遠い太鼓

Photo: 遠い太鼓 2007. Saitama, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Planar T* 1.4/85(MM), Kodak GC 400-8.

Photo: "遠い太鼓" 2007. Saitama, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Planar T* 1.4/85(MM), Kodak GC 400-8.

「遠足のお知らせが」来たので、遠足に行く。

お知らせの翌日が本番、というスケジュールだったので、集合したのは、OL侍(仮名)と、ホスト(仮名)と、僕。

天気は快晴、ちょっと普段は買わないような値段の私鉄の切符を買って、一路現地へ。大人の遠足は現地集合です。


遠くから太鼓の音が聞こえてきて、お祭りの気分がしてくる。畦に植えられた花が満開で、でも匂いはしない。

芝桜を目当てにした観光客で、この週末は一年で一番街の人口が増える数日間だ。田んぼ沿いの径に、人々の列が出来ている。

何も書くことが無いような、とても、平和な一日。沿道では、農家の人たちが、即席のテキ屋になって、冷やしたキュウリなんかを売っている。さらに は、シメジやら(特産らしい)、芝桜の写真やら、なんでもアリだ。そういえば、昼間に見るホスト(仮名)は、その濃いめのサングラスも相まって、なんだか テキ屋っぽいね。


それにしても、太鼓の威勢が良い。地元の人たちが、そろいの法被を着て、腕前を披露している。

「これが噂の、太鼓のエクササイズか?」

「それは、タイコビクスね」

さすが、OL侍(仮名) は何でも知っているのだな。

香川のネコ

Photo: 香川の猫 2006. Kagawa, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Planar T* 1.4/85(MM),  Kodak EBX

Photo: "香川の猫" 2006. Kagawa, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Planar T* 1.4/85(MM), Kodak EBX

港を見下ろす公園で、

海風に吹かれて、眠る。

ヒトラー ~最期の12日間~

ヒトラー ~最期の12日間~ スペシャル・エディションヒトラー最期の 12日間を見る。

良くできていると思う。制作者はとても大きなリスクを冒し、ある種の挑戦をして、勝っている。つまり、ナチスという難しい題材を扱いながら、映画自体では何かを裁く、ということをしていないのだ。受け取り方によっては、ナチスに同情的にとることさえ可能だろう。この題材で、そういう余地があるということは、作り手としてはとてもリスクのあることだ。それでも、見る人間に判断を委ねる姿勢を貫くことによって、モノを作る人間としての誇りを示していると思う。


全体の印象として、ドイツ降伏までの最後の 12日間を文字通り、映像にする、というところに、執拗なまでに集中したことで、発散しがちな題材をうまくまとめている。BGM はほとんど無いし、派手なカメラワークも無い。映画に感情を煽られていると感じるような場面は、とても少ない。それだけに、例えば、時々織り交ぜられる物陰から覗いたようなカット割りも効果的だ。

映画自体は、ある程度歴史の知識があることを前提として作られている。人物説明的なシーンは殆ど無いので、登場人物の名前を聞いて、それがどんな立場の人間だったかが分かっていないと内容を理解することが出来ない。その意味で、これはエンターテイメントではない。が、決して退屈な作品でもない。


ドイツの俳優というのを殆ど知らないが、キャスティングも良い。背中を丸めて、モグモグと夕食を食べている、疲れ切り、老いた男。そんなヒトラーの演技は、恐らく、スクリーン上では今まで一度も描かれたことが無いものだと思う。

ヒトラーの恋人、エバ・ブラウンのキャスティングも良い。妹の旦那が銃殺されることを知って、命乞いに来た時、「私の意志だ」と言われて、一瞬表情が変わり、「はい、総統」と言った時の演技は印象的だった。ヒトラーのある面では唯一の支配者であり、そして、同時に崇拝者でもあったと思われる、エバの空気が、伝わってくる。