夕方、シベリア鉄道の出発時刻が近づいてくると、巨大な荷物を背負ったバックパッカー達が駅に集まってくる。
折りたたみのカヌーか何かか、とにかく大きな荷物を持っている人が多い。
そして、仕事を終えた人々がバスターミナルから家路につく。そんな混み合ったウラジオストクの駅で、初めて野良犬に出会った。目つきは至っておそロシアだが、吠えるでもなく、ゆっくりその辺りを歩き回っている。厳しい冬を乗り越えるだけあって、どこか精悍だ。
ウラジオストクの年間気温というのを調べてみると、冬はマイナス20度以下になる。そんな世界で、どうやって野良犬がやっていけるのだろうか?以前見たテレビでは、極寒の街で生活する野良猫は、冬場はその辺の家に好きに入っていって休んだり、餌を貰ったり、集合暖房の配管設備で暖を取ったりしていた。
きっとそんな工夫が、ここにもあるのだろう。
犬はひとしきり行き交う人を眺めているようだった。僕たちは、晩飯を狩りにその場を離れる。翌日の夕方、またバスターミナルで犬の姿を探したが、見つからなかった。