清明神社と陰陽師

Photo: 清明神社本殿 2002. Kyoto, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 35-135mm/F3.3-4.5(MM), Kodak EB-2, F.S.2

Photo: "清明神社本殿" 2002. Kyoto, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 35-135mm/F3.3-4.5(MM), Kodak EB-2, F.S.2

晩夏、完全なオフシーズンの京都。見かけるのは、果てしなく暇そうな老夫婦か、激安狙いの海外観光客、そして羊ページ管理者ばかり。

しかし、ここ清明神社だけは何かが違う。混み具合が違う、客筋が違う、雰囲気が違う。神社仏閣には普通ありえない、なにか別の空気が張り詰めている。


一言で言えば、「ブーム」なのだ。

清明神社は映画「陰陽師」の主人公、安倍晴明を祭る神社。映画「陰陽師」は、どうやらなかなかヒットしたらしく、境内をうろうろしている親子連れや、おばちゃん集団、年配カップルなど、大半が明らかに「その筋」の客だ。境内には、映画「陰陽師」のポスターが貼られ、社殿は新築され、なんだかすごいことになっている。おりしも、宮大工がさらなる社殿の増築のため、白木に鉋をかけている。


「そういうもんじゃないだろ、、」

といっても、そういうものなのだ。もちろん、グッズだって負けていない。鹿に「しかせんべい」、陰陽師には「五芒星ロゴ入り西陣織シルクネクタイ」、望もうと、望むまいと、そうなるのだ。


さすがに、本殿の周りは昔の落ち着いた雰囲気が残っていてホッとする。鮮やかな五芒星を描いた提灯、風雨に晒された柱木。紙と木のコントラスト。かつて、平安京を鬼から守った陰陽道の神社も、今は静か。

追伸:そうそう、陰陽師2も製作中だって。ポスターが貼ってあったよ。


注:「五芒星ロゴ入り西陣織シルクネクタイ」は神社のオフィシャルグッズではなく、近所の微妙な感じの土産物屋で売られていた。

Frankie & Johnny

本日の、今日の一言には、ゲイリー・マーシャル監督「Frankie & Johnny」のラストシーンに関する記述が含まれています。まだご覧になったことが無い方は、ご注意ください。

寝る間際、久しぶりに映画を観た。ゲイリー・マーシャル監督の、「Frankie & Johnny」。

出演はアル・パチーノ、ミシェル・ファイファー。キャストは豪華だが、筋は恋愛恐怖症のウイトレスと、バツイチのコックの恋模様という、えらく地味な映画。夜も遅かったが、画がキレイだったのと、共演の二人の会話の妙で、つい最後まで見てしまった。

ラスト・シーン。雑然とした部屋に黄金色の朝日が差し、街は動き出そうとしている。二人は、アパートの出窓に腰を下ろして、歯を磨いている。ついさっき、二人は別れようとしていた。一瞬のすれ違いが、あるいは永遠に互いを隔ててしまったかもしれない。その時女は、自分の運命を、自分だけで背負うこ とに、決めかけた。でも、そうはしなかった。もう一度、自分以外の誰かと、生きることを選んだ。そんな出来事を越えて、二人は少しだけ新しい場所に立っている。新しい場所、向かい合って座る。朝日の街を見つめて、歯を磨いている。

たぶん僕は、出窓に腰を下ろして、恋人と歯を磨いたことはないと思う。でも、そういう朝もあったんじゃないか?そんな気が、ふとしてしまう。こんな 空気が流れるときが、確かにある。やがて、記憶は薄れ、失われてしまうのかもしれないけれど。ラスト・シーンを、そんなことを思いながら、観た。

監督のゲイリー・マーシャルは、プリティー・ウーマンで名を馳せた監督。ただ、僕は、こういうスケールの小さい映画の方が、むしろ好きだったりする。

邦題:「恋のためらい フランキーとジョニー」あまりにも、あまりな、邦題。これじゃ、誰も見ないよ。