に、MySQL のバージョンが低いことで、WordPress の最新バージョンや一部のプラグイン(broken link checker等)が使用できないのが非常に問題だった。

羊ページは元々静的 HTML で構築されていたが、ひつじログとして幾つか CMS も試している。ただ、メインテナンスの困難さと自由度の低さから、どれも使ってみて都度断念してきた。WordPress は初めて、これなら使えると思った CMS だ。WordPress の 3.2ではMySQLは5.x が要求されることが既にアナウンスされており、Cside が MySQL5 を提供しない限り、羊ページは WordPress のバージョンアップが出来なくなる。

ホスティング契約の更新を目前にして、Cside のサポートに MySQL5 提供の可能性について問い合わせてみたが、予定は無い、との回答が来てしまった。であれば、業者を変えるしかないと即決した。


僕が最初にホスティング業者を選ぶときに Cside と迷ったのはさくらインターネットだった。当時から、Shell が解放されている業者として有名だったが、8年たって、ホスティング業者の大手に成長したようだ。実際にサービス内容と価格を比べてみると、Cside がこの数年、あまり新しい機能を入れてきていないのに比べると、積極的に色々サービスが拡充されている印象を持った。

僕が Cside と契約していたのは、Personal 独自ドメインと呼ばれるもので、年額 20,160円で 5GBのディスクスペースが提供される。Shell アクセスは無く、SSL は使えるが CA は独自(信頼されていないサイトの警告が出てしまう)だ。収容サーバは Intel Xeon 2.8GHzでメモリ1GB、2003年からの運用されており、OS は Debian 3 だ。

これに対して、さくらインターネットの相当する契約は(おおよそ)、レンタルサーバ プレミアムで、年額 15,000円+工事手数料 1,000円。ディスクスペースは40GB(RAID1) 使えて、MySQLは4 or 5 のいずれかが選択できる。SSL は共有だが、公式の CA の認証を通ったものだ。サーバーは新規のものに収容されたようで、Intel Core2 CPU T7200 2.00GHz でメモリ 2GBのスペック。OS は FreeBSD 7.1-RELEASE-p13 i386 が載っている。Apache のエラーログが見られたり、Web ベースのファイルマネージャがあるのが便利。


ディスク容量だけでサービスを評価するのは意味がないが、Csdie に比べてさくらインターネットは容量 8倍、価格が 2割安く年払いでもカード決済が可能(Cside は年払いは銀行振り込みのみ)。

メールアドレスの発行や、ML の運用などのできることはほぼ同じだが、コントロールパネルの作り込み、ConceptBase を使った FAQ DB の検索機能、spam メールフィルタの標準装備など、使い勝手ではさくらインターネットが勝っている印象を受けた。ということで、サインアップしてみた。

なお、さくらインターネットのサインアップ画面は、JavaScript 等で凝った遷移をしているのか、セキュリティー系のプラグインを沢山入れたfirefox では申し込みを完了することができなかった。(結局、IE を使った)


申し込みから数分で、完了報告とアカウント情報がメールされてくるので、早速移行作業を開始する。幾つか、試行錯誤をしたのだが、うまくいった方法を中心に書いておく。

まず、移行前環境と移行先環境の整理。


■移行元
Cside.jp Personal 独自ドメイン
MySQL 4.0.24

■移行先
さくらインターネット レンタルサーバプレミアム
My SQL 5.1.42

■レジストラ
goddady.com

手順としては、以下のようになる。

移行元 Apache 上のデータをローカルにFTPダウンロード→移行元 MySQL のテーブルをエクスポート→ローカルに落とした Apache 上に載せるデータを移行先に FTP アップロード→ローカルの MySQL テーブルデータを移行先にアップロード→ wp-config.php の DB 設定を変更→さくらインターネットに sheeppage.net を登録→レジストラの Nameserver エントリを移行先の DNS サーバに変更


まず、Cside のサーバ上にある WordPress 本体や画像ファイルなどをまとめて、FTP 経由でローカルに落とす。元々マスターがローカルにあっても、作業用のデータファイルなどが混ざっていて、移行には向かない場合がある。あらかじめ、落としておいた方がよい。また、WordPress のプラグインやテーマはWeb の管理画面からイントールや設定変更が行われるので、ローカルの初期状態とは食い違っている場合が多く、面倒だがこの手順を踏んでおくことをお勧めする。

なお、ASCII と Binary を間違えると当然、ファイルが壊れるので拡張毎に処理を分けられるクライアントを使った方が良い。*.mo ファイルなど WordPress 固有のバイナリファイルの拡張子には注意。


