熊のメリークリスマス

Bear's Christmas

Photo: “Bear’s Christmas” 2015. Tokyo, Japan, Apple iPhone 5S.

クリスマスから日付が変わり、ここで最後とタクシーでたどり着いたレストランは、温かくて静かだった。

夜もすっかり更けて、もう明け方の店には、ちょっと遅いクリスマスを祝っている謎のカップルが居る。熊のカップルも座って居る。そして、4軒目か、5軒目ですっかり疲れがまわってきたリーマン達(僕らだ)。それで全部だ。

街は静まりかえって、クリスマスの雰囲気は無くなりつつあるけれど、謎の二人は楽しそうだ。こんな深夜から会っている二人に、どんな事情があるのかは分からない。ただ、静かに話しをしている。


渋谷にこんな場所があるとは思わなかった。西欧のいろんなカワイイを混ぜたようなインテリアは、そのちょっとちぐはぐな感じが、ディズニーランドみたい。

リーマン達は、字面が凄いという理由だけで頼んだスペアリブと、ノリだけで頼んだピザを、ビールで流し込んでいる。何を話したかはもう覚えていない。


そういえば、熊のカップルも、プレゼントを交換してクリスマスをちゃんとお祝いしているよ。

I can see clearly now

Bar in daylight.

Photo: “Bar in daylight.” 2016. Okinawa, Japan, Richo GR.

“I can see clearly now the rain is gone.”

と Holly Cole は歌うが、飛行機の窓から見る沖縄は雲が結構な頻度でちぎられて、まだ夏のなごりを感じさせる水蒸気立ち昇る海。

イヤフォンを外すと、空港の混雑でなかなか着陸できない、とアナウンスがある。飛行機は、那覇上空をずっと旋回している。さて、本当の理由は何でしょう。

1. 既にハイジャックされている
2. 実は主脚が下りない
3. 琉球が独立したので降りられない

正解は、尖閣諸島周辺への F15J 要撃機のスクランブル。

台南、休日の朝の牛肉湯(石精臼牛肉湯)

Bouillon for breakfast.

Photo: “Bouillon for breakfast.” 2016. Tainan, Taiwan, Apple iPhone 6S.

台南、二度目。ホテルの朝食は予約していない。台湾人が週末の朝に食べるものを食べたい。Xiaomi の地元アプリで、繁体字を解読しながら牛肉湯の店を見つける。Xaomiの画面を見せると、タクシーの運転手は直ぐに場所を把握した。


店は台湾のよくある路面店。通路に面したカウンターで、青い Tシャツ姿の大将が赤身の固まりを切っている。既に熱気を帯び始めた台南の朝。

牛肉湯は熱いスープに、赤身の牛生肉の細切りを入れて、しゃぶしゃぶというか湯上げのようにして喫する料理。一緒に、魯肉飯も頼みましょう。朝飯には重そうだが、上品なスープに、脂っ気のないさっぱりした肉で、とても軽く感じられる。そこに生姜のアクセント。暑い台南で生肉?とも思ったが、表面にしっかり熱が入るし、これはとても気候に合っているように感じた。


食べ進んでいると、店の人がレンゲにスープを取れという。卓に備え付けの、「米酒」と書かれた調味料を入れてくれる。沖縄に於けるコーレーグースのような、そんな風味が付く。なるほど、レンゲで試して気に入ったらどうぞという事か。そんな細かい気遣いを、地元の繁盛店で受けられるとは思わなかった。

向かいのテーブルでは、小さな女の子と父親が、親子で朝ご飯だ。シンプルな肉スープを前に、いささか退屈げにしている彼女にとっても、やがては忘れられない懐かしい故郷の味になるのではないかな、と思う。

なんだろう、何年後にでも戻ってきて食べたい、そういう味なのだ。お会計は全部で 200円ぐらい。安いね。