珈琲屋

Photo: コーヒー屋 2006. Kagawa, Japan, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX

Photo: "コーヒー屋" 2006. Kagawa, Japan, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX

僕はコーヒーを飲まない。

カフェと言っても、ココアぐらいはたいていあるもので。まさか、コーヒー豆の直売所だとは思わなかった。直売所の側らにカウンターがしつらえてあっ て、イートインというか、ドリンクインがあるわけだ。そこで、商品の豆の中から、好きなモノを選んで入れてもらうことが出来る。つまり、本当にコーヒーし かない。


電車の踏切の側らに建つ、古い倉庫が店だ。コーヒーを入れた沢山の麻袋、焙煎のための大きくてレトロな感じの機械。そこに、古い家具を入れて、店の 体裁になっている。店は、若い夫婦が二人で切り盛りしている。こんなところで、コーヒー豆の専門店をして、商売になるのだろうか?

いっそ、一番濃くて苦いヤツを頼む。焼き物はよくわかないが、大ぶりの、碧く絵付けのされたコーヒーカップに入って、コーヒーが置かれた。ザワザワした振動の後で、窓の直ぐ外を電車が走り抜けていく。振り子時計が、ゆっくり動いている。


飲んでいる途中で、予約した碾き上がりの豆を、近所の子供が取りに来た。海辺のこんな小さな町でも、結構、商売は成り立つのかもしれない。コーヒーと関係のない人生を送る僕のような人間は、多数派ではないのだ。

飲み終わって会計をする。値段は、とても安い。喫茶店ではないので、大人数での来店や長居はお断り、と書かれた張り紙の意味が、分かった。

錆びたブランコ

Photo: 世界の中心で、愛を叫ぶブランコ 2006. Kagawa, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Planar T* 1.4/85(MM), Kodak EBX

Photo: "世界の中心で、愛を叫ぶブランコ" 2006. Kagawa, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Planar T* 1.4/85(MM), Kodak EBX

港に通じる道の、その脇に鳥居がある。鳥居から続く、息が切れるような階段を上ると、神社の境内の前に小さな公園がある。そこには、錆びたブランコがあって、突堤の先まで見渡すことができる。

よくこんなロケ地を見つけたなぁ、というのが偽らざる感想だった。


僕はそのドラマを見たことが無いのだけれど、その景色に物語を付けるのは、もはや容易いことのように錯覚された。

世界の中心で愛を叫ぶ

Photo: 世界の中心で、愛を叫ぶ突堤 2006. Kagawa, Japan, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX

Photo: “世界の中心で、愛を叫ぶ突堤” 2006. Kagawa, Japan, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX

「世界の中心で、愛を叫ぶ」をもちろん僕は見ていない。しかし、そのロケ地に来てしまった。(そんなのばっかり)

地元では、当初撮影が終わると、セットも何もさっさと壊してしまったそうだが、暫くして観光客が引きも切らずに訪れるようになると、遅まきながら「なにやら観光資源になるらしい」と気がついたという。


今では、一部のロケセットは再建され、ロケ地の名所には案内板が付けられ、市役所の入り口にはロケ地マップが置かれている。とは言っても、ここは至って普通の地方の漁村。ぐるぐる迷いながら、なんとかロケ地の「突堤」にたどり着いた。突堤マニアとしては、ここは外せない。

さて、この突堤はかなり良い、相当良い。長くて、真っ直ぐで、シンプルだ。文句のない、突堤だ。


狭い幅の割に、長く突き出た突堤を、どんどん歩く。気の抜けたような、瀬戸の内海が、ただ広がって、波はろくに打ち寄せもしない。自主制作の映画のロケハンだろうか、大学生風の二人組が、デジカメを手にしながらフレーミングをあれこれ試している。

ジリジリと暑い。僕はいつもやるように、突堤に腰をおろしたりはせず、そのまま元来た道を戻った。