次に、MySQL のテーブルデータをエクスポートしておく。wp_ で始まるテーブルを全てエクスポートする。作業には、phpMyAdmin を使用することになるが、必ずインターフェイスを UTF8 に切り替えておくこと。WordPress 日本語版は UTF8 でデータを格納しており、phpMyAdmin のデフォルトの EUC モードでエクスポートすると.sql ファイルの中が EUC と UTF8 混在になってしまう(これに気がつかなくて、やり直しになった)

さくらインターネット側は16MiB までのインポート制限がある。zip 圧縮にも対応しているので、もし.sql ファイルが大きくなってしまった場合は、ローカルで一度.zip に圧縮してから(Csideの phpMyAdmin はエクスポート時の圧縮オプションに対応していない )アップロードしても良いだろう。しかし、元があまり大きな.sqlファイル(30MBとか)では、圧縮すればエラーにはならないが、インポート時に結果表示がきちんと出ないので、一度にインポートする適宜テーブルの数を調整した方が良い。僕は10MB程度で分割して、4つのエクスポートファイルを使用した。


さくらインターネットの Apache に、ローカルのファイルをアップロードする。Cside とは推奨のアクセス権が異なっているので注意。アクセス権は705 になるように、FTP クライアントのデフォルト設定を変更しておく必要がある。


さくらインターネットの MySQL にテーブルデータをインポートする。まず、コントロールパネルから DB のバージョン(MySQL5)を選択し、パスワードを設定して DB が使えるようにしておく。

phpMyAdminの管理画面の言語設定がUTF8になっていることを確認し、おまじないに(Helpを読んでみたものの、これが正しいのか自信はないが)SQL互換モードをMySQL40に変更してインポートする。

インポート先は自分の契約ドメインの方にして、スキーマにインポートしてしまわないように注意(そういうことをする人は、そもそもこういう作業はしないと思うが、、)

インポートの際には、クエリがノーエラーで通ったことを確認する。


WordPressのDB設定をCsideのものから、さくらインターネットのものに変更してアップロードする。wp-config.phpのサーバ名、DB名、ユーザ名、パスワード、のみ変更する。

ここまでの作業で、サーバ上のデータは完全に移行先にコピーされた。次に、自分の契約しているgTDLドメインをさくらのサーバに登録する。コントロールバネルから、自分のドメイン(僕の場合sheeppage.net)を追加する。この作業は必ず、レジストラ側の設定変更の前に行うこと、とさくらインターネットの移行手順には書かれているので注意。

次に、(ここは各自の契約形態によるが)、DNS の設定変更を行う。具体的には、自分の契約しているレジストラ(僕の場合はgodaddy.com)に Nameserver の変更依頼を行う。

godaddy.com では、契約更新や Nameserver の変更は全て web から可能なので、ここでさくらインターネットの DNS サーバ(プラマリ/セカンダリ)に書き換えておく。浸透速度はケースによるが、僕の場合1時間程度で浸透した。


DNS の変更が済めば、WordPress の管理画面から一通りの設定の調整を行えば移行は完了する。例えば、wp-DBManager のアーカイブ保存先パスなどは、Cside とさくらインターネットでは異なるので、設定変更する必要がある。

また、DNS の変更後に Cside 側の設定を変更したくなった場合には(さくらインターネットのように、サブドメイン経由での設定変更ではないので)一時的に、Cside の DNS をクライアントから参照することで、移行前の sheeppage.net にアクセスできることも覚えておきたい(DNS 変更後に Cside のコントロールパネルへのアクセスが出来なくなって非常に焦ったのだった、、)


以上、Cside からさくらインターネットへの WordPress 移行のメモでした。さくらに移行後、直ぐにWordPress を最新の 3.0.1 にアップデートしましたが、かなり改良点が多く、移行して正解、と思っています。

WordPressは人の文章を変えるか

WordPress に完全に切り替えて、三ヶ月。

退路を断ったというのもあるし、これ以上、手動でコンテンツを維持し続けることがもう無理になったというのもある。


以前の羊ページは blog と手動更新の静的ページを分けていたのだけれど、その区分けを無くした。昔の記事が合わせて 1,200程あったのだけれど、それも一緒にしてWordPressに移行してしまった。自分なりに、blog と静的ページは書き分けていたつもりだったのだけれど、その垣根を取り払ってみると、かえっていろいろ面白い気がした。

同時に、地域で分けていた旅行記も、WordPress のタイムラインの上に並ぶようになった。カテゴリという形で、旅行記の体裁は残るけれど、年月日の流れの中で、旅行記を把握することもできるようになった。自分の 15年を、そのような角度から俯瞰するというのは、想像以上に面白い作業だ。

道具によって、人の文章は変わるのだろうか。実際にやってみて、変わる、それが今の感想だ。


先週、MIT メディアラボの石井さんの講演。最後の Q&A の中の、「表現されていない思考というのは、存在しないと同義だ」という言葉が印象に残っている。僕の個人的な意見は又違うのだが、そこまで厳しく捉えるか、ということに感心し、戦慄に近い印象も覚えた。Demo or die. と言われるメディアラボならでは、といえばそれまでだが、表現することというのは、とにかく出してみることだ、というシンプルなメッセージだと思う。

WordPress のような CMS は、HTML をカリカリ書くのに比べると、publish することに対する敷居が低い。僕はどちらかと言えば、完成度の低い文章は出したくないし、気後れしてお蔵入りにした文章も今まで数知れない。しかし、表現するのであれば、完成度とか、わかりやすさとか、そういうものにはやはり拘泥してはいけないのかもしれない。

岡本太郎とか、そういう人も著作では同じ事を言っている。まず、自分の表現をしてみろ。


WordPress の更新作業の手軽さと、デザイン変更の容易さは、「なんとなく更新できてしまう」という環境を提供する。編集画面のエディタさえ自分好みにカスタマイズ可能なのだ。それによって、更新頻度やコンテンツの重さ、のような物は明らかに変わった。いままで時期を見計らって寝かせていたようなトピック、あるいは、形になりきっていないような物でも、特に恐れることなく publish するようになったのだ。

変わった事は良かっただろうか?少なくとも、必要ではあった。それは確かだ。

WordPressに移行

羊ページはblogではなかったし、そうするつもりもあまりなかった。数年前、NucleusとMovable Typeは実際に使ってみて、CMSでの置き換えができないか試してはみた。しかし、それは無理、という結論に達した。自分がやりたいことをするためには、かなりのカスタマイズが必要で、CMSスクリプト本体に手を入れることは、バージョンアップを不可能にし、結果、継続的な運用が不可能になることを意味する。


3度目の正直。blogのCMSとして、近年大きなシェアを持っているWordPressはCMS本体、周辺機能のプラグイン、デザインテーマの3つの要素が分離されている。相互の互換性の問題はゼロではないが、メインテナンス性を維持したまま、自分の求めるカスタマイズされたサイトを構築ができるのではないか?そう思って試してみた。

もちろん、CSSとjava Scriptを前提としたWordPressに移行することは、旧世代のブラウザとの互換性を破棄することを意味する。スタティックで軽量、かつHTML4に固執してきたこのページのポリシーを捨てるのか?という迷いはやはりあった。


決断したのは、iPhoneを使うようになったことが一番のきっかけだったと思う。レガシーな技術を使うことで間口が広がる、という考え方が、まったく意味を成さない。iPhoneを半年使って、そう考えるようになった。ホームページからblogへのパラダイムシフトが、更にtwitterにシフトしたことを目の当たりにした。そして、より柔軟な出力形態に耐える仕組みに移行しなければならないという、切実な感触を持ったのだった。

実際に、WordPressを使ってサイトをつくってみると、想像以上に自分のしたいようにカスタマイズができる。ひつじログを作ったときに、CMSの制約に縛られたLook & Feelに、読者の反応は拒絶に近い物があった。今までのページと全く同じものを再現する必要は無いとは言え(むしろ、それでは無意味だ)、Look & Feelはあまり違和感の無い形で移行したかった。3度目の試みでそれができるのではないか、という感触を持ったのだ。


標準のテーマを最小限の改造と、プラグインの追加でそれを実現できないか。約二ヶ月、ちょっとずつ試してきた。実際にやってみると、CSSはほぼ作り直しになったが、スクリプトの変更は最小限に抑えることができた。サイトの雰囲気は、それほどには、従来のサイトと変わらない感じになった(なってるといいなぁ)。そして、HTML4で停滞していた、自分のWebサイトデザインの諸々の知見も一緒にアップデートすることが出来たように思う。


最も大変だったのは、手動でコンテンツをCMSに移行していく、果てしない作業だったが、というかまだ終わっていないのだが、1,000コンテンツ移行し終わったので、ひとまず公開することにした。

Webサイトは、永遠に完成しないものであり、リリースしながら作り替えていくことこそ、ネットの本質。ということで、ひとまずWordPress版羊ページをここにリリース。

追伸:なので、iPhone, andoroid, ガラケーからも自動的に生成される専用画面で閲覧可能になりました。RSSフィードも出してますし、サイト用のtwitterアカウントもあったりします。