払暁の光

Photo: 手帳 2006. Japan, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX
Photo: “手帳” 2006. Japan, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX

払暁の光から、空は段々と朝の気配を帯びて、やがて日常の色を成していく。朝 4時に起きるのはつらかったが、こんな景色が見られるならそれも悪くない。

新千歳が大雪のため、引き返す可能性がある旨、機内放送がある。さっき、現地に先行している友人に電話したら、雪はそうでもないらしい。保険みたいなものか。

そうそう、同じ便には T シャツ姿のガイジンのグループが乗り合わせた。何故奴らは世界中のあらゆる場所で、T シャツなのか、おおいなる謎。この便は、北海道行きだよ?


とかいうようなことを、”ほぼ日手帳”に 書きながら、過ごす。旅行に手帳は便利だ。考えてみれば、手帳を持って旅行するのは、学生の時にロスアンジェルスに行って以来。会社に入ってからは、いつも、PDA とか PC を持っていた。電子機器の扱いにうるさくなった昨今、飛行機の中でも気にしないで書くことができるのが良い。それに、なんか、「書いてる」って感じがする。

iCon

スティーブ・ジョブズ-偶像復活
そもそも、僕がコンピュータ業界で働こうと思ったのは、ジェフリーヤングが書いた「スティーブ・ジョブズ」(1989年刊)を読んだことがきっかけだった。パーソナルコンピュータの黎明期を描いた、とても良い本だった。

そして、僕は自分が思ったとおり、コンピュータ業界で働いているわけだが、ITバブルとインターネットの勃興に支えられたエキサイティングな時代は終わり、業界もかわり、一言で言うと「あまり面白くなくなった」。

その今に、もう一度原点に帰ってみるのはどうか。先頃出版された「スティーブ・ジョブズ」の続編とも言える、「スティーブ・ジョブズ-偶像復活」を読んでみた。Apple設立から、取締役会によって追放されるまでの前半を、前書を思い出しながら読み、そして、Pixer設立、Appleへの復帰、そしてiMacとiPodによる栄光の復活劇まで読み進める。


最初のスティーブ・ジョブズを読んでから 15年後に、改めてたどるジョブズの軌跡だが、やはり当時とはだいぶ違う感じ方をした。そして、描かれるジョブズの人間像にも、大きな変化があったように思う。

強烈なビジョンの力を信じ、未来と運命をそれに従わせる力を持った男。そのビジョンは世界を変えると、「信者」達は信じて従ったわけだが、その浮かされたような時代は終わったように見える。しかし、円熟したジョブズのビジョンは、より広い市場へのアプローチを可能にし、iPod や Intel Mac といった、新しい地平を拓いている。

この本の読みどころは、あるいは、後書きの部分かもしれない。印象的だったフレーズを二つ。

あるインタビューで、

コンピュータとテクノロジーについては、「これで世界が変わるわけじゃない。変わらないんだ」
(中略)「わるいけど、それが事実なんだ。(中略)人は、生まれ、ほんの一瞬生き、そして死ぬんだ。ずっとそうだ。これは、技術じゃ、ほとんどまったくと言っていいほど変えられないことだ」

誰あろう、スティーブ・ジョブズの言葉だ。あの、1984のCMフィルムをつくらせた、ジョブズの。

もう一つ、スタンフォード大学の卒業式で

毎朝、「今日が人生最後の日だとしても、今日、する予定のことをしたいと思うか」と自問する

という話。ジョブズにとっての、あらゆることのプライオリティーが変わったのかもしれない。これほどの男が、15年の間にこんなにも変わるのかと思う。とは言っても、同じ祝辞の中で、こうも言っている

「ハングリーであれ。分別くさくなるな」

そこには、革新者としてのジョブズが健在だ。

Zeiss Ikon で初めて撮る

Photo: 窓 2006. Japan, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX.
Photo: "窓" 2006. Japan, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX.

Zeiss Ikon で初めて撮る。

空港のいつもの Royal の deli から。携帯のレンズでは、とても写らない遠くの富士山は、果たしてどうだろうか。実際にフィルムを入れてみて、外で撮ってみると、とても良く感じる。

ペースがゆっくりしているし、自分で撮っている感じがする。それに、何かを盗んでいるような、奪っているような、そういう感じがしないのだ。


昨夜、フィルムを初めて入れた。Tri-X だ。入れるのが少し難しくて、それが嬉しかった。自分が持っているのを自然に感じるカメラ。U10 以来かもしれないし、あるいは、初めてかもしれない。

目下に雲が見えてきた。遙か北に向かっている。空を ikon で撮ってみようと思って、荷物から出してみた。カメラを傍らに置いて、手帳に文章を書いている。プロのカメラマンだか、紀行作家だかみたいだ。