その時、僕たちは空腹にあえいでいた。
今までの行き当たりばったり旅行の中で、幾多のボッタクリ飲食店にやられてきた我々としては、旅先での店の選択には慎重にならざるおえない。しか し、食事の出来る場所を探して島中を走り回ったが、昼食の間帯を外し、飲食店は皆「準備中」の看板を下げている。そもそも、やってないのだ。コンビニだっ て、まともなものはなかった。
結論。スーパーだ、スーパーに行こう。食べ物を買おう。
たどり着いたのは Aコープのお総菜コーナー。夕食の買い物にはまだ早いせいか、棚は幾分スカスカ。それでもコロッケとか、焼き魚とか、いろんなものが並んでいる。ちなみ に、鮮魚コーナーの充実ぶりは流石だ。つやつやしたイカ丸一本、それが目にとまる。ちょっと買いたくなったけれど、昼から刺身でも無いか。
唐揚げと、巨大なソーセージサンド、おやつにシュークリームも買う。そして、飲み物は、縄文水。縄文水は、屋久島オリジナルの超軟水ミネラルウォー ター。東京では薬局で売られることもあり、一部のマニアには珍重されているらしい。その縄文水も、地元の生協ではお茶やジュースと一緒に、ごろごろ売られ ている。ちなみに、値段は 500ml のペットボトルが 130円(定価)。
期待して買ったわけではなかったが、縄文水の柔らかさと、ゆっくりした香りが、深く息を付かせた。島に降り注いだ雨が、そのまま湧き出したような、 優しくて新鮮な水だ。深夜、ホテルのベッドサイドに腰を下ろし、1.5リットルのペットボトルから、ごくごく飲む。嚥下するたびに、この土地の匂いが体に しみ込んでいく。結局、島に居る間は、この水ばかり飲んでいた。追加の水や、こまごましたものは、Aコープで便利に買いそろえることができた。値段も、 スーパーだからぼられる心配が無い。
明日は、この水を生んだ屋久島の山々。そして、縄文杉に会いに行く。ホテルのフロントから登山届けの用紙をもらい、昼メシの弁当も手配してもらった。弁当?予約しておくと、山に行く途中で、弁当が買えるようになっている。資本主義というのは、面白い